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医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【040】科学を知らない医師が書いた本を読み解く

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現役の開業医が書いた本


科学論文を発表するのと同様に、書籍を出版するというのは、その評価を世に問うということです。
時に、第三者から批判を受けることがあります。
私もここで、ある医師が出版された著書をとりあげて、その記述内容について医学的に認識を誤った、あるいは科学的に不適切な点を指摘します。
さらに医師が、そのような認識を誤った情報を発信することの危険性について警鐘を鳴らします。

私には、ここで取りあげた本の著者個人を攻撃し、その人格や人間性を否定したり、誹謗中傷する意図はありません。
科学においては、間違っていることは「間違っている」と言わねばならない、正しいことは「正しい」と認めなければならない。
科学的な事実関係を紐解いた上で、間違っていることは「間違っている」と、臆することも遠慮することもなく指摘させていただくのみです。

では、これから、実際に現役の医師が書いた一冊の本を、私といっしょに見てまいりましょう。
現在も書店やネットで購入できる実在する書籍です。
このnoteでは、とりあえずは本のタイトルや著者名は伏せておくことにします。
もし、本連載が書籍化されることになれば、書名と著者名は明らかにしたいなと考えています。

さて、私がこの本を選んだ理由は、一般の読者を対象にして非常に易しく書かれており、難しい医学的なことは何も触れられていないことです。
著者が述べていることは極めてシンプルで、専門用語もほとんど登場せず、一般の人に解りやすく
書かれています。
だからこそ、あなたが、科学的に認識を誤った、あるいは不適切な医学情報を見抜く能力が身についたのかを試すのに、とても良い題材になると考えて、この本を選びました。

著者のN医師は、国立大学の医学部を卒業されてから病院勤務を経て、内科・心療内科・精神科の診療とオーソモレキュラー療法を行うクリニックを開院されました。
病院勤務時代に多くの患者さんを見てきて、「薬は一時的に症状を緩和させたり、改善させたりするかもしれないが(中略)本当の意味での治療とは思えない」と考えるようになり、西洋医学に大いに疑問をもたれたようです。
そんな時に出会われたのがオーソモレキュラー(分子栄養学)
「これこそが治療だ!」と確信し、自身の正しいと信じる医療を実践するために病院を辞め、開業されたとのことです。

 オーソモレキュラーの定義・概念は定まっていないようだが、基本的には、正しい栄養素を正しく摂取させることによってホメオスタシス(体の恒常性維持)を正常に機能させるとの考えのようである(間違っていれば、ご指摘ください)。オーソモレキュラーの医療における有効性、その科学的根拠については、「不十分」と指摘する識者は多い。

がん検診は無意味なのか?


著者は、「がん検診は無意味」と書いています。
「無意味ならまだマシで、むしろ有害。無駄に被爆するだけなので、受けてはいけない」とまで言い切ります。
そう主張する根拠は、『乳がん発生および死亡率の25年フォロー~カナダ乳癌研究』という報告によれば、「定期的にマンモグラフィ検診を受けている人は、そうでない人に比べて、乳がんの死亡率が減少していなかった」との結論に至ったからだと言います。
たった一つの論文だけを根拠にして、著者は、無駄に放射線被ばくを受けるだけで、「要するに、意味ない、ってことです」と切り捨てているのです。
著者は、その根拠とする論文を具体的に引用していませんので、文献データベースで調べてみました。
次のもので間違いないでしょう。


Miller AB et al., Twenty five year follow-up for breast cancer incidence and mortality of the Canadian National Breast Screening Study: randomized screening trial. British Medical Journal, 2014, 348.


このカナダの臨床研究(以下、「CNBSS」という)は、9万人近くもの女性を最長25年にわたって追跡した大規模長期前向き研究であって、つまりエビデンスレベルが非常に高いRCT試験です。
さらに、本論文を掲載したBritish Medical Journalは、LancetやNew England Journal of Medicineに次ぐ、非常にレベルの高い医学系ジャーナルです。
2014年に論文が発表されると、かなりの議論を巻き起こしたようです。
論文の結論を支持する専門家と支持しない専門家とに分かれました(下表)。

表.賛否が分かれたカナダの乳がん検診の有効性に関する臨床研究


この論文では、マンモグラフィ検診を受けた群(マンモ群)と受けなかった群(非マンモ群)とで、乳がんが原因で亡くなる人の割合に差はなかったと言っています。
このことから、マンモグラフィ検査による乳がん検診は役に立たないと結論づけているのです。
この解釈は適切なのでしょうか?

続くッ!

【次回予告】


本連載で何度も繰り返し強調していることですが、どれほど厳密に行われた臨床試験であったとしても、たった一回こっきりの結果でもって、即「科学的根拠」とすることはできません。
再現性が確認されていない限り、科学的に「正しい」とは誰にも言えないのです。
そして、このCNBSSの研究には、議論を免れない非常に大きな問題があります。
それは、試験に使用されたマンモグラフィ装置が、現代の医療のレベルからすると、著しく時代遅れであったということです。
CNBSSの論文は、現代の乳がん検診の有効性を否定する根拠にはなりません。

詳しくは次回。お楽しみくださいね。

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