自己増殖型ワクチンだけじゃない!「100日ミッション」達成を目指し、CEPIが開発支援する次世代ワクチン
前回の記事で、インドでは2023年6月に自己増殖型(レプリコン)ワクチンの緊急使用許可が出ていたことを取り上げました。それと関連して、CEPIの動きを追っていたら他国での開発状況なども見えてきたので、今回は他国で開発されている次世代ワクチンについて取り上げます。
日本で最初に承認された意味
グローバルプラットフォーム「Impakter」の記事(2023年12月15日付)に、興味深いことがいくつか書かれていました。
冒頭で、「日本の規制当局が世界で初めて自己増殖型ワクチンを完全に承認した」と書かれています。「完全に」というのは、インドでは緊急使用許可だったことに対して使われている言葉なのだと思います。
This time, however, it is the first ‘self-amplifying’ RNA (saRNA) granted full regulatory approval anywhere in the world.
以下、気になった部分を一部引用します。
The new saRNA stimulates beneficial immune-signaling but excessive stimulation can have the vaccine result in blocking RNA replication. The challenge is in determining the optimal dose to get the balance right and this has been tried for decades by the biotechs but has proved to be an obstacle which hadn’t been overcome.
With the approval of the saRNA platform in this instance in Japan, it will now go beyond clinical trials, and we will learn how viable this approach is.
「saRNA (自己増殖型ワクチン)は刺激が多すぎるとRNA 複製を阻害する結果になることがあり、適切なバランスをとるために最適な投与量を決定することが課題である」と書かれていますが、
「hadn’t been overcome(まだ克服されていない)」とも書かれています。
さらに、「日本で saRNA プラットフォームが承認されたことで、臨床試験の段階を超え、このアプローチがどれだけ実行可能であるかが明らかになるだろう」と言っています。
つまり、どれだけ実現可能かは、多くの日本人が接種して初めて明らかになるということではないでしょうか。
さらに、下記の部分も気になります。
With the approval for ARCT-154 secured in Japan, its developers are now seeking authorization in Europe; a regulatory decision is expected next year.
「関係者はARCT-154の欧州での認可を申請しており、規制当局の決定は来年になると予想されています」とあり、記事が書かれたのが2023年なので来年というのは2024年(今年)ということになります。
ヨーロッパで承認される動きは、あるのでしょうか。
そして最後の方に、「CEPI」が登場します。
And more research for saRNA platforms is being funded: Last August, the Coalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI) announced that it was committed to providing up to $3.6 million for the development of self-amplifying saRNA platforms.
2023年8 月に、「CEPI は自己増殖型ワクチンのプラットフォームの開発に最大 360 万ドルを提供すると発表した」と書かれています。
「100日ミッション」実現に向けたCEPIの動き
ここからは、CEPIが発信している情報で確認していきます。
2023年8月8日付の記事で、資金提供にはGennova社の開発も含まれていると書かれており、それについては下記の記事後半で取り上げました。
CEPIが発信する情報を見ていると、やはり「100日ミッション」と「ワクチンライブラリー」の話につながっていきます。
以下、疾病 X(未知の病原体)に関するページです。
ウイルスによるパンデミックの脅威に対して安全で効果的なワクチンを 100 日で開発できれば、制御不能になる前に感染拡大を阻止することができます。この目標は「100 日ミッション」と呼ばれています。この目標を達成することが、次の疾病 X(未知の病原体) を阻止するために必要なことです。
さらに「グローバルワクチンライブラリーの構築に向けた取り組みも支援している」とも書かれています。
日本はCEPI 創設時の資金提供国でもあり、2022年にはCEPIに3億ドル拠出すると誓約しています(下記参照)。
そこから考えると、日本が自己増殖型ワクチンを世界で初めて「承認」したり、従来の風邪も含めて5類にして「検体」を集めようとしていることは、「100日ミッション」を達成するためにも必要なのだと思えます。
自己増殖型ワクチン開発への支援
下記は、2022年10月25日付の記事です。
CEPIは、未知の病原体(疾患X)への迅速な対応を促進するmRNAベースのワクチン技術の開発を推進するために、韓国の開発企業「SKバイオサイエンス」(SKディスカバリーの傘下)との新たなパートナーシップ契約を発表。
SKディスカバリー副会長Chang Won Chey氏は、「我々は、次の生命を脅かすパンデミックから人類を守るためにはスピードが最も重要な要素であることに同意します」と語っています。
<参考>
さらに、2023年12月12日付の記事では、「韓国の忠北大学(CBNU)と提携し、自己増殖型ワクチン技術の開発を進めている」と書かれています。
遡ってみると、2021年8月17日付の記事ですでに、「CEPIはCOVID-19変異株に対する自己増殖型ワクチン候補の開発を進めるため、Gritstone bio社と資金提供契約を締結したと発表した」と書かれていました。Gritstone bio社はカリフォルニア州を拠点としているバイオテクノロジー企業で、自己増殖型ワクチン「GRT-R910」の臨床試験を行っています。
下記は、2023年6月6日に公開された論文です。
「AZD1222(アストラゼネカ社)ワクチンの一次接種シリーズ後に、60歳以上の健康な成人を対象に、saーmRNAベースのSARS-CoV-2ワクチン候補GRT-R910の安全性と免疫原性を評価する初の臨床試験」だと書かれており、データ締め切り時点で、54 人の参加者が適格性評価を受け、コホート 1~4 では 33 人がワクチン接種を受けたとのこと。

比較として、「若年(21〜55歳)および高齢(56〜80歳)の成人に1回または2回の一次投与として投与された自己増幅mRNA(ARCT-021)の安全性と免疫原性を評価した最近の研究のデータ(下記参照)では、年齢層に関係なく、ワクチン接種後3か月で中和抗体価の顕著な低下が示された」と書かれていました。
「ARCT-021」は、日本で承認されたMeiji Seika ファルマ社「ARCT-154(コスタイベ筋注用)」の起源株ワクチンで、非臨床評価と早期の臨床試験は主に ARCT-021 で実施されたとのことです。
「ARCT-021」の論文には、「総合的に考えると、我々の研究結果は、sa-mRNA ワクチンに免疫原性があり、良好な安全性プロファイルを持っていることを示している」と書かれていますが、その後に「その潜在能力を最大限に発揮するには、さらなる開発が必要」とも書かれています。
この流れで、日本貿易振興機構(ジェトロ)のサイトから、興味深い記事(2020年11月13日付)を掘り起こしました。「ARCT-021」の臨床試験は、主にシンガポールで行われていたのです。
米国のバイオ製薬会社アークトゥルス・セラピューティクス(Arcturus Therapeutics)は11月9日、シンガポールの国立医学大学院、デュークNUSの研究者と共同開発中の新型コロナウイルスワクチン「ARCT-021 (LUNAR-COV19)」を早ければ2021年第1四半期(1~3月)にも、シンガポールに供給を開始できるとの見通しを明らかにした。
(中略)
同ワクチンの臨床試験は現在、シンガポールで約106人の被験者を対象に行われている。アークトゥルスによると、初期臨床試験の結果はこれまでのところ好調だとしている。シンガポール経済開発庁(EDB)は今回、同社にワクチン製造の機器、材料などの資金として、4,500万米ドルの限定償還請求権付き(リミテッド・リコース)融資を行う契約を締結した。また、EDBはアークトゥルスと最大1億7,500万米ドルの同ワクチン購入契約も結んでいる。同社はシンガポールのほか、イスラエル保健省とも最大2億7,500万米ドルのワクチン販売契約を締結している。
「2021年第1四半期(1~3月)にも、シンガポールに供給を開始できるとの見通しを明らかにした」と書かれていますが、同社の自己増殖型ワクチンが「日本で初めて承認された」なら実現しなかったということになります。
ここでイスラエルとの契約も出てきて、やっとXで拡散されている動画とつながりました。ある議員が議会で、「レプリコンワクチンを接種するのは日本とイスラエルだけです」と言っている動画が拡散されていたのですが、情報源がわかりませんでした。探しても見つからなかったのですが、2020年の時点で「販売契約を締結」とあります。イスラエルでも承認されれば、Meiji Seika ファルマ社がリリースを出すでしょう。そのようなリリースが出れば注目されるので、まだ出ていないと思います。もし出ていたら、追記します。
シンガポールに関しては、下記の記事(2020年12月29日付)で株価急落について書かれています。
下記の記事(2021年2月25日付)には、アークトゥルス社が不正行為を理由に解雇したCEOを再雇用したこと、ARCT-021 の臨床試験結果が期待外れだったこと、ARCT-021の初回投与量を確保することを目指していたにもかかわらず、アークトゥルス社のワクチン開発はシンガポールの主流メディアではほとんど報道されなかったことなどが書かれています。
これは、ベトナムで「ARCT-154」の緊急使用許可が出なかったのと同じ状況です(下記参照)。
上記で取り上げた記事(2021年8月2日付)には、「臨床試験が中間評価で成功したと評価されれば、年末までにベトナム保健省により緊急使用許可(EUA)が出る予定」と書かれていました。けれども、2021年のうちにEUAが出たという記事は見当たりません。そして、2022年4月20日の記事には、第3相試験のデータを出した後、アークトゥルスの株価が下落したと書かれています。
つまり、日本以外では「期待外れ」だったため、緊急使用許可さえ出なかったということではないのでしょうか。
感染症予防用mRNAワクチンの臨床開発状況(2024年6月3日更新)
インペリアル・カレッジ・ロンドンとAcuitas Therapeuticsの研究者によって開発されたsaーmRNAワクチン候補(LNP-nCoVsaRNA)も治験をしていたようでしたが、途中で止まってしまったようです。
これらから考えると、自己増殖型ワクチンはそれほど効果が期待できないということではないでしょうか。ベトナムやシンガポールが不要と判断したものを、なぜ日本は承認したのでしょうか。
さらに加速するワクチン開発
下記は、2023年6月13日の記事です。
CEPIは、Celestial Therapeutics社(アメリカ)と「‘self-adjuvanting mRNA' (自己アジュバント?)ワクチン」プラットフォームの開発を進める新たな提携を発表した、とのこと。
2024年3月7日の記事には、米国の科学者たちは、最新のmRNAワクチン設計に関連する課題の一部を克服し、ワクチンをわずか100日でより迅速に作成できる可能性のある新しいワクチンアプローチをテストする予定だと書かれています。
CEPIから最大100万米ドルの資金提供を受け、Amplitude Therapeuticsの研究者らは、‘trans-amplifying’ mRNA(トランス増殖型?)ワクチンのアプローチが、現在使用されている自己増殖型ワクチン技術の簡素化された代替手段となり得るかどうかを評価する前臨床研究を実施する予定、とのこと。
‘self-adjuvanting mRNA' ワクチンや‘trans-amplifying’ mRNAワクチンなど、mRNAワクチンをベースとした新しいワクチンを次々と開発しようとしています。
これらは、「mRNAワクチンが安全」だという前提で進められています。けれども、実際は安全ではありません。安全ではないものと比べて有害事象が同じぐらいだったら、本来はそれも安全ではないのです。
「mRNAワクチンが安全ではない」ということを認めさせなければ、この流れはどんどん加速していくでしょう。そして本当に、たった100日で作られたワクチンを接種させられることになるかもしれません。義務や強制という言葉を使わなくても、生活に欠かせないことと結びつけて接種せざるを得ない状況が作られてしまうことはあり得るのです。
まずは、国民が無関心ではないことを示すことから始めなければならないと思います。
下記のバブコメは、2024年8月17日まで募集中です。
「100日ミッション」については、下記の記事でも取り上げました。
