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「セクハラ発言」「パワハラ行為」が無くならない原理的な理由

定期的に話す機会がある年下の女性とのやり取りから、「セクハラ・パワハラ」について改めて考えてみたので、その思考をまとめてみたい。

もちろん、既に十分指摘されていることだろうが、「『何が問題なのか』を加害側が理解できない」という点にこそ最大の問題がある。そしてそのために、問題そのものがよりややこしくなっている、という状態にあるのだろうと思う。

さて以下では、とりあえず分かりやすく「加害側=オジサン」と表記する。決してオジサンだけが加害側ではないし、加害側にならないオジサンもいるわけだが、イメージと分かりやすさを優先したい。あと、年齢的には僕も「オジサン」なのだが、「自分はここでいう『オジサン』には含まれない」という前提で文章を書くので、それは許容してほしい。

例えば、セクハラの1つとして指摘されるのが「容姿に言及すること」だろう。「胸が大きい」など考えるまでもなくアウトなものもあるが、「若いっていいなぁ」「顔色悪くない?」なども、時と場合によっては「セクハラ(パワハラ)」とカウントされ得る。

さてしかし、「容姿に言及すること」=「セクハラ」なわけではない。そしてオジサンにはたぶん、このことが理解できない。

「容姿に言及すること」の何が悪いのかと言えば、

①「『容姿を褒めること』は誰にとっても嬉しいことだ」と考えている安易な思考
②「客観的にはプラスに感じられることでも、本人は悩んでいるかもしれない」と考える想像力の欠如
③「あなたが『容姿』に言及すること」によって言外にメタ的な意味合いが加わってしまうことに思い至れない自己認識力の低さ

などだろう。もちろん他にもあるかもしれないが、とにかく、「容姿に言及する」という行為そのものに問題があるのではなく、その背景にある「安易な思考」「想像力の欠如」「自己認識力の低さ」が問題視されているのである。

この文章を「オジサン」も読んでくれているかもしれないので、少し補足しておこう。

①のように、「容姿を褒められて嬉しくない人なんているはずがない」と考えているなら、ちょっと思考を改めた方がいいだろう。もちろん、嬉しいと感じる人もいるが、必ずしも全員がそうなわけではない。僕は以前女性から、「生まれつきのものは『私が選んだもの』ではないから別に褒められても嬉しくない。それより、『買ったモノのセンス』や『行った行動の意図』なんかを褒めてもらえる方が嬉しい」と聞いたことがある。「確かに」と感じる方もいるだろうと思う。

②については、例えば「小さく見せるブラ」が発売されているなど、「胸が大きいことに悩んでいる女性」が一定数いることからも理解できるだろう。自分の価値観で「良い」と感じる要素でも、本人がそう捉えていないこともある。
(一応誤解を避けたいので書くが、僕は別に「胸が大きいこと」を「良い」と思っているわけではない)

③については、例えば異性の上司から「可愛い」と言われた場合、「自分がやっている仕事がきちんと評価されていないかもしれない」と感じる人がいてもおかしくないと思う。「『可愛い』から許容されているだけで、仕事内容が認められているわけではないのでは?」と考えてしまうということだ。また、以前ある女性から、「上司から『顔色が悪い』と、暗に『化粧もしないで仕事に来たのか』と言われた」という話を聞いたことがある。上司はそんな意味を込めて発言していないかもしれないが、「自分の属性を踏まえた上で、自分の言動が相手にどう伝わるか」を含めて行動すべきだと思う。

さて、問題の本質はこのように「安易な思考」「想像力の欠如」「自己認識力の低さ」なのだが、オジサンには恐らくこれらは理解できないだろう。「容姿を褒められて嫌になる人なんているの?」「俺が『良い』と思ったことを褒めて何が悪いの?」「自分はそんなつもりで言ってるんじゃないから知らないよ」みたいに、たぶん問題の本質をそもそも理解しようとしないはずだ。

さて、この状況で、「オジサンからのセクハラ」を止めさせるために、具体的にどういう手段があり得るだろうか。「問題の本質」を理解させて行動変容を促すことは不可能だ。だから結局、

【「容姿に言及すること」は全面的に禁止です】

と決めるしかない。「それが何故ダメなのか」を理解できない相手には、「理由はともかく、それに類する行動はすべて禁止です」と伝えるしかないだろう。現実的な対処法として正しいと思うし、現に今世の中はそういう風になっているだろうと思う。

さてしかし、「(あなたたちには理由は理解できないと思うので)とりあえず一律で『容姿に言及すること』は禁止です」というやり方は弊害を生む。それは、「『行為の禁止』こそが最優先」という風潮が生まれてしまうことだ。

これは、「赤信号で止まる」というケースで考えてみれば分かりやすい。「赤信号で止まる」ことは、法律で決められており、もちろん守るべきだが、この法律が存在する理由は、「車と歩行者がともに安全を確保するため」だろう。だから例えば深夜、まったく車通りのない道路の信号が赤だった場合、僕個人の感覚では「別に渡ってもいいだろう」と思っている。「赤信号で止まる」という法律の役割が、「車と歩行者の確保」にあるのならば、その安全性が誰の目にも明らかなほど十分確保されていると考えられる状況では、そのルールが破られても僕個人は問題ないと考えている(もちろん、法律的にはアウトだし、建前ではルールを守るべきだと思うが)。

ただ、「赤信号で止まる」というルールが厳然と存在することで、「『赤信号で止まる』理由」よりも、「『赤信号で止まる』という行動」の方が強くなる。そして、理由の如何を問わず、「行動」に従わなかったら批判の対象になってしまうのだ。

これは、「赤信号で止まる」に限らず、世の中のあらゆる場面で起こっているだろう。「明確な理由」を背景に「ルールを厳密に定める」ことで、その「明確な理由」に該当しない場合でも「ルールの厳守」が絶対視されてしまうのだ。

そしてこれはセクハラでも同じ状況を生む。「理由を理解できないオジサン」からのセクハラに対して現実的な対処をするために「とりあえず一律で『容姿に言及すること』は禁止です」としたことで、理由の如何を問わず「容姿に言及すること」全般が「アウト」という判定を受けることになってしまうのだ。

テレビのバラエティ番組で、いわゆる「容姿いじり」が出来なくなっているのも、このような背景があるだろう。前述した通り、「容姿に言及すること」の問題点は「安易な思考」「想像力の欠如」「自己認識力の低さ」などなのだから、むしろそのような問題点がクリアされている状況では本来的に「容姿に言及すること」は許容される“べき”なのだ。ほとんどの場合、バラエティ番組はそのような問題点がクリアされていると考えていいだろう(すべてとは言わないが)。しかし、「容姿に言及すること」が「ダメ」となることによって、本来であれば「『容姿に言及すること』が許容される“べき”状況」でもそれが出来なくなっている。

これも結局、「オジサンが理由を理解できないこと」に端を発していると言っていいだろう。

そして、「本来的には『容姿に言及すること』が許容される“べき”状況でもそれが行えなくなっていること」が、「コンプライアンス」という言葉で世間に知られるようになると、結局「どんな場合でも『容姿に言及すること』は許されないのだ」という風潮が生まれてしまうことになる。

そしてそのような風潮は、「セクハラ」などにまったく関係していない人も含めた全員に影響を及ぼすだろう。何より、女性にしても望ましいとは言えない状況になっているだろうと思う。そもそも、「容姿に言及してもらうこと」を素直に嬉しいと感じる人もいるはずだ。また、本当は「オジサンが理由を理解できないこと」に原因があるのに、「女がめんどくせぇこと言いやがるからこんなややこしいことになってるんだ」と受け取る人も出てくると思う。女性全体がそういう風に見られるリスクを有してしまう、ということも、結局女性にとってはマイナスになるだろう。

「『セクハラの本質的な問題』をオジサンが理解しない」せいで、まったく関係ないはずの人も含めた全員の問題として立ち上がってしまうし、一旦このような状態になってしまえば、まず元には戻せない。「理由を理解できていないオジサン」は、「容姿に言及すること」が禁止されていても”うっかり”やってしまうからセクハラそのものは無くならないし、一方で、「容姿に言及する」という行動が全般的に許容されなくなることで、「セクハラの被害者(あるいは、その可能性を有する人)」も含めて窮屈さを感じることになってしまう。

というのが現状だと僕は思っている。

「具体的にどうすべきなのか」という提案はない。「オジサンが問題の本質を理解すること」が最善の解決策なのだが、たぶんそれは不可能だ。だから結局、「中国における『アヘン中毒』の解決策」みたいな方法しかないと思う。

以前何かで知った話だが、「アヘン戦争」の背景となった中国国内での「アヘン中毒」に対処するために、国は大胆な政策を行ったそうだ。それが、「ある一定以上の年齢の人にはアヘンを許可し、それより下の年齢の人には禁止する」というやり方である。既に中毒になっている人たちを改善させることは諦め、まだアヘンに手を出していない若い世代を「アヘン中毒」にしないことに注力した、というわけだ。

オジサンの意識を変えることは難しいし、たぶん不可能だ。だから結局、「オジサンのことはもう諦め、若い世代が正しく『セクハラの問題の本質』を理解できるようにする」しかないのだと思う。

というのが僕の結論だ。

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