副島隆彦&近藤大介『アメリカの衰退で世界覇権を狙う中国の実力』
中国が圧倒的な横綱相撲を世界に見せつけた5月の米中首脳会談。一方で、中国の反日宣伝は日増しにエスカレートしている。
中国は高市政権を本音ではどう見ているのか、湾有事は起きるのか、中国経済に死角はあるか、米中の2大国に挟まれて、これからの日本が採るべき針路は何か──果たして中国に世界覇権を取る力があるのか?
覇権交替を世界史の流れから不可避と見る副島隆彦と、世界から尊敬されていない中国にまだその力はないと見る近藤大介が大激論!
この記事では2026年8月3日刊行の『アメリカの衰退で世界覇権を狙う中国の実力』より「まえがき」と「あとがき」を全文公開いたします。
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まえがき/副島隆彦

この本『アメリカの衰退で 世界覇権を狙う 中国の実力』は近藤大介氏と私のはじめての対談本である。私は、近藤氏と話していて、彼が今の日本で中国研究、チャイナ・ウォッチャーの第一人者であることが分かった。
5月14、15日に北京であった習近平とトランプの米中首脳会談の後、世界はどうなるかを2人で論じた。手前味噌ながら、この本一冊をきちんと読み通せるほどの読書人なら、目下、現下の中国問題、日中問題のすべてをその最先端で理解できるだろう。
私からの質問への近藤氏の答えはまさしく立て板に水で、中国に関わるすべての問題に澱みなくスラスラと、何事であっても明確に話した。生来の極めて優れた頭脳である。これだけのことを詳しく細かく精緻に語れる者は、日本にはあまりいない。
事実、本書の中にも有るが、近藤氏は中国人から「電子レンジのような脳をしている」と言われたそうである。近藤氏は今も精力的に毎日のようにYouTube の「近藤大介チャンネル」他で発信している。中国のことなら、あらゆる領域のどんな些細なことでも即答できる頭能を近藤大介氏は持っている。
前書きでこんなことを私がバラしていいか分からないのだが、今の近藤氏には隠れた役目がある。それは日本政府に、アメリカから強い圧力がかかったり、政治的な緊張が起きた時に、それでも日本政府は国家意思として、首相親書 Premier’s letter プレミアーズ・レター を中国側の副首相に届ける、その係をする任務である。
近藤氏は「そんなことはありません。私は民間企業の社員ですから」と、一言のもとに否定するだろう。だが私の眼力でそうなる。近藤大介は日中関係での中国側の一番上の高官たちと長年交際があって、深い信頼関係を築いている。
この首相親書を秘密に届ける役割というのは、日本とロシアの関係においては、鈴木宗男氏と佐藤優氏が担っている。日本国の意思として「ロシア及び中国とも日本は仲良くします」という意思表示を伝える人材がどうしても必要なのである。
私は中国問題の専門家ではないし中国語もできないが、2007年から激しく思い立って毎年一冊、自分の中国研究本をずっと書いてきた。この20年間で24冊出してきた。だからそれなりにたくさんの中国知識がある。毎年中国へ調査旅行も行った。私が初めて書いた中国本は『中国 赤い資本主義は 平和な帝国をめざす』(ビジネス社刊)である。
私がこの本を書いた20年前から、すでに中国が巨大な成長を続けて、アメリカ帝国の世界覇権に取って代わることを私は確信していた。この本がこんなにも良くまとまって出来上がる上で、担当編集者の小笠原豊樹氏が多大の尽力をした。対談者2人を代表して感謝します。
2026年7月 副島隆彦
あとがき/近藤大介

東京から新幹線「こだま号」で熱海まで行き、駅前のタクシーに「あの高台の上まで行ってほしい」と告げたら、「副島隆彦先生の別荘ですね」と返された。「熱海の名士」なのだ。
小山の上に聳える瀟洒な邸宅に着くと、庭に置かれた大理石のギリシャ彫像の石像群に圧倒された。50体以上がおもむろに、初夏の陽光に照らされている。奥には雄大な相模湾と青空が広がっていた。
「やあ、いらっしゃい」
矍鑠とした副島さんが迎えてくれる。
「天国みたいな別荘ですね」
「そうだよ、ここで思索すると、世界中が透けて見通せるんだ。東京では無理だよ」
早くもジャブを打たれ、そこから長い長い対談が始まった。実際には、ほとんど副島さんが「放談」をかましていたのだが。
副島さんは、独立不羈の思想家である(陰謀論者と呼ぶと叱られる)。呵々大笑したエピソードがあった。
「ある時、大新聞社の幹部に呼ばれたので出向いたら、『お前にも何か書かせてやるか』みたいな高飛車な態度だった。それで私はもらったばかりの名刺を出して、肩書きの部分を赤ペンで消してから言ってやった。『アンタから肩書きを取ったら、一体何が残るんだい?』」こんな百戦錬磨の知の巨人を相手に対談本を完成できたのは、主に2つの理由による。
第一にテーマが中国問題だったこと。場所はアウエーでも、テーマは私のホームグラウンドだ。もう一つは、担当編集者が私にとっての「井戸を掘った人」(挖井人)だったことだ。まえがきでも紹介された小笠原豊樹氏である。もう30年近く前、私の文章に目を留め、月刊誌に原稿依頼をくれた最初の外部の編集者だ。
爾来、『中国人の常識は世界の非常識』(ベスト新書、2014年)、『AIIB不参加の代償』(同、2015年)、『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム、2020年)の3冊でお世話になり、今回が4冊目だ。それよりも、副島さんが長年最も信頼を寄せている担当編集者として知られる。
7時間もぶっ通しで談論風発した後、副島さんが「今日はこの辺で」と言って、缶ビールを出してくれた。微風漂う窓外では、白亜のギリシャ彫像たちが茜色の陽を浴びている。
「あれね、実は全部ニセモノ。1980年代に、中国の彫師たちが地元で創ったものを、巡り巡って買い取ったの。でも豪華な大理石は本物だし、素晴らしい出来だ」副島さんが、茶目っ気のある表情でつぶやいた。

お読みいただきありがとうございました。
続きはぜひ本書をお手に取って
いただけましたら幸いです。
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\ 2026年8月3日刊行 /
副島隆彦&近藤大介
『アメリカの衰退で世界覇権を狙う中国の実力』
目次
第1章 中国が圧勝した米中首脳会談
習近平が横綱相撲で圧勝した米中首脳会談
戦後世界の決着を着けるという中国の意思
帝国― 属国理論で世界を見る
直後の中露首脳会談でプーチンは何を話したか
媚中と言って非難してくる奴らを撃滅する
アメリカ― イラン停戦交渉を仲介したのは中国
帰りの飛行機でトランプは高市に釘を刺した
イラン戦争はトランプの負け
C-130輸送機による米兵救出作戦はカムフラージュ
第2章 4期目に臨む習近平
中国は今、すべてが習近平の4期目のために回っている
習近平を抜擢したのは誰か
共青団系が中国民主党を作る?
中国はAIで世界覇権を制し、AIで滅ぶ?
帝国と文明はどちらが先か
第3章 日本は中国の属国なのか
日本が中国に服属していなかったことがあるのか
空海の謎
空海は国家情報部員?
天安門事件の真実
第4章 中国外交、恐るべし
日本を代表する5人のチャイナ・ウォッチャー
中国外交部の権力争い
ウイグル問題とワンチャイルド・ポリシー
1971年のキッシンジャーの電撃訪中秘話
日中友好の士も拘束される今の中国
第5章 台湾有事は起きません
高市政権の対中姿勢
「日本=イスラエル」論
鄭麗文の訪中
世界の火薬庫は中東と極東しかない
薄熙来事件の真相
張又侠と劉振立
第6章 世界覇権は中国に移るのか
中国にはびっくりするほど頭のいい人が多い
世界の工場・中国
アメリカは第2列島線まで退く
リバタリアンとポピュリスト
衰退するアメリカ
中国漁船衝突事件
叩き上げの習近平はエリートが嫌い
中国の巨大な繁栄は日本人学者が作った
全国の書店・ネット書店にて発売
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副島隆彦(そえじま・たかひこ)
評論家。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。1953年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校講師、常葉学園大学教授等を歴任。
主著に『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社+α文庫)、『決定版 属国 日本論』(PHP研究所)、近著に『米ドル札の消滅 それでも金の上昇は続く』(徳間書店)、『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』(祥伝社)、『人類を不幸にした諸悪の根源』(佐藤優氏との共著、ビジネス社)、『中国はアメリカに戦わずして勝つ』(ビジネス社)他多数。
近藤大介(こんどう・だいすけ)
1965 年生まれ。埼玉県出身。浦和高校、東京大学卒業。国際情報学修士。講談社入社後、北京大学に留学し、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとする。講談社北京副社長を経て、講談社特別編集委員、『現代ビジネス』『週刊現代』コラムニスト。『現代ビジネス』のコラム「北京のランダム・ウォーカー」は連載840回を超え、日本で最も読まれる中国関連コラムとして知られる。2008 年より明治大学講師(東アジア国際関係論)も兼任。
YouTube『近藤大介チャンネル』『ニューソク』も数十万人の視聴者を得ている。2019年に『ファーウェイと米中5G 戦争』( 講談社+ α新書) で岡倉天心記念最優秀賞を受賞。昨年刊の『ほんとうの中国』(講談社現代新書)は約5万部のベストセラーとなった。本著が38冊目(共著も含む)となる。
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