2026年上半期は大企業中心に「実質賃金増」だが「なぜ消費支出は減」なのかその説明は十分に報道されたのか
1 まず『日本経済新聞』2026年8月6日朝刊,「実質賃金プラス夏ボーナス寄与 6月 1.6%増,6ヵ月連続上昇」「資源高影響は秋以降」という記事から紹介する。

指摘しておきたい
この記事からは “下から2段目” より活字で引用しておく。
〔20〕26年6月を企業規模別にみると,従業員数500人以上の事業所では〔ボーナス支給は〕46万7076円で0.7%のプラスにとどまる。従業員5人以上の事業所と比べて2.8ポイント低い。
従業員数5~29人の事業所は6.3%増の11万2282円だった。中小企業・小規模事業者では業績が厳しくても処遇改善に踏み切る「防衛的賃上げ」がにじむ。
中小企業は中東情勢の混乱で上昇する原材料価格を十分に価格に反映することが難しい。中小企業庁によると原材料費や労務費の価格転嫁率は3月時点で54.2%だった。〔20〕25年9月時点の53.5%とほぼ横ばい圏にとどまり,賃上げ原資は逼迫する。
この記事からは図表(とその前後の記事・段落)だけを抜き出し,後段に再掲出しておく。
ここで,前提条件として注意しておきた要因は,2022年2月24日に「プーチンのロシア」が始めたウクライナ侵略戦争,そして,2026年2月28日「トランプのアメリカ」が始めたイラン戦争が,世界の政治・経済にもたらしている悪影響である。
以下に切り出してみた記事の段落には,「物価変動の影響を除いた実質賃金が」「好調な企業業績や人材の確保戦略を背景に夏のボーナス」を「増」やしていたことや,
くわえて「名目賃金を押し上げた」が,「中東危機を受けた資源高は秋以降にエネルギー価格に波及する見通しで」あり,このままだと「実質賃金のプラス圏定着には不安が残る」という指摘がなされている。

ボーナスの伸びが目立って増えたという記録が長期間つづいた
この図表は零細企業の数値であるだけにより厳しい実績を表現している
2 つぎに「実質賃金6月1.6%増」〔加〕した「6ヵ月連続プラス」になったと,それぞれ伝えた『日本経済新聞』2026年8月5日夕刊と,『毎日新聞』2026年8月6日朝刊の当該記事を,こちらも紙面で紹介してみる。この2つの同じ内容の報道は,具体的に記述されている中身に必らずしも共通性があったとはいいにくかった。


前の日本経済新聞の記事よりよほどマシで分かりやすい
日経の記事は統計や数値をただズラズラ並べるのが好きな記者が
書いたのか?
3 1と2での記述は夏のボーナスも絡んだ賃金上昇「話」であったが,もう少し長期的な回顧・展望をするつもりで統計・数値をみないことには,
単なるわずかのヌカ喜び,それもすべての「労働者諸君・諸嬢」にまで通じる分析・話題にはなりえない。

昨年2025年6月から通して観ると基調はほぼ低落傾向である
消費(者)支出の算定法は,その中身はどう計算されて出されるのか?
消費支出・非消費支出とは,個人や家族が生活を維持するためにおこなう支出のことを消費支出といい,また,直接税や社会保険料など,消費を目的としない支出を非消費支出といいい,この2つの区分を念頭に置いてさらにつぎの説明が必要となる。
消費支出は生活費,家計費ともいわれ,主として実収入が当てられる。支出の目的や用途により,食料費,住居費,光熱費,被服費,教育費,教養娯楽費,交通通信費,保健医療費等の費目に分けることができる。
すなわち消費支出は,家族のために直接使用するものであるのに対して,非消費支出は間接的に使用されるものであるといえる。実収入から非消費支出を差し引くと,可処分所得がえられる。
以上の説明を聞いたところで,以下につづくあれこれの議論をくわえてみたい。関連する図表を取りだし紹介したのち,その肝心な部分に関する説明を添えておきたい。
まず,総務省の「家計調査報告-2026年6月分-」という報告書から,前段中でとりあげてみた各紙の報道が取りあげた内容,つまり消費支出に関する元の統計を参照すると,ここ2年ほど結局,全然さえなかった国民生活ぶりが,ごく簡単にでも観取できるはずである。

つぎに,労働者(勤労者)の収入額は2024年,2025年にかけて,微弱ながらでも上昇傾向が記録されたとはいえ,その間におけるインフレ傾向を併せて考慮すれば,名目水準の上昇になかなか追いつきにくい実質賃金上昇の遅滞ぶりに気づいて当然である。

しかも2020年代はこの比率がじりじりと上昇している最中
上の統計図表に関して寄稿者である谷口智明は,こういう点に言及していた。さきにいきなりこういう表現を被せておいてから,当該の段落を引用するが,いまの日本の税制はとくに給与生活者(もちろん平均的にそこそこの賃金水準で消費生活をする人びとのことだが)にとって,非情の仕組みを維持したままである。
さて,社会保障費の税源は消費税なのだという言説が,もっともらしく流通しているけれども,それでは消費税がまだ存在しなかった--日本で消費税が始まった年は1989年4月1日であり,当時の税率は3%から始まっていた--から,そうだとするとこれ以前は,社会保障費の税源はなかったことになるのか?
しかし,そのようにバカらしい発想は無用である。所得税と法人税があって,こちらが当然,社会保障費が調達される税源に当てられていた。くわえてもともと,労働者自身と勤務先の事業体とがともに負担する年金積み立て部分があった。
より正確に繰り返して説明しよう。
消費税が導入される前(1989年以前)も,日本の公的年金は主に当時の現役世代が納める保険料(および一部の所得税などの一般財源)で支えられていた。つまり,特定の商品に頼る税はなく,働く世代が直接払う社会保険料が中心になっていた。
当時の仕組みと負担者現役世代の保険料の関係は,「働いている人が毎月払うお金」が「その時の高齢者への給付」にそのまま使われていた。事業主の負担は,厚生年金などの場合だと「会社員の本人が半分,雇い主である会社が半分」という負担をしていた。
もちろん,国の補助(税金),つまり,所得税や法人税などの一般の税金からも,費用の一定割合が使われてもいたのである。したがって,消費税がなければウンヌンの言説は,極論すれば 99.99%,絶対に正しくない言説である。
4 ここでは,経済学者植草一秀が2026年8月7日に書いていたブログを,あえて全文,引用・紹介してみたうえで,若干の議論も添えてみたい。
◆ ゴマと国民は搾れるだけ搾れ ◆
=『植草一秀の「知られざる真実」』2026年8月7日 =
高市首相が8月3日に短時間,熊本の被災地を訪問した。首相が訪問すれば余計な仕事が増える。現地は被災者支援で首相訪問に構う人的・時間的余裕などない。それでも,どうしても現地入りするというなら,意味のある行動を示すべきだ。
爆発したイオンモールや被災地に対して空調の効いた上空で手を合わせてもなにも伝わらない。伝える心がなければ地上でもなにも伝わらないのは同じだが,空の上で手を合わせるのは「上から目線」そのもの。
撮影隊まで動員してプロモーションビデオを制作していることに批判が沸騰した。地上に降りたなら,空調のない体育館の避難所に一定時間滞在して被災者の状況を体験しなければ被災者に寄り添う支援などできるわけがない。
空調の効いたオフィスで数分間対話しただけでは被災者の実情など分かるべくもない。民放で被災者に地下水を配っている女性がインタビューを受けて,なによりも避難所の水準が低すぎるのをなんとかしてほしい」と訴えていたのが印象的だった。
安眠できる寝具がない。トイレが不足している。プライバシーが守られない。入浴できない。生活水が足りない。そして,温かな食事が提供されない。
避難所の国際基準であるスフィア基準を日本の避難所はまったく満たしてない。何度大災害が発生して,市民が劣悪な避難所に閉じこめられて是正が主張されても,結局なにも是正されない。
補記)「スフィア基準」とは,災害や紛争の被災者が人間らしい尊厳を保った生活を送るための人道支援における国際的な最低基準である。
正式名称は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」であり,居住スペースや水・トイレなどの具体的な数値目標が示されている。
〔本文・記述に戻る→〕 高市内閣は17分野に15年で370兆円ものお金を注ぐ方針を示した。そんな金があるなら企業に利権補助金としてバラまくのではなく,一般市民の命と暮らしを守るために使うべきだ。
40度を超える酷暑が記録される地の空調の効かない体育館に被災者を閉じこめるのは殺人行為。避難者を遠隔でも構わないから各種宿泊施設に移送するべきだ。
九州全域が被災地になっているわけではない。他県の宿泊施設での避難などを迅速に実施するべきだ。
「予備費を使う」,「激甚災害に指定する」などの言葉を並べても意味がない。最優先で被災者の命と暮らしを守る政策対応を具体的に示すべきだ。
要するに,この国では一般市民のために財政資金を使うという発想がないのだ。
財政資金は利権政治屋と利権官僚機構と癒着大企業が自分たちの利益のために使うもので,一般市民のためには1円も使いたくないというのが基本とされている。
消費税の話もまったく同じ。上場企業株式の3分の1は外資が保有。外資は法人税を払いたくない。その分を日本の庶民に押し付けるのが消費税。富裕層は応能負担で所得税を払いたくない。
金持ち優遇税制を温存するために庶民に負担を押し付けるのが消費税。だから,2年合計でたった10兆円の消費税減税なのにいちゃもんをつけまくっている。
日本政府が保有する米国国債を売れば60兆円の利益が出る。食品消費税率ゼロを12年実施できる財源になる。しかし,米国債売却は日本政府が米国政府に貸したお金の回収を意味するものだから米国政府がこれを許さない。
ベッセント財務長官が「日米協調介入」を主導したが,その真相を伝える解説は皆無。
さらに,以上の記述を補完する統計資料を挙げておく。視覚的に理解しやすい説明になっている。


くわえて,以下の統計図表は植草一秀自身が作成したものである。

なお,ここまで間を置くことになったが,前段で引照した,谷口智明「現役世代の収入と税·社会保険料負担はどれだけ増えたかー2025年『家計調査』にもとづく長期推移と最新行動一」『第一ライフ資産運用経済研究所』2026年2月19日,https://www.dlri.co.jp/report/ld/580714.html からは,まだ引用していなかった段落を,以下の枠内に紹介しておく。
2000年から2025年の25年間で,直接税の負担率は,2024年の減税効果の剥落や収入増の影響もあり,7.6%から8.8%と約 1.1ポイント増加した。また,消費税の負担率は,2.3%から4.3%と約2ポイント増加した。この間,2度の消費税率の引き上げの都度,負担率が階段状に高まっていることが分かる。
一方で,社会保険料の負担率は,一貫して直接税を上回っており,この間,9.1%から11.7%へと,今回取り上げた項目のなかでもっとも高い約2.6ポイントの増加となった。ただ,近年は高止まりからやや減少傾向を示すなど変化の兆しがみられ,その背景等については次章で考察する(ということだがこの関連は紹介せず,ひとまず放置する)。
こうした税と社会保険料を合わせた負担率(合計)は,この25年間でみると19.0%から24.7%へと上昇し,勤め先収入の4分の1に迫っている。とくに社会保険料の負担率が高くなっており,家計の可処分所得(手取り収入)を押し下げる要因の一つになってきたと考えられる。
さらに引用・紹介した
税源の3大要素=「法人税⇔所得税⇔消費税」を取りあげるさい,目的税ウンヌンをやたら強調していたら,「法人税の低率の見直し」や--海外でのそれとを比較する議論はここでは別問題としておく--,「所得税の実質捕捉率が1億円以上になると,さらに上昇するのではなく,反対方向に向かい下降線になるという大矛盾」などの「速やかなる補正(修正)」などは,放置されっぱなしになる
さて,次段の文書と図表は『日本経済新聞』2024年10月6日の記事(電子版)からの切り抜きである。所得税が中途から累進になっていないどころか逆に累減になっているゆえ,このような変態(実質の不公平)が,いまだに放置されているのは異常・異様であるというよりは,国家主体の怠慢そのものである。

国家の不誠実・不正直の典型見本
消費税はとくに間接税として低所得層には辛い税制である。海外では消費税に関しては,国が定めた公式貧困水準に年間所得を満たさない世帯には,消費税を全面的に免除するという構想まで提示されている。
富裕層と貧困層に対する消費税の負担感は,税そのものの「負担公平性」が現に,所得水準によって大きく差が出ている事実に鑑みれば,そのような社会政策的な対応が議論されている事実は,選択肢のひとつとして,あまりにも当然の方途でありうる。
また,国民の所得がインフレ傾向に合せて増えていくのあれば,税率(所得税の場合)の改正(実質是正)がその分は相当に,追って実質的に補正・手当されねばならない。そのように措置していかないかぎり,実質では可処分所得が不利に,不公平(不公正)に,大きく減っていくのは必定となる。
そうした現実がただ続いていくようでは,労働者側の経済的立場がさらに困難に追いこまれることは,火を見るより明らかである。だが,いまの高市早苗政権が狙っているのは,国債のインフレ的な実質減債法にほかならず,実に嫌らしくも不誠実な財政政策しか念頭にない。
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【付 記】 本稿の続編(4・完)は以下である。
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【参考文献】
