世界で愛された曲、日本で愛された曲〜YouTube Chartから見えた"世界への入口"〜
以前、私はXG初の1st Full Album 『THE CORE』発売日におけるYouTube Chartをもとに、世界のどこでXGが聴かれているのかを調べてみた。
その結果、日本をはじめ、北米や南米、欧州でも多く聴かれていることが分かり、「XGのファンは世界のどこにいるのか」という記事を書いた。
今回は、少し視点を変えてみたい。
「どの国で聴かれているのか」ではなく、
「その国では、どの曲が最も聴かれているのか。」
そこに注目してみた。
対象は、日本に加え、地域ごとに数が多かった3ヵ国を選出し、
アジアは韓国・タイ・フィリピン、
北米はアメリカ・カナダ・メキシコ、
欧州はイギリス・フランス・ドイツ、
南米はブラジル・アルゼンチン・チリ、
中東・オセアニアはオーストラリア・トルコ・サウジアラビア、
計16ヵ国で調査した。
2025年6月17日から2026年6月17日までのYouTube Chartを集計し、各国の年間TOP3を整理してみた。
すると、予想していなかった景色が見えてきた。
「世界で一番人気の曲」があるわけではない。
曲ごとに、世界への広がり方が違っていたのである。
まず、直近の1年間で最も聴かれた曲の国数を数えてみると、HYPNOTIZEとWOKE UPがともに7ヵ国で並んだ。
しかし、TOP3入りした国数まで広げると、その景色は大きく変わる。

※年間1位は、GALAが日本、LEFT RIGHTがフィリピン。IS THIS LOVEは年間1位の国はなく、日本・韓国でTOP3入り。
HYPNOTIZEは16ヵ国すべてでTOP3入り。
一方、GALAは1位こそ日本だけだったが、14ヵ国でTOP3入りしていた。
つまり、「世界で最も人気だった曲」を決めるよりも、それぞれの曲が違う形で世界へ浸透していたと考える方が、このデータにはしっくりくる。
HYPNOTIZEは「世界同時公開」に近いヒットだった
最も印象的だったのはHYPNOTIZEだった。
発売から約21週間しか経っていないにもかかわらず、この1年間で最も多く聴かれ、16ヵ国すべてでTOP3入りしている。
もちろん、発売時期が異なるため過去曲との単純比較はできない。
それでも、同じ期間内にリリースされたGALAと比較すると、その広がり方には違いが見えてくる。
GALAは日本で年間1位となった一方で、HYPNOTIZEは国ごとの偏りが非常に小さい。
なぜ、この違いが生まれたのだろうか。
一つ考えられるのは、「世界への届け方」である。
HYPNOTIZEは韓国の音楽番組で披露され、その映像はYouTubeを通じて世界中へ公開された。
さらに、その日は1st Full Album 『THE CORE』の発売日でもあった。
アルバムを待っていた世界中のALPHAZが、ほぼ同じタイミングでHYPNOTIZEに触れられる環境が整っていた。
これも、世界的な広がりにつながった一因だったのかもしれない。
もう一つは楽曲そのものだ。
HYPNOTIZEはハウスミュージックをベースにした、メロディアスで心地よい楽曲である。
ラップ中心の楽曲よりも、言語の壁を越えやすく、「まず音で好きになる」ことのできる曲だったことも、世界中のリスナーにとっての入口になりやすかった理由の一つなのかもしれない。
GALAとIS THIS LOVEが映し出した、日本という市場
一方、日本ではGALAとIS THIS LOVEが強かった。
GALAは年間1位、IS THIS LOVEは年間2位。
どちらも日本の音楽番組で披露され、その圧倒的なパフォーマンスがSNSでも大きな話題となった。
「あのグループは誰だ。」
そんな反応も数多く見かけた。
興味深いのは、GALAは日本で特に大きな反響を呼んだが、日本だけで支持された曲ではない。
16ヵ国中14ヵ国でTOP3入りしており、世界でも十分に受け入れられていた。
その上で、日本では年間1位になるほど突出した人気を見せたことが特徴だった。
ただ、日本と海外には一つ大きな違いがある。
韓国の音楽番組は、放送後すぐに公式映像が世界へ公開されることが多い。
一方、日本の音楽番組は海外から視聴しづらく、パフォーマンス映像も公式に公開されないケースが少なくない。
同じように話題になったパフォーマンスでも、「世界中の人が同じ映像を見られるかどうか」という違いは、YouTube Chartにも少なからず影響しているのかもしれない。
もし、GALAやIS THIS LOVEのあのパフォーマンスが、HYPNOTIZEと同じように世界中へ届けられていたら、
今回とは少し違う景色が見えていたのかもしれない。
もちろん、これは一つの仮説に過ぎない。
しかし、「どこで披露したか」だけではなく、「世界中の人が同じようにアクセスできたか」という視点は、今後の日本の音楽業界にとっても重要なのではないかと感じた。
WOKE UPは英語圏だからこそ強かったのか
WOKE UPも非常に興味深い。
年間1位は7ヵ国。
TOP3入りは14ヵ国。
発売から2年以上が経った今でも、なお世界中で聴かれている。
特に印象的だったのは、英語圏や欧州での強さだ。
WOKE UPはXG初のオールラップ曲であり、リリックだけでなくフロウやライムも大きな魅力になっている。
英語圏ではその魅力がよりダイレクトに伝わる一方、英語に馴染みのない地域では、最初にXGと出会う入口としては、メロディ主体の楽曲より少しハードルが高かった可能性もある。
それでも7ヵ国で年間1位になったという事実は、この楽曲が世界のヒップホップファンに強く支持されたことを示しているように思う。
LEFT RIGHTは「流行」ではなく「定番」になった
そして、LEFT RIGHT。
この結果は少し意外だった。
TOP3入りはフィリピンだけ。
しかし、そのフィリピンでは年間1位だった。
一方で、日本でこそ10位ではあるものの、アメリカとイギリスでは4位、フランスとブラジルでは5位であり、上位に長く残り続けていることも特徴だった。
発売から3年以上が経った今でも、主要国で上位を維持している。
さらに、世界全体で見ると年間5位。
これは、新曲の勢いとは異なる価値である。
一時的に大ヒットした曲ではなく、
「いつでも聴かれる曲」
になっている。
それは、2000年代R&Bを感じさせる普遍的なサウンドだからなのか。
あるいは、XGを知ったきっかけとして、多くの人のプレイリストに残り続けているからなのか。
理由は分からない。
しかし、時間が経っても聴かれ続けることは、新曲がヒットすることとはまた違う価値を持っている。
世界への入口は、一つではない
今回データを整理していて感じたのは、
世界には、一つのヒットの形だけがあるわけではない。
ということだった。
HYPNOTIZEは、世界中へ同時に届けられた。
GALAとIS THIS LOVEは、日本で強い共感を生んだ。
WOKE UPは、英語圏を中心に熱狂的な支持を集めた。
LEFT RIGHTは、一度広がった人気が長く続いている楽曲なのかもしれない。
その違いは、プロモーションだけでは説明できない。
楽曲そのものの個性、ジャンル、言語、そして世界へ届ける導線。
そのすべてが重なって、それぞれ異なるヒットの形を生み出していたように思う。
私は以前、「XGのファンは世界のどこにいるのか」という記事を書いたが、今回は、その答えが少しだけ深まった気がしている。
今回のデータから見えてきたのは、世界には一つのヒットの形だけがあるわけではない、ということだった。
世界中で同じ曲が愛されるのではなく、それぞれの国が、それぞれ違う曲を入口にXGと出会っている。
だからこそXGは、一つの代表曲に支えられるのではなく、さまざまな楽曲を通じて世界へ広がってきたのではないだろうか。
YouTube Chartは、その"多様な入口"を静かに映し出していたように思う。
今回のデータは、XGという一組のグループを分析したものに過ぎない。
それでも、「どんな楽曲を作るか」と同じくらい、「その魅力をどう世界へ届けるか」が重要であることを示唆しているように感じた。
こうした「入口」の設計は、日本発のアーティストがこれから世界を目指す上でも、大きなヒントになるように思う。
XGを見ながら考えたことの記録
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