【能登半島地震】発生1カ月、識者はこう見た
※文化時報2024年2月9日号の掲載記事です。
能登半島地震から1カ月。この間、災害に詳しく宗教に理解のある識者たちは、どう見たのか。
被災者のペースで
大阪大学大学院教授 稲場圭信氏
今回の地震では4回ほど現地に入った。29年前の阪神・淡路大震災以降、いろいろな被災地を訪ねてきたが、今回は道路が寸断されていてアクセスが悪く、厳しい印象を持っている。避難所の状況が1カ月変わっていないことは、考えていかなければならないだろう。
「ボランティアに行くべきではない」「何をしに行くんだ」といった「ボランティア迷惑論」が広がったことも今回の特徴だ。経験者が支援に入っていくことを、社会全体で応援する必要がある。
宗教者も多く現地に入った。真宗大谷派をはじめ、個別の動きも早かった。これまでの蓄積もあって、社会福祉協議会よりも早く活動し、行政から信頼されているような動きが見られた。宗教者がいなければ、今でもより深刻な状況だったのではないかと思われる。
被災者は、これから罹災(りさい)証明書を取ったり家の片付けをしたりと、やらなければならないことが増えてくる。外からボランティアが入り、周りがどんどん前に進むことへの混乱も生じる。頭や心の中を一つ一つ整理するためにも、聞いてくれる人が必要だ。
そういう意味では、すでに傾聴のフェーズ(局面)になっている。どこまで進んだら次のステップを踏むかを考えるのではなく、現場を訪ね、そこに「いる」ことによって思いを受け止めることは、今の段階から必要だ。
スピード感のある力仕事だけではなく、被災者と同じ、あるいはさらにゆっくりしたペースで歩むような支援が、宗教者にはできるのではないだろうか。(談)

稲場圭信(いなば・けいしん) 1969(昭和 44)年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。ロンドン大学大学院博士課程修了。神戸大学助教授などを経て、2016(平成28)年から大阪大学大学院人間科学研究科教授。
体制の大変革必要
オフィス園崎代表 園崎秀治氏
今回の地震はこれまでの地震と全く異なり、深刻な状況だ。奥能登への支援が届かないまま、発生から1カ月が経過した。東日本大震災でさえ、基本的には外地から被災地に入ることが可能で、被災者も外地へ買い物に出ることができた。
ところが、今回は海からの支援ができず、外地から被災地に入るにも使える道路がなく、さらには豪雪に見舞われた。1月10日に石川県輪島市に入ったが、金沢市から往路は5時間、復路は7時間を要した。七尾市や志賀町より北の地域には、ボランティアが日帰りで入ることは難しい。
現段階でもトイレに不自由する状況であり、健康面では最悪だ。仮設住宅についても、水道が復旧しなければ生活できない。災害関連死の増加が懸念される。
2次避難所についても準備不足を感じる。1.5次避難所の小松総合体育館(石川県小松市)に行かないと、避難先が分からない。それでは不安が募り、2次避難が進まない。
特筆すべきなのは、自治体が丸ごと被災したことだ。これまでの地震では、被災しても一部の地域にとどまっていた。おそらく戦後初めての事態だと思う。災害ボランティアセンターを運営するにしても、社会福祉協議会の職員が被災し、体制を構築できなくなった。
現在の被災地支援の在り方は、被災した自治体が受け入れ体制をつくり、国や外地の自治体がそれを使って支援する方法を採用している。イタリアのように、外地の人が全ての支援を担い、被災地の人々が何もしなくていいようにする体制づくりが求められる。(談)

園崎秀治(そのざき・しゅうじ) 1970(昭和45)年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。全国社会福祉協議会の職員として、全国各地の被災地でボランティアセンターの運営に従事。2021年に退職し「オフィス園崎」を設立した。能登半島地震でも災害アドバイザーとして現地入りしている。
【サポートのお願い✨】
いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。
私たちは宗教専門紙「文化時報」を週2回発行する新聞社です。なるべく多くの方々に記事を読んでもらえるよう、どんどんnoteにアップしていきたいと考えています。
新聞には「十取材して一書く」という金言があります。いかに良質な情報を多く集められるかで、記事の良しあしが決まる、という意味です。コストがそれなりにかかるのです。
しかし、「インターネットの記事は無料だ」という風習が根付いた結果、手間暇をかけない質の悪い記事やフェイクニュースがはびこっている、という悲しい実態があります。
無理のない範囲で結構です。サポートしていただけないでしょうか。いただければいただいた分、良質な記事をお届けいたします。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートをいただければ、より充実した新聞記事をお届けできます。よろしくお願いいたします<m(__)m>