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【創作童話】メーソン教授とりすのチェリー① (全10話)


あのかわりもののメーソンが、小さくてかわいいしまりすとなかよく歩いているのを、ゆうびん屋は、配達の仕事もすっかり忘れて、口をポカンとあけて、ただ見つめるばかりでした。

ゆうびん屋が不思議がるのも、むりもありません。
メーソンという男は、人からどんなに親切にされても、お礼を言ったり、なにかしてあげたりなんて、一度もしたことがないんです。

それに、平気でウソをつきました。
この前も、となり町の人に道を聞かれて、わざと反対方向を指して、その人が道にまよったと言って交番にかけこむのを見て大笑いしていました。

子供がなげたボールをひろってあげたときには、受けとれないような強い力で思いきりなげ返しました。

そんないじわるなメーソンのことを、近所の人はだれも相手にしませんでした。

ゆうびん屋も、そんなメーソンをよく知っていましたから、まさかかわいらしい動物をつれて歩いていくなんて、信じられなかったのです。

「どうして、しまりすが一緒なんだ?」
思わず、そんなことをつぶやきました。
すると、手紙を受け取った奥さんも、首をかしげました。

「どうせまた『動物となかよくなれるマシーン』でも発明したんでしょ?あの人は、おかしな発明をよくやっているらしいからね。
まぁ、あたしはあんな人とかかわりたくないわ。どんな発明されても、こっちからおことわりよ」
奥さんは、それだけ言うとドアをしめました。

「発明‥‥‥かぁ」
たしかに、メーソンが色々な発明をしているというわさは、ゆうびん屋も何度か聞いたことがありました。

メーソンは、森の中の小さな家に、たった一人でくらしています。
夜おそくまで明かりをつけていても、だれにもめいわくをかけないのをいいことに、発明に夢中になっていました。

その発明品は、どれもすばらしいものです。

メーソンの夕食のおかずを決めて、つくってくれるロボットがありました。
メーソンの洋服をほしたり、たたんだりする機械もありました。
メーソンを毎朝決まった時間に起こして、マッサージまでしてくれるまくらがありました。

けれど、そんな発明品を、メーソン以外のだれかが、実際に使ってみたことは、これまで一度もありません。

メーソンは、自分で使うための発明しかしないからです。
だれかの役に立とうなんて、これっぽっちも考えていませんでした。

そんなメーソンが、あのしまりすとどうやってなかよくなったのでしょう。

本当に『動物となかよくなれるマシーン』を発明したのでしょうか?
それにしても、何のためにそんなものをつくったのでしょうか?

ゆうびん屋は考えれば考えるほど、わけがわからなくなりました。

それに、メーソンにはもう一つ、不思議なことがありました。

ゆうびん屋がメーソンの家に手紙を届けにいくと、きまって新しいテレビやら、冷蔵庫やら、そうじきが、目にとびこんでくるようになったのです。

この町の電器屋で、メーソンがしょっちゅう買い物しているようすはないし、大きな物を運ぶ配達のトラックが、メーソンの家の前にとまっているのを見た人はだれもいません。

それなのに、次々と大きくて新しいものがおかれていくのですから、近所の人もみんな気になって、色々なうわさをしました。

「あれはきっと、全部粗大ゴミだよ。発明の部品を集めているだけだな」
という人もいれば、
「古いものを新しくつくりかえるのがうまいんだよ。うちのそうじき、新しくしてくれないかなぁ」
なんて言う人もいました。

なかには、
「まるでどこからともなく、わいて出るようだ‥‥‥!」
と、気味わるそうに言う人までいました。

ゆうびん屋も、まさか本当にわいて出るなんてことはないだろうと思いました。

けれどもある日、いつものように、ゆうびん屋がメーソンの家に配達にいった日のことです。

メーソンが、自分の部屋の大きな機械から、コロンと出てきたまっかなりんごをパクッと食べるところを見たとき、ゆうびん屋の目はくぎづけになりました。

メーソンは、ゆうびん屋が窓からこっそりこちらのようすをうかがっていることに、とっくに気づいていました。

たった今、発明が成功したということも、『使ってみるか?』なんてことも、言うつもりはないメーソンでしたが、興味深そうにしているゆうびん屋 を見て、
(たまには、自分の発明をだれかに自まんしてみるのもいいかもしれない)
と思いました。

そこで、
「おい、そんなところでつっ立ってないで入ってこい」
そう言って、ゆうびん屋を部屋に入れました。

ゆうびん屋は、こっそりのぞいていたことを、おこられるのではないかとヒヤヒヤしながら、おそるおそる部屋に入りました。


つづく

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