「パキロビッドパック」を使う状況になる前に、読んでおきたい資料
2月10日に、ファイザー社の新型コロナウイルス治療薬「パキロビッドパック」が特例承認されました。添付文書や「特例承認に係る報告書」などの資料が公開されましたが、事前に知っておいた方がよい情報が含まれています。もし、医師からこの薬の服用を提案されたときに、事前に資料を見ておかなかったら後悔するかもしれません。
同意説明文書
PMDAのサイトには、「パキロビッドパックによる治療に係る同意説明文書」が公開されています。併用できない薬についても書かれていますが、たくさんありすぎて、ここには書き切れません。薬を服用されている方は、事前に確認しておいたほうがよいと思います。
「パキロビッドパック」(販売名)の一般名は、「ニルマトレルビル・リトナビル」です。
はじめに、特例承認について書かれています。

本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において有効性、安全性、品質に係る情報は限られており、引き続き情報を収集中で、データが収集された後に有効性や安全性が改めて評価される予定です。
本剤の投与を受ける前に、担当医師から本剤に関する説明を理解できるまで十分に受けてください。
特例承認時の情報は限られており、引き続き情報を収集中であり、「データが収集された後に有効性や安全性が改めて評価される予定です」と書かれています。つまり、販売後に服用した人に起きた症状などの情報を集め、有効性や安全性を改めて評価すると読み取れます。

得られている副作用の情報から、重大な副作用として上記の3つが挙げられています。
スティーヴンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症(中毒性表皮壊死症)はどのような症状かあまり知られていませんが、厚労省のサイトで「重篤副作用疾患別対応マニュアル」が公開されています。前述したPDMAのサイトでも、同じものが公開されています。


1.中毒性表皮壊死融解症とは?
中毒性表皮壊死融解症は、全身が広範囲にわたり赤くなり、全身の 10%以上にやけどのような水ぶくれ、皮ふのはがれ、ただれなどが認められ、高熱(38°C以上)、皮ふや口にできるぶつぶつ、目が赤くなるなどの症状を伴う重症の皮膚障害です。その多くは医薬品が原因と考えられていますが、一部のウイルスやマイコプラズマ感染にともない発症することも知られています。(中略)
なお、スティーヴンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は一連の病態と考えられ、中毒性表皮壊死融解症の症例の多くがスティーヴンス・ジョンソン症候群の進展型と考えられています。
中毒性表皮壊死融解症(中毒性表皮壊死症)は、名前からして怖い感じですが、「全身の 10%以上にやけどのような水ぶくれ、皮ふのはがれ」というのは、かなり衝撃的です。画像検索したのですが、怖すぎてすぐに閉じました。スティーヴンス・ジョンソン症候群も、画像検索は怖いです。
中毒性表皮壊死症もスティーヴンス・ジョンソン症候群も、指定難病になっています。どちらも「治療指針としては、ステロイド薬の全身投与を第一選択とする」と書かれています。ここでも、副作用の治療にステロイドが登場(下記参照)。
スティーヴンス・ジョンソン症候群
5.予後
SJS(スティーヴンス・ジョンソン症候群)では多臓器不全、敗血症などを合併する。死亡率は約3%である。後遺症として皮膚粘膜移行部や粘膜の瘢痕化をきたし、失明に至る視力障害、瞼球癒着、ドライアイなどの眼後遺症を残すことが多い。また、閉塞性細気管支炎による呼吸器傷害や外陰部癒着、爪甲の脱落、変形を残すこともある。
中毒性表皮壊死症
5.予後
SJSに比べ、TENでは多臓器不全、敗血症、肺炎などを高率に併発し、しばしば、致死的状態に陥る。死亡率は約20%である。基礎疾患としてコントロール不良の糖尿病や腎不全がある場合には、死亡率が極めて高い。視力障害、瞼球癒着、ドライアイなどの後遺症を残すことが多い。また、閉塞性細気管支炎による呼吸器傷害や外陰部癒着、爪甲の脱落、変形を残すこともある。
後遺症にも、かなり怖い症状が挙げられています。
後遺症として挙げられている閉塞性細気管支炎も指定難病となっており、薬と通院の無限ループです。
さらに恐ろしいことに、添付文書を見ると重大な副作用は「頻度不明」です。不明ということは、多いとも少ないとも言っていません。


まだ知られていない副作用があらわれる可能性もありますので、本剤服用後に何らかの異常を感じたり、気になったりすることがあれば、医師、看護師または薬剤師にご相談ください。
すでに十分怖いのに、まだ知られていない副作用があらわれる可能性もあるということです。
服用するためには、同意する項目(□)にチェック(✓)を入れます。

●本剤の承認時点においては、本剤を用いた治療についてのデータは収集中であり、データが収集された後に有効性や安全性が改めて評価される予定であること
●予期される副作用について
●本剤に関して得られている情報は限られており、まだ知られていない副作用やリスクがあかもしれないこと
特に、この部分に同意できるか、よく考えておく必要があると思います。
特例承認に係る報告書
PMDAのサイトには、「特例承認に係る報告書」も公開されています。ワクチン恒例の黒塗り祭りが飲み薬にもあるかと思っていましたが、今回はありませんでした。ただ、全体で17ページしかなく、とても少ないです。
試験の解析などは素人なのでよくわかりませんが、人数など、文章から読み取れる部分で気になったところを取り上げます。

第1相試験については触れず、いきなり、第2/3相試験の説明です。2021年7月から実施していて、途中で解析しているようですが、まだ継続中と書かれています。目標例数が、3100例と少ないです。

日本人はたった6例で、そのうちプラセボが2例。因果関係が否定できないという、味覚不全が気になります。この薬を飲んで、味覚不全や頭痛、発熱などの可能性があるなら、飲む意味はあるのでしょうか。


安全性に関するデータの解析も、約1か月後までのようです。

そしてまたしても、「期待できる」「期待できると考える」という表現。データから判断しているはずなのに、科学的ではないように感じます。

「日本人における投与経験は極めて限られている」と書かれています。第2/3相試験で6例だったので、第1相試験は何例だったのか気になったのですが、下記に4例とか2例とか書かれています。こんなに少なくて、審査が通るとは驚きです。

19)海外第I相試験(C4671001 試験)で使用された本薬の製剤は市販予定製剤とは異なるものの、外国人に RTV 100 mg 併用下で本薬250 mg(懸濁液剤)を投与したときと外国人に RTV 100 mg 併用下で本薬 300 mg(市販予定製剤)を投与したときの血漿中本薬曝露量は概ね類似していたことから、当該試験における本薬の安全性情報は日本人における臨床用量での安全性を評価する上で参考になり得ると考える。
19)の注を見ると、第1相試験は「市販予定製剤とは異なるもの」と書かれています。「概ね類似していた」という表現も、科学的とは思えません。人の命に関わる試験なのに、そんなアバウトで審査が通るなんて驚きました。

日本人への投与経験は極めて限られているけれど、添付文書で注意喚起をすれば安全性リスクは管理できると考えているようです。添付文書をじっくり読む人は、どれくらいいるのでしょうか。そして、添付文書に書かれていることをきちんと説明してくれる医師はどれくらいいるのでしょうか。

12歳以上で体重40kg以上の小児に対しても使用可能だと言っていますが、小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
全体として、なぜこんなに臨床試験に参加した人が少ないのに、審査が通ったのか不思議なのですが、やりたくても「できない」ということがわかりました。
対象者の選択基準と、除外基準が書かれています。

重要なのは、除外基準です。

これは、「新型コロナワクチン接種者は参加できない」ということだと思います。ワクチン未接種で、ファイザー社の治験に協力してもいいという人を探すのは難しいので、当然少ない人数になってしまうでしょう。
「ワクチン接種者は参加していない」ということは、とても重要なことだと思います。
ワクチン接種者がこの薬を服用したら、どうなるかは確認していないということだと読み取れます。安全性は、大丈夫なのでしょうか。これは、相当重要なことだと思うのですが、大手メディアではそこに触れていません。
私の読み間違いなのかもしれないと思い、他の資料も調べてみました。
国内で治験参加者を募集しているサイトです。


治験実施計画書番号もC4671005で、やはり除外基準の中に「新型コロナワクチンを接種した、または本治験の第34 日来院時までに接種する予定の方」と書かれています。
除外基準とは、「有効性または安全性の評価に偏りを生じさせることが想定される被験者」を治験の対象外にするための基準だそうです。
日本でも8割以上の人が1回は接種していると言われているのに、接種した人を除外した試験で、接種した人の安全性はどうやって確認するのでしょうか?
有効性または安全性の評価に偏りを生じさせることが想定されるから除外されたのなら、有効性か安全性のどちらか、あるいは両方に問題があるからではないでしょうか。
