『経済運営の司令塔』政権、官邸と市場の距離
2026年7月21日、『経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)』が閣議決定された。こちらのエントリーで言及した通り、6月30日に公表された原案が市場で議論を呼んだ経緯がある。
一部では骨太ショックという報道もあった。この点について、高市首相は「閣議決定もしていない原案がショックの原因だと思っていない」と発言しており、実際に閣議決定されたものは原案とほぼ変わっていない。基本的には、語句の修正や日付の追加、計画名の明示など、最終版として記述が具体的になった程度だ。
そうした中、やや例外的に見える修正は金融政策に関する言及である。閣議決定されたものでは以下のように記述されている。
「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である。政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく。日本銀行には、内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、日本銀行法(脚注1)、政府・日本銀行の共同声明(脚注2)の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する(脚注3)。
日本銀行法(平成9年法律第89号)。
「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」(平成25年1月22日内閣府・財務省・日本銀行)。
日本銀行法第3条(日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない)に基づき、金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる。
当該箇所は、原案では以下のように記述されていた。
「強い経済」の実現に向けては、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要である。政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく。日本銀行には、内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、日本銀行法(脚注1)、政府・日本銀行の共同声明(脚注2)の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
日本銀行法(平成9年法律第89号)。
「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」(平成25年1月22日内閣府・財務省・日本銀行)。
「安定的な物価上昇の実現に資すること」が重要であると明示した一方、「金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる」を脚注に追記した。高市首相は骨太の原案がショックの原因だと思っていないと述べたが、仮にそうであるなら日銀の独立性に言及する必要はなかった。気にしていないと言えばいうほど本当は気にしているのだろうと勘ぐりたくなる。
「与党の意見や指摘を踏まえた修正の中の一つだ」というのが城内実経済財政相の説明だ。おそらくだが、そもそもこの骨太の方針の全体のスタンス自体がまずいという意見は党内に少なからずあるのではないか。その上で、市場の反応も考慮して渋々修正したのがこの箇所である。しかしそうだとするならば、修正は非常に軽微にとどまっている。最初に述べた通り、内容は原案からほとんど変わっていない。
今回の骨太の方針2026は、所謂官邸主導の産物であるらしい。「官邸が原案起草」裏目政権、市場と距離浮き彫り
高市政権発足から間もない2025年11月。「自分たちで一から書く。財務省に原案をつくらせない」。経済運営の司令塔である城内実経済財政相は高市早苗首相の経済ブレーンらでつくる「検討チーム」を立ち上げた。
執筆時点、長期金利の上昇トレンドが変わったとは言い難く、そして今度は円安が一段と進んでいる。「経済運営の司令塔」がどうにも頼りないように見えるのだが、もう少し幅広い意見に耳を傾けた方が良いのではないだろうか。
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