【論文あり】「舌を押し付ける」が変わる。お口の真空システム(陰圧)のしくみ
前回に引き続き、2010年にEngelke氏らが発表した論文を読み解いていきます。
今回のテーマは「お口の真空システム(陰圧)の仕組み」の理解を深めていける内容にまとめました。
「意識して口を閉じよう」
「舌を上顎に押し付けるトレーニングをしよう」
という見え方が、ガラッと変わってくるお話です。
よく聞くお口トレーニングの考え方
みんなは今までこんな情報を目にしたり、
指導を受けたことは無い?
「意識してお口を閉じましょう」
「舌を上顎に押しつけましょう」
「舌圧を鍛えましょう」
くちけんさんもそういうものだと思っていたんだ。
だけど、哺乳瓶を使ってみたり
開発した製品を使ってみてお口に変化を感じると
もっと違う仕組みが働いているような気がしたんだ。
この論文はその時のくちけんさんの体感を、
物理的かつ論理的に説明してくれているよ。
圧を理解しておこう
今回は、圧の説明がふんだんに使われるから
まず2種類の圧について軽く理解しておこう!
いろんな呼び方があるけど、
対極していることがわかるとスッキリ理解できるよ⭐️
押し出す圧 (正圧、陽圧)

引き込む圧 (負圧、陰圧)

圧についてもっと理解を深めたい方はこちらの記事を参考にしてね⭐️
論文から「真空システム(陰圧)」のしくみを理解する
それでは行ってみよう!
前回に引き続き参照する論文はこちら⭐️
<口腔内コンパートメント圧:生体機能モデルと様々な姿勢条件下での実験的測定>2010年(ドイツ)
詳細(PubMed): PMID: 20127264 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20127264/
Engelke W, Jung K, Knösel M. Intra-oral compartment pressures: a biofunctional model and experimental measurements under different conditions of posture. Clin Oral Investig. 2011 Apr;15(2):165-76. doi: 10.1007/s00784-009-0367-0. Epub 2010 Feb 2. PMID: 20127264; PMCID: PMC3056003.
お口の中に陰圧を作るには、
いくつかのステップが一瞬の間に
同時に連動して発生していると説明されているよ。
①嚥下する(ゴクっと飲み込む)
→口腔内のガスや液体が移動・排出され、
→密閉された空間で陰圧が形成される
②舌が動き、バルブ弁のような役割を果たす
→これにより、口の中の陰圧空間を仕切る
③陰圧が働き、口の中が安定する
強陰圧空間(口蓋下)
・軟組織(舌、軟口蓋)は
「負圧」によって内側へ引き寄せられる
▼その結果
・硬組織(口蓋)の接触面では
「正圧」が生じる(受け止める)
弱陰圧空間(歯の周り)
・軟組織(唇、頬)は弱い「負圧」により
引き寄せられる
▼その結果
・硬組織(歯)の接触面では、
唇や頬が引き寄せられて
弱い「正圧」が生じる(受け止める)







始まりは、嚥下による(口蓋下部分での)
負圧(陰圧)がメインの働き。
(歯の周りの区間は、受動的な空間なので少し陰圧が弱い)
その結果、筋肉が引き寄せられ
意識することなく自然に
舌も吸着して
唇も閉じられ、
骨や歯に押し付けられる圧力が発生する
という考え方。
つまり
私たちが見ている正圧の裏側では、
陰圧システムが働いている可能性があるということ。
もちろん、これは
現時点で提案されている生体機能モデルのひとつ。
だけど、「舌が押している」と考えるんじゃなくって
「陰圧システムが働くことで安定している」って考えてみると
今まで別々に見えていた現象が一つの仕組みとしてつながって見えてくるから面白いよね⭐️
今回わかったこと
・嚥下によって口蓋下で負圧(陰圧)が生まれる
・舌が陰圧空間を作り出す「弁」の役割を果たす
・陰圧によって口の中の軟らかい組織が自然に引き寄せられ、
その結果、骨や歯には押し付ける力が生まれ、
安定した状態を保ちやすくなる
▼ 論文の内容をもっと詳しく知りたい方へ
この研究の詳しい背景や実験の条件など、論文の概要は以下の記事にまとめています。
