見出し画像

【家族の介護】入居施設での家族の“したたかな立ち回り方”


無事に施設へ入居させ、ホッと一息。

 しかし、次にやってくるのは「本当にちゃんと面倒を見てくれているのだろうか?」という不安です。

「高いお金を払っているんだから、完璧なケアをして当然」


 そう思うご家族の気持ちは痛いほどわかります。しかし、特養をはじめ10年以上で現場とマネジメントを経験した私から、残酷な真実をお伝えします。
 介護スタッフも「感情」を持った人間です。
 「口うるさくて高圧的な家族の親」と、「いつも気遣ってくれる家族の親」。現場のスタッフが、無意識のうちにどちらに手厚く接してしまうかは、火を見るより明らかです。
 今回は、施設長や相談員、現場スタッフの心理を逆手に取り、あなたの親に「良いケア」を優先して回してもらうための、冷徹かつ合理的な「家族の立ち回りロジック」を公開します。

■ ロジック1:面会は「規則的(事前)」に行くことで現場をコントロールする

 面会は「いつ行くかわからないようにして現場に緊張感を持たせる」のも一つの手ですが、逆に「毎日決まった時間に行く(または事前に伝える)」ことで、親にとって最高の状態を作らせることも可能です。

例えば「毎日必ず14時に1時間面会に来る家族」がいたとします。
 決まった時間に来るとわかっていれば、現場のスタッフもそれが習慣化されます。
「ご家族が来る時間だから、起こしておこう」
「お風呂の時間は避けよう」
「先にトイレへご案内しておこう」
と、スタッフ側が勝手に準備をしてくれるのです。

 結果として、ご家族が来る時には親御さんがいつも快適な状態に保たれます。さらに、スタッフ側も余裕を持てるため「最近こんなご様子でしたよ」「〇〇が足りないので持ってきていただけますか?」など、積極的なコミュニケーションが生まれやすくなるというメリットがあります。


■ ロジック2:クレームは「相談」のフォーマットに変換する

 親の服が汚れていた、頼んだことができていない。ここで「どうなってるんですか!」と怒鳴るのは下策中の下策です。

疑い深いご家族の中には、以下のような行動をとる方が実際にいらっしゃいます。
・ 日々どんな服を着ているか用紙を用意し、スタッフに毎日記入させる。
・ 毎週面会に来ては、親の身体を隅々までチェックし「小さなアザ」があれば虐待だとクレームを入れる。
・「何をしてるかわからないから」と堂々とペット用見守りカメラを設置し、24時間監視する。

 これに対する現場のリアルな本音を言います。「そこまで言うなら、なぜ自分で家で看ないんだろう?」です。
一度でも現場から「モンスター家族」という共通認識を持たれると、「触らぬ神に祟りなし」のルールが発動します。
「いつ何を言われるかわからないから、必要最低限のこと以外は何もしないでおこう」と、ケアが防衛的なものに格下げされてしまうのです。
 人手不足の現場も、限られた時間で最大限のケアをやっているつもりです。だからこそ、要望があるときは「お時間ある時にお願いします」「これはどうしたらいいですか?」と【相談】の形に変換してください。スタッフのプライドを傷つけずに改善を促す、最強の対人ハックです。


■ ロジック3:親の「身の回り品(衣類・靴)」を現場に最適化する

 「本人が気に入っているから」と、5本指ソックスやサイズギリギリの服、フックで留めるズボン、靴ではなくスリッパを持たせるご家族がいます。
 自分自身で脱ぎ着できるうちは問題ありません。しかし、第三者が介護するとなると「メチャクチャやりづらい」だけでなく、親御さん自身に痛い思いをさせてしまいます。スリッパに至っては、すっぽ抜けて滑り、転倒・骨折するリスクの宝庫です。

着脱しにくい服ばかりだと、現場はどうなるか?
「あー、この人の服、着させづらいんだよな。特定の着やすい服だけ着せよう」
「痛がるから、夏だけど冬用のゆったりした服をいつも着せよう」といった妥協が実際に起こります。

 介護される側になった瞬間から、持ち物は全て見直してください。家族の好みもあると思いますが、自分でできない以上は一定の譲歩が必要です。実態に合ったものを購入し、何を買えばいいかわからなければ、必ず相談員や介護スタッフへ相談してみてください。
 こういった「小さなストレス」がないだけで、スタッフは親御さんに対し、心に余裕を持った優しい介助ができるようになります。


■ ロジック4:独りよがりな「差し入れ」は親の命を縮める

最後に、絶対に気をつけてほしい「差し入れ」のルールです。

① 職員への差し入れ
 喜ばれますが、施設によってルールが異なります。徹底的に断る施設もあれば、角が立つからともらっておく施設もあります。
 かくいう私も、家族の押しに負けて受け取ってしまい、後で施設長にメチャクチャ怒られた経験があります(笑)。施設のルールは必ず守ってください。

② 入居している親への差し入れ(※要注意!)
 これは最悪の事態を引き起こしかねません。理由は以下の通りです。

・誤嚥・窒息のリスク:親が食べたいと言うからと、食形態が合わないものをこっそり食べさせてしまう。私が経験した最悪のケースでは、看取りの方に家族が好きなお菓子を食べさせ、大量に吐血して苦しそうにされていました。
・持病の悪化:糖尿病があるのにお菓子をこっそり食べさせ、毎月の採血で数値が悪化する。引き出しの奥に隠しているケースが本当に多いです。

「親が喜ぶから」という善意が、命取りになります。
 急変時の対応をするのは全て介護スタッフです。そういった行為をする家族は警戒され、帰った直後に部屋中を捜索され、持ち込まれたものは没収されます。裏では「あんなに自由にするなら、家で看ればいいのに」と散々に言われます。
 ただし、入居時に確認してOKをもらっている場合や、看取り(ターミナルケア)の時期に施設側から「好きなものを持参してください」とお願いした時は別です。その際はぜひご協力をお願いします。


■ まとめ

「お金を払っている客」というプライドは、親のケアにおいては1円の価値も生みません。
現場のリアルな人間心理や限界を理解し、システムとして「したたかに立ち回る」こと。それこそが、入居した親を守り、より良い余生を過ごしてもらうための最大の防衛策なのです。

いいなと思ったら応援しよう!