尿で判定する「がんリスク検査」って役に立つの?【001】その健康・医学情報、信じていいの?
目次:
検診ですべてのがんが分かる訳ではない
苦痛のない検査が理想的ではあるが・・・・
線虫が尿中のがんの臭いを嗅ぎ分ける??
ある一定の年齢になれば、自治体の援助により全額無料あるいは一部負担で公的な一般がん検診を受けることができます。
でも、一般がん検診では、すべてのがんをカバーしていませんよね。
一方、がんのリスク検査サービスを提供している民間企業も多くあります。
尿を送れば、「一度にあらゆるがんのリスクが分かる」と謳っているものもあります。
「尿なら痛くないし、手軽だし、全部分かるのなら、こっちの方がいいじゃない」、「これをやってれば、自治体のがん検診は受けなくてもいいんじゃない」と思われるかもしれませんね。
でも、ちょっと待ってください。
一般消費者を対象にした民間の検査サービスは、国の認可を受けていません。そして、受けていないのには、理由があるのです。
民間企業の製品/サービスを購入/利用するのは消費者の自由です。でも、購入/利用して後悔することもありますよね。
そうならないように、是非このnoteをお読みください♪
損はさせませんから、是非!
※筆者には、ある特定の商品/サービスを批判し、特定の企業の営業・業務を妨害する意図はありません。意図としては、あくまでも事実を述べた上で、筆者の個人的な、ですが客観的な見解も加えることで、消費者が正しい選択をするのに役立つ情報を提供することのみです。
前回の記事はこちらから↓↓
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1.検診ですべてのがんが分かる訳ではない
多くのがん種において、早期発見が有効であることは、もはや科学的に疑いの余地はない。
がんの早期発見の有効性については、以下のnote記事をご参照 ↓↓
公的に認められたがん検診には、胃がん(内視鏡検査)、大腸がん(便潜血検査)、肺がん(胸部X線検査)、乳がん(マンモグラフィ検査)などがあり、年齢などの条件に合致する人には、市区町村が検診費用の全部または一部を負担する。
なぜ自治体が税金を投入してまで、市民のがんの早期発見に努めるのか?
初期のステージで発見できれば、少ない医療費で回復が見込めるし、さらに、短い治療期間で以前の生活に戻れる可能性が高いのだ。
早期発見によって医療費が削減できる上に、労働者人口(納税者数)の維持も可能になるという訳だ。
自治体にとっては、重要な問題である。
もし発見が遅れ、進行がんとなってからでは、膨大な医療費がかかる上に回復の見込みは少ない。
治療は長期化し、高額な薬を使用しなければならなくなる。
それでも功を奏さず、患者を救えないことが多くなる。
つまり、言い方は悪いが、助かる見込みの少ない患者ほど、カネがかかるものなのだ。
これでは、いずれ医療財政が破綻しかねない。
自治体はやっていけなくなるのである。
実は、多数あるがん種のうち、一般検診(定期健康診断などで行われるもの)が有効であると認められ、検査の実施に公費が投入されているものは、ごく一部のがん種に限られる。
それらはつまり、科学的に有効性が証明されているだけではなく、医療経済的にもコスパが良い(費用対効果が高い)と認められているものだ。
そうでなければ、公費をつぎ込むことなどできない。
重要なことなので繰り返すが、いくら検診で早期のがんを発見できて、多くの人を救うことが可能だとしても、その検査の実施に高額な費用がかかるのであれば、公的資金を投入することはできない。
とても医療財政がもたないのだ。
公的な医療制度においては、優れた医療技術で人の命を救えるだけでは十分ではない。
医療はタダではできない。カネ回りのことも考えねばならないのだ。
「安価で効率的に早期がんを発見できること」
この条件を満たすことが十分に実証されなければ、公的ながん検診とはならないのである。
2.苦痛のない検査が理想的ではあるが・・・・
「忙しい」「面倒だ」「煩わしい」「検査が怖い」「自分は大丈夫だ。たぶん」などと言って、がん検診を先送りにしている人は多いだろう。
まず、医療機関や検診会場に出向かなければならない。
そして、苦痛やリスクを伴う検査もある。
胃や大腸の内視鏡検査は、私も何度も受けたことがあるが、かなりの苦痛を伴う。できれば受けたくないし、正直「もっと楽に検査できないものか?」とも思う。
肺がん検診の胸部X線検査は、苦痛はまったくないが、X線の被ばくを心配する人もいるだろう。実際は、ごく低線量の被ばくであって、健康への影響はほとんど無視できるほどに小さいのだが、そうは言っても、不安に思う人が多いのは事実である。
前立腺がんのスクリーニング検査(「スクリーニング」の意味については、いずれお話したい)である「PSA(前立腺特異抗原)検査」は採血だけで済むが、それでも腕に針を刺さないことには検査できない。
理想的な検査は、体への負担や苦痛がない検査だ。
たとえば、大腸がん検診の便潜血検査は、便の一部を自分で採取して提出するだけだ。
日常的に排便しているのだから、体への負担は何もない。便の採取が、ちょっと面倒なだけだ。
そこで近年多いのが、「自宅で採取した尿を送るだけで、多種類のがんのリスクが一度で分かる」という民間企業の検査サービスだ。
これも、体への負担は皆無だ。
ここで注意してもらいたいのが、これらの尿検査によるがんのリスク判定は、その有効性が国や専門家によって認められていないということである。
あくまでも民間企業が、一般消費者を対象にビジネスとして行う「検査サービス」であって、その有効性については「科学的な実証が不十分」とされるものばかりであり、国や市区町村は何らの認証も推奨もしていないものである。
この点は非常に重要なので、ぜひ覚えておいて欲しい。
公的な一般がん検診に採用されていない検査法は、いまだ科学的な有効性と医療経済的な面での実効性が確立されていないということを。
3.線虫が尿中のがんの臭いを嗅ぎ分ける??
最近は尿に限らず、自分でサンプルを採取して送れば、いろいろな病気のリスクが一度で分かるという民間企業のリスク検査サービスが花盛りだ。
私企業が商売としてサービスを提供しているのだから、効果的な宣伝を打って、たくさんの人に利用してもらおうとするのは理の当然ではある。
なかでも、アグレッシブに広告を展開しており、一般の人の間でも広く知られるようになったのが、尿中のがんの臭いを線虫が嗅ぎ分けることによって、「体のどこかにある多種類のがんを、一度で早期に見つける」と謳っている「線虫がんリスク検査サービスX」だ。
かつて、体長わずか1ミリメートルほどの小さな生き物が、尿中のがんの臭いを嗅ぎ取る能力を有していることを発見した研究者がいた。
線虫が大好きな臭いに引き寄せられて、がん患者の尿の方に向かって移動するという性質を利用すれば、簡便で安価ながんのリスク判定が可能になるのではないかと考えたのだ。
研究者や事業家たちは、その研究成果をもとに特許を取得し、会社を立ち上げ、検査サービスビジネスを始めたのである。
このがんリスク検査サービスXのネット広告における謳い文句はこうだ。
① 自宅で、全身のがんリスクをチェックする時代へ。
② 「あの時検査していれば」を防ぐための最新がんリスク検査
③ 通常の検診では見つけづらいステージ0-Iのがんにも高確率で反応。
④ 全身23種類のがんのリスクを一度にチェック
⑤ 「どの検査を受ければ?」と考え続ける時間を減らせます。
以上の謳い文句は、いずれも同サービスのネット広告の「原文ママ」である。
どうやら、「既存のがん検診の検査よりも優れている」と主張しているように私には聞こえるが、皆さんにはいかがだろうか?
いや、優れているどころではない。
「通常の検診では見つけにくい超早期のがんを高確率で見つけられる」「一度で全身23種のがんのリスクが分かる」というのだから、恐れ入る!
まるで夢のような理想的な検査法ではないか。
これさえあれば、既存のがん検診など、すべて不要ではないか!?
なぜ国や専門家たちは、この素晴らしいがんの検査法をいまだ認めないのだろうか?
その答えは明白だ。
企業が広告で謳っているほどに、このがんリスク検査法Xの有効性は科学的に実証されていないからだ。
この広告が「嘘」だと断じることは言い過ぎかもしれない。
だが、一般消費者に対して誤認を招くような「誇張」があることは断言しておこう!
次回以降、この「線虫がんリスク検査サービスX」が、本当に人々の役に立つのか?について、皆さんと一緒に紐解いていきたいと思う。
きっと役に立つと思う。お楽しみに。
今回の振り返り:
民間企業が広告を打って実施している検査サービスのほとんど(おそらく全部)は、国の認可を受けていない。広告の謳い文句がどんなに素晴らしくても、その診断性能の実証は不十分であると考えるた方がよい。
所定の年齢に達したら、公的な一般がん検診を必ず受けることが基本のキである。一般がん検診を受けず、「民間企業の検査サービスを受ければ十分である」と考える根拠は微塵もない。
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