時空を超えて‥‥小説(将来の夢1/3)
第1回目はシナリオ作品から
タイトル
「将来の夢」
登場人物
隈(くま)(男、登山同好会顧問、准教授)
璃那(りな)(女、同好会部員、大学三年生)
隆史(たかし)(男、同好会部員、大学一年生)
A(女、同好会部員、大学三年生)
B(男、同好会部員、大学一年生)
あらすじ
九月、標高千七百五十六メートルの祖母山(そぼさん)に登る同好会メンバー五人がいた。五人は頂上手前で山小屋に休憩する。そこで璃那と隆史の二人は近くの水場に行った後、別の場所で話し込む。山小屋に残った三人は二人が心配になり、顧問の隈先生が捜しに出る。残ったそれぞれの同級生AとBは誰一人戻らないため、 思い切って三人を捜しに出ることにした。
その間、璃那と隆史は将来の夢を語っていた。璃那は隆史をリードし、ある方法で隆史が尊敬する隈先生に対し、理想の先生度を試そうとする。先生の声が聞こえ、藪の奥から覗く眼差しに、璃那の企みはさらにエスカレートしていく。
ところが三人を捜しに出たAとBは、先生の・・・・・・・・・・。
リードされるがままだった隆史は、神の山の中で湧いた情動で、璃那の将来の夢? を実現してあげる。
複数の息遣い。
山道を噛む登山靴とストックの音。
小鳥のさえずりが絶え間ない。
A「あ、白い花。可愛いぃ」
隆史「ウバタケニンジンですね」
A「ふ~ん、変な名前」
璃那「えっ隆史、あれもしかして鹿?」
隆史「璃那さん、いいことがあるかも。ニホンカモシカかも」
B「カモかもだって。この山、まだそんなのいるんだ」
A「キャァー」
B「な、何?」
A「ミミズ、ミミズ」
璃那「ミミズ? な~んだ」
B「もう、びっくりさせないでくださいよ」
A「だって見て、デカいんだもん。青く光ってるのよ」
隆史「ホントだ」
璃那「確かに気持ち悪い・・・。にしても、もういいんじゃないかな、その手」
A「えっ。あ、ごめん、つい。隆史くん、腕痛くなかった?」
隆史「大丈夫です」
璃那(くっつき過ぎでしょ)
隈「おーい皆(みんな)、そこの小屋で休憩するぞー」
A「休憩だって」
B「よっしゃー」
璃那「水、あるかしら」
隆史「僕の、まだ残ってますけど」
璃那「うん」
璃那(優しい)
シジュウカラのさえずり。
B「着いたー」
木製ドアが開く音。
璃那「あっ、水場の案内が貼ってある。この下、一分かぁ」
B「すっげー、意外と広いじゃん」
木製ドアが閉まる音。
板張りの床を何かに駆け寄る靴音。
A「見て、薪ストーブもあるんだ」
隈「皆、今一時半だからここで四十分休憩すぞ。一ヶ所に荷物は纏めて置いとけよ。それから少し曇ってきたから、汗はしっかり拭いとくように」
隆史除く三人「はーい」「ほーい」「よいしょ」
複数の重いリュックなどが置かれる音。
A「お腹空いたー」
B「えぇー、さっきお昼、国(くに)観(み)峠(とうげ)で食べたばかりじゃない」
璃那「隈先生、水筒に水入れてきていぃい?」
隈「一人は危ないからなぁ。隆史、お前一緒に行ってやれ」
璃那(やったっ)
隈「十五分で帰って来いよ。それ以上経ったら迎えに行くから。手袋忘れるな」
璃那「はぁーい。隆史、行こ」
木製ドアの開閉音。
B「だよな、こんなとこ繋がるわけないか」
A「当たり前でしょ、ここ祖母山の九合目だよ。ここまで来て携帯ゲームやる気。だから目が悪くなるのよ。自然の中で頼れるのは自分の目や耳や鼻」
B「五感、て言いたいんですか?」
A「そう」
B「残りの二感はなんですか?」
A「それはー、口とぉ、それからぁ・・・?? いいの、そういうのは。とにかく頼れるのはコンパスだけっていうことよ」
B「はぁ?」
水が流れ落ちる音と水筒の蓋を閉める音。
璃那「良しと」
シジュウカラの別のさえずり。
時折り吹く風に木の葉のざわつく音。
璃那「隆史ぃ、もうちょっと下りてみる?」
隆史「え、なんで、駄目ですよ、危ないですって。すぐに戻らないと。十五分て言ってたじゃないですか」
璃那「ちょっと話したいだけ」
隆史「ちょ、ちょっと。そんな引っ張らないでください。危ないって」
木々の枝を掻き分け、小石混じりの斜面
を下りる二人の靴音。
璃那「フゥー。ここにしよ。藪に囲まれているからゆっくり話せるわ」
隆史「大丈夫かなぁ」
璃那「大丈夫。ハイ、とにかく座って」
草むらに腰を下ろす二人。
璃那「ねぇ、登って来る途中さぁ、三つ県が接する場所があったじゃない。 覚えてる?」
隆史「うん、覚えてる。六合目辺りの」
璃那「そう。私あれ、なんか人生感じちゃって・・・。隆史って将来何がしたいの?」
隆史「僕? 先生」
璃那「先生! どんな?」
隆史「生物」
璃那「違う。科目じゃなくて、どういうタイプの先生になりたいのかってこと」
隆史「隈先生みたいな先生。学生思いの」
璃那「そっかー。確かにさっきも私の気持ちを大事に考えてくれてたよね。その時の先生、優しい目をしてた」
隆史「璃那さんの将来は?」
璃那「私は・・・、ふふ、後で言う」
絶え間なく遠くから小鳥のさえずりが聞
こえてくる。
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