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見せかけの「心理的安全性」がチームをダメにする?

森保監督が堂安律選手を外した決断に学ぶ、本当に強い組織のつくり方


「堂安律を外します」

2022年3月。

カタールワールドカップ出場がかかったアジア最終予選の大一番を前に、森保一監督は日本中が驚く決断を下しました。

当時の堂安選手は、日本代表の中心選手の一人。

多くの人が、

「なぜ堂安を外すのか」

と思ったことでしょう。

しかし私は、この決断の中に、これからの時代のリーダーシップの本質があると感じています。

なぜなら、この出来事は単なるサッカーの話ではないからです。

企業の管理職にも、経営者にも、人材育成に関わるすべての人にも共通する、

「心理的安全性とは何か」

という本質的な問いが隠されているからです。


心理的安全性が高いだけでは強いチームにならない

私は研修で心理的安全性についてお話しする機会が数多くあります。

その中で最近感じるのは、

「心理的安全性」

という言葉が独り歩きしていることです。

心理的安全性というと、

  • みんな仲良し

  • 否定しない

  • 優しく接する

  • 何でも言いやすい

というイメージを持つ方が少なくありません。

もちろん、それらは大切です。

しかし、それだけでは強い組織にはなりません。

むしろ、

  • 居心地が良いだけの組織

  • 挑戦しない組織

  • 厳しいことを誰も言わない組織

になってしまう危険があります。

心理的安全性はゴールではありません。

高い目標に挑戦するための土台なのです。



森保監督はなぜ堂安選手を外したのか


2022年3月。

日本代表はワールドカップ出場をかけて、

  • オーストラリア戦

  • ベトナム戦

を迎えようとしていました。

その重要な時期に森保監督は、堂安律選手を代表メンバーから外します。

多くのサポーターが驚きました。

堂安選手は当時、オランダのPSVで活躍する日本代表の主力選手だったからです。

後に森保監督は、この決断について振り返っています。

要約すると、

「控えに回った時、不満が先に立ち、チームへの貢献が十分にできていなかった」

ということでした。

ここで重要なのは、

森保監督は堂安選手の能力を否定したわけではない

ということです。

むしろ、

「なんで俺を使わないんだ」

という闘争心や向上心そのものは歓迎していました。

問題だったのは、

その意識が

「自分が試合に出たい」

に向いてしまい、

「チームを勝たせるために何ができるか」

という方向に向いていなかったことでした。


堂安選手にとって人生最大の屈辱だった

堂安選手は後に、この時のことを振り返り、人生で一番の屈辱だった、
ふざけんなと思った、と語っています。

当然だと思います。

自分は結果を出している。

自分は代表に必要な選手だと思っている。

それなのに呼ばれなかった。

悔しくないはずがありません。

プライドも傷ついたでしょう。

多くの人なら、

監督のせいにする。

環境のせいにする。

そこで終わってしまうかもしれません。

しかし堂安選手は違いました。


森保監督は選手を見捨てなかった

森保監督は代表から外して終わりではありませんでした。

わざわざオランダまで足を運び、堂安選手と直接向き合ったのです。

そして問いかけます。

「チームのために戦えているか」

これはサッカーだけの話ではありません。

私たちの職場でも同じです。

会社のためと言いながら、

実際には

  • 自分の評価

  • 自分の昇進

  • 自分の立場

に意識が向いてしまうことがあります。

堂安選手も後に、

「堂安律が活躍すればいいというエゴが強かった」

と認めています。

この自己認識こそが成長の出発点でした。


堂安選手は何が変わったのか

その後の堂安選手は大きく変わります。

意識が

「自分が活躍すること」

から

「チームを勝たせること」

へと変わったのです。

そして迎えたカタールワールドカップ本大会。

堂安選手はスタメンではありませんでした。

しかし、

ドイツ戦で途中出場から同点ゴール。

スペイン戦でも途中出場から同点ゴール。

日本代表躍進の最大の立役者の一人となりました。

以前の堂安選手なら、

「なぜ自分を先発で使わない」

と考えていたかもしれません。

しかし、この時の堂安選手は違いました。

与えられた役割の中で、チームに最大限貢献したのです。

後に堂安選手は、

「相手は11人で戦っているが、日本は26人で戦っている」

という趣旨の発言もしています。

そこには、かつてのエゴ中心の姿はありませんでした。


リーダーに求められる「構造化」

ここで私が注目したいのは森保監督のリーダーシップです。

森保監督は心理的安全性を大切にする監督として知られています。

選手を頭ごなしに否定しない。

話を聞く。

信頼関係を築く。

しかし同時に、

「日本代表は何のために戦うのか」

という高い目標も明確に示しています。

つまり、

安心だけではない。

挑戦だけでもない。

その両方を実現しているのです。

私はこれを

「構造化された心理的安全性」

と呼んでいます。

リーダーは、

  • 私たちは何を目指すのか

  • なぜそれを目指すのか

  • そのためにどのような行動が求められるのか

を明確に示さなければなりません。

森保監督は、

「チームへの貢献を最優先する」

という価値観を示し続けました。

だからこそ、日本代表は一つになれたのです。


私自身の経営経験から思うこと

私が東武カードビジネスの社長を務めていた時も同じでした。

私は心理的安全性の高い職場づくりに力を入れました。

誰でも意見が言える。

失敗から学べる。

相談しやすい。

そんな職場を目指しました。

しかし、それだけではありません。

同時に、

  • 若手社員の離職をなくす

  • お客様に選ばれる会社になる

という高い目標も掲げました。

結果として、若手社員の離職は3年間ゼロになりました。

安心だけでは組織は成長しません。

挑戦だけでは人は疲弊します。

大切なのは、

安心と挑戦の両立

なのです。


本当に強いチームとは

本当に強いチームには二つの要素があります。

一つ目は心理的安全性。

安心して意見を言えること。

失敗から学べること。

もう一つは高い目標。

チームとしての使命。

達成したい未来。

心理的安全性だけでは仲良しクラブになります。

目標だけでは恐怖による支配になります。

必要なのは、

「安心」と「挑戦」の両立

です。

森保監督が堂安選手に向き合った姿勢は、そのことを見事に示しています。

心理的安全性とは、何をやっても許される状態ではありません。

高い目標に向かって挑戦するために、お互いの成長を支え合う土台なのです。

私はこのエピソードに、これからの時代のリーダーシップの本質を見る気がしています。


心理的安全性はゴールではない。

高い目標に挑戦するための土台である。

このことを、森保監督と堂安選手の物語は私たちに教えてくれているのではないでしょうか。





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旭コンサルティング 代表:大垣 雅則 (元PASMO代表取締役社長/元東武鉄道取締役/元東京スカイツリー開業広報責任者)



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