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医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【002】「科学的に考える」とは?

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ずいぶん前、何十年も前のことです。テレビ番組で、街ゆく人たちにマイクを向けて質問します。
「強盗、殺人などの凶悪犯罪者の実に94%の人が、日常的に食べている食物があります。そのような危険な食物は、法律で厳しく禁じるべきではないか?」と問うのです。
そして、ほとんどの人はこう答えます。
「エーッ、94%も? それは絶対に禁止しないとヤバイです」と。
その食物とは、いったい何だと思います?
答えは「コメ」です。
そう、最初から引っかけが目的の誘導質問に、まんまと騙されたわけです。

なぜ街ゆく人たちは、こうも簡単にペテンな質問に引っかかってしまったのでしょうか?
それは、科学的に思考していなかったからです。
では、「科学的」とはいったい、どういうことでしょう? 

「科学的であること」
これは本連載においては非常に重要なテーマです。
「科学」と聞いて怯まないでください。
難しい科学の話を理解する必要はありません。
ただ、「科学的」とはどういうことか?については理解していただく必要があります。

さて、凶悪犯罪者の多くが日常的に食べている食物は、本当に危険だと言えるのか?
このことについて考える上で、非常に有効な手段があります。
それは、逆説的に考えてみることです。
「じゃあ、凶悪犯罪を起こさない人は、それを食べていないのか?」と。
逆説的な質問を自分に投げかけてみることは、科学的に考える上でしばしば有効な手段となり、あなたを正解に導くのに役立ちます。

コメ食が凶悪犯罪を起こす一因に「なっている」とか「なっていない」とか、何を基準にして判断するのでしょう?
それは、「対照」(「対象」とは意味が違いますので、ご注意ください)との比較です。
この場合に比較となる対照は、「凶悪犯罪を起こしたことのない人たち」ということになります。
その対照となる人たちが、日常的にコメを食べていないという事実があるのなら、コメ食が凶悪犯罪を引き起こす原因のひとつになっているのかもしれない、と考えることができるでしょう。
ですが事実としては、悪人/善人の区別なく、ほとんどの日本人は日常的にコメを食すのです。
だとすれば、答えは明白です。
「コメ食が凶悪犯罪を引き起こしているとする根拠はない」と。

大事なことですので、もう一度言っておきますと、科学的に考えるためには、「対照との比較」が重要です。
対照とは、科学的な判断をくだす上での基準になるもののことです。

もうひとつ重要なことは、凶悪犯罪者の多くがコメを食べていたという、過去の事実についてしか述べられていないことです。
本当にコメ食が、人を凶悪犯罪に駆り立てる効果があるのかどうかをより確実にするためには、何人もの人に毎日コメを食べさせ続けて、実際に凶悪犯罪を起こすようになるのかを確かめなければなりません。
その際には、対照として、「コメを一切食べさせない人たち」と比較する必要があります。

具体的な例で説明しましょう。
まだコメを食べたことのない、これから離乳食を始めようとする赤ちゃんを200人集めてきて、100人ずつ2つのグループ(AグループとBグループ)に分けます。
Aグループには毎日コメを食べさせ続け、Bグループにはコメを一切食べさせません。
この場合、コメを食べさせないBグループが比較のための「対照群」になります。
そして長期間にわたって観察するのです。
30年後、大人になった2つのグループの元赤ちゃんたちが、どれだけ凶悪犯罪に手を染めたのかを調べるのです。
Aグループの方がずっと多いようなら(例えば、Aグループで10人、Bグループで1人なら)、コメ食がヒトを凶悪犯罪に駆り立てる要因になっている可能性があると考えることができるわけです。

このように、コメ食と凶悪犯罪との因果関係について、より確かなエビデンスを得るためには、過去にさかのぼった後ろ向きの「調査」だけでは不十分で、将来、本当にそうなるのかという前向きの「実験」が不可欠なのです(図)。

図.「後ろ向き研究」と「前向き研究」


ただし、ここで注意が必要です。
あくまでも「可能性がある」と言える程度であって、1回限りの実験でもって、「間違いなく、コメ食が凶悪犯罪を引き起こす原因になっている」と断定できるものではありません。
あとで詳しく述べますが、「科学的」であるためには、もう一度、他の人を対象にしてやってみても同じ結果になるのか、他の地域でやってみても同じ結論に達するのか、「再現性」を確認することが極めて重要になります。

ですが現実には、長期間を要する前向き試験を何度も行って再現性を確認することは容易なことではありません。
ですから、ヒトを対象とした試験で確かな結論を導き出すことは難しいのです。

ここまでお話してきたことをまとめておきましょう。
コメ食と凶悪犯罪との因果関係について、科学的に考える上で、あなたが知っておくべきことは3つ。

1. 「コメを食べる人」に対して、「コメを食べない人」という対照との比較で調べる
2. 「今までどうだったのか」という過去にさかのぼった「後ろ向き」の調査だけでは不十分で、「これから将来、本当にそうなるのか」という「前向き」の実験こそが、「コメ食が人を凶悪犯罪に向かわせる」という仮説を立証するには不可欠
3. ただし、1回の結果だけでもって、断定はできない

くれぐれも、「エーッ! そんな食べ物は禁止しないとヤバい!」などと直感的、衝動的に判断してはいけません。
科学的に考える上で重要なことは、一呼吸おいて、頭を冷やして、客観的に物事の本質を見ることです。

では、客観的に判断するには、具体的にどうすればいいのか?
次回以降、根拠のない思い込みの弊害について、そして、これを排除することの重要性について、お話してまいります。

次回も引き続き、お読みください。


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