リーダー本をいくら読んでも、チームが変わらない理由──組織を止めている「ボトルネック」の正体
リーダーシップの本を読む。
部下への接し方を学ぶ。
1on1を始める。
「任せる経営」を実践する。
会議のやり方も変える。
それなのに、
なぜかチームが変わらない。
社員からの相談は減らない。
社長がいないと物事が決まらない。
何度説明しても、同じような問題が起きる。
結局、
「もう俺がやった方が早い」
となる。
そしてまた、新しいリーダー本を読む。
もし、こんな状態になっているなら、一度疑った方がいい。
足りないのは、
リーダーシップの知識ではないかもしれない。
もっと手前にある、
組織の「判断構造」にボトルネックがある可能性がある。
「任せる」だけでは、組織は動かない
よく、
「社員に任せましょう」
と言われる。
確かにその通りだと思う。
社長が何でも抱えていたら、いつまで経っても組織は育たない。
でも僕は、
「任せれば解決する」
ほど単純ではないと思っている。
例えば社長が、
「これからは自分で考えて動いてくれ」
と言ったとする。
社員からすれば困る。
何を基準に考えればいいのか分からないからだ。
売上を優先するのか。
顧客満足を優先するのか。
利益率なのか。
スピードなのか。
品質なのか。
長期的な関係なのか。
会社として何を守り、
何なら捨てていいのか。
ここが曖昧なまま、
「自分で考えろ」
と言われても、社員は怖くて決められない。
だから社長に聞く。
「社長、これどうしましょう?」
社長は思う。
「それくらい自分で考えてくれよ」
でも社員からすると、
判断するための“ものさし”を渡されていない。
これでは任せられたのではなく、
判断責任だけ渡されたようなものだ。
ボトルネックは「社員の能力」とは限らない
チームが動かないと、
社員の能力を疑いたくなる。
「主体性がない」
「指示待ちだ」
「もっと経営者目線を持ってほしい」
もちろん、本当に能力や姿勢の問題である場合もある。
でも、その前に僕なら一つ確認する。
その社員は、自分で判断できる状態になっているだろうか?
ここは分けて考えた方がいい。
能力がないことと、
判断基準がないことは、
まったく違う。
例えば、顧客からクレームが入ったとする。
現場の社員が、
「5万円までなら、自分の判断で対応していい」
と金額だけ決められていたとしても、
それだけでは判断できないことがある。
どんな顧客との関係を大切にするのか。
会社として絶対に曲げないものは何か。
短期的な損失を受け入れてでも守るものは何か。
そこまで共有されて初めて、
現場で判断できるようになる。
必要なのは、
ルールを大量に増やすことではない。
会社としての判断基準を共有することだ。
リーダー自身の判断基準が曖昧な場合もある
さらに厄介なのは、
社員ではなく、
リーダー自身がボトルネックになっているケースだ。
これは能力の話ではない。
むしろ優秀な人ほど起きる。
昨日は、
「もっと社員に任せよう」
と思っていた。
ところが今日、顧客からクレームが来ると、
「なんで俺に確認しなかったんだ」
と言ってしまう。
ある日は、
「失敗していいから挑戦しろ」
と言う。
ところが失敗すると、
「なんでそんな判断をしたんだ」
と責める。
社員からすると、
どちらが正解なのか分からない。
すると、どうなるか。
判断しなくなる。
何かあったら確認する。
社長の顔色を見る。
会議でも自分の意見を言わなくなる。
これは社員が怠けているのではなく、
ある意味では合理的な行動だ。
自分で判断すると怒られる可能性がある。
だったら、
「社長に聞いてから動く」
のが一番安全だからだ。
こうして、
社長自身が組織最大のボトルネックになっていく。
なぜリーダー本を読んでも変わらないのか
ここで最初の話に戻る。
なぜ、
リーダーシップの本を何冊読んでも、
チームが変わらないことがあるのか。
僕は、本の内容が悪いわけではないと思う。
「傾聴しましょう」
「任せましょう」
「心理的安全性を作りましょう」
「ビジョンを共有しましょう」
どれも大切だ。
問題は、
それを自分の組織で「いつ、何を基準に使うのか」が決まっていないことだ。
知識は増える。
選択肢も増える。
ところが判断基準がない。
だから、
本を読むほど迷うことさえある。
Aという本には、
「社員に任せろ」
と書いてある。
Bという本には、
「リーダーが責任を持って決断しろ」
と書いてある。
どちらも間違っていない。
問題は、
今の自分の会社では、どちらを選ぶべきなのか。
そこは本には書いていない。
自分で決めるしかない。
組織に必要なのは「答え」ではなく「ものさし」
僕は、組織が強くなるとは、
優秀な社員をたくさん集めることだけではないと思っている。
社長がいなくても、
社員一人ひとりが、
「この会社なら、こう判断するだろう」
と考えられる状態。
そこまでいけば、
社長への確認は減っていく。
会議も減る。
細かいマニュアルも減らせるかもしれない。
何より、
社員が自分の頭で考え始める。
つまり、
社長の判断基準が、組織の判断基準へ変わっていく。
これが本当の意味での「任せる」なんじゃないかと思う。
仕事を渡すことではない。
権限だけ渡すことでもない。
判断できる土台を渡すこと。
AI時代になるほど、この問題は大きくなる
そして僕は、
AIが普及するほど、この問題は重要になると思っている。
資料作成。
リサーチ。
議事録。
分析。
アイデア出し。
これまで人間が時間を使っていた仕事の多くを、AIが補助してくれるようになった。
でも、
最後に残る問題がある。
「で、どれを選ぶの?」
AIが10個の戦略を出してくれる。
でも、
どれを採用するかは人間が決めなければならない。
AIによって選択肢が増えるほど、
判断基準がない組織は、
むしろ迷いやすくなる可能性がある。
だからAI時代に重要なのは、
「正解をたくさん知っているリーダー」
ではなく、
何を大切にして、何を捨てるのかを決められるリーダー
なんじゃないかと思う。
まず一つだけ、チームに聞いてみてほしい
難しい組織改革を始める必要はない。
新しいマネジメント手法を導入する前に、
一度だけチームに聞いてみてほしい。
「判断に迷ったとき、この会社では何を一番大切にすればいいと思う?」
社長。
管理職。
現場社員。
それぞれに答えてもらう。
もし答えがバラバラなら、
そこにボトルネックがあるかもしれない。
そして面白いのは、
社員だけではなく、
社長自身も即答できないことがあることだ。
その場合、
今やるべきことは、
リーダーシップ本をもう一冊読むことではない。
まず、
自分たちは何を基準に判断する会社なのか。
そこを言葉にすることだ。
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リーダーがすべての答えを持つ必要はない。
社員に全部任せればいいわけでもない。
僕が大事だと思うのは、
答えを共有することではなく、判断基準を共有すること。
答えは、状況によって変わる。
でも判断基準があれば、
現場で考えられる。
そして、
社長がいなくても判断できる人が増えていく。
もしリーダー本を何冊読んでも、
研修を受けても、
1on1を始めても、
なぜかチームが変わらないなら。
一度だけ、
「社員をどう変えるか」から離れてみてほしい。
見るべき場所は、
社員の能力でも、
新しいマネジメント手法でもなく、
もっと手前かもしれない。
この組織には、判断するための“ものさし”があるだろうか。
ボトルネックの正体は、
案外そこにあるのかもしれない。
最後に──答えを増やすより、「判断基準」を持つ
ここまで読んでくださったあなたに、最後に一つだけお伝えしたいことがあります。
私たちは、何かに迷うとすぐに「正しい答え」を探します。
本を読む。
検索する。
詳しい人に聞く。
そして今なら、AIにも聞く。
けれど、答えを増やせば増やすほど、逆に決められなくなることがあります。
なぜなら、本当に必要なのは答えの数ではなく、「自分は何を基準に選ぶのか」というものさしだからです。
私は長い間、自分自身が迷い、もがき、さまざまな失敗を繰り返す中で、この「判断基準」という考え方に辿り着きました。
仕事をどうするか。
人に任せるか。
AIをどう使うか。
何を続け、何を捨てるか。
そして、どんな人生を生きるか。
一見まったく違う問題でも、その根っこには同じ問いがあります。
「自分は、何を大切にして決めるのか?」
この「判断基準」について、考え方から具体的な作り方まで体系化した記事を一本にまとめています。
情報をさらに増やしたい人ではなく、
「もう答え探しを終えて、自分で決められるようになりたい」
という方に読んでいただけたら嬉しいです。
▶ 『経営書をいくら読んでも「決められない」理由──AI時代の経営者・リーダーに必要な「判断基準」の作り方』
