『見通しが実現する確度』2025年6月金融政策決定会合レビュー
2025年6月17日の金融政策決定会合で、日本銀行は、政策金利の据え置きを決定するとともに、2026年4月から2027年3月までの国債買入の計画を公表した。決定内容は大方の予想通りであり、市場の反応は限定的だった。
国債買入の減額ペース
国債買入については、2026年3月までは従来の計画を維持し、その後の1年間は減額ペースを落として進める。

こちらのエントリーで筆者が想定したパターンのうち、とりあえずケース②が採用されたことになる。

とはいえ、今回の決定ではあくまで2027年3月までの計画案だ。その後も買入金額を減らしていくのか、あるいは維持するのかは決まっていない。仮に同じペースの減額をもう1年間延長するなら、長期的にはケース①に近くなる。
会合後の記者会見で植田総裁は、
減額を続けることによって、国債市場の機能度の回復を目指しているわけですが、そのペースが限界的にですけれども、少しゆっくりになるということはあるのかもしれないと思っています。ただし、1年先の4,000億か 2,000億、それが1年間という違いですので、例えば、残高でみた私どもが保有する国債がどれくらい減るか、それが機能度に強く影響すると致しますと、そこの違いはそれもかなり限界的なものであるかと思います。限界的な違いではありますが、少し慎重に進もうということで、2,000億という数字の決定に至ったところです。
と説明した。1年間の4000億か、2000億かという二者択一であれば、確かに大きな違いはないかもしれない。2027年4月以降については、
それから2.1兆円、27年1~3[月]期に予定通りいけばなるわけですけれども、そこで打ち止めなのかあるいはどこまで、どの辺が適当かと考えるかというご質問だったと思いますが、これについては、来年の中間評価の段階で改めて考えを示せればというふうに思っております。
ゴールはどういう姿かということですけれども、例えばですが日銀の国 債保有残高はどれくらいであるのが適当か、市場の機能度とは直接ではないですけれども間接的には関係していると思いますが、その変数、指標だけを取ってもなかなか決めがたい難しい論点がございますので、少し時間をかけて決めていきたいと思っております。
と述べるにとどめた。
それで金利は
国債買入の減額、日銀のバランスシート縮小は長い道のりにならざるを得ず、今回の決定で何か急な変化が起こるとは考えにくい。総裁会見では、
国債オペの金額の増減を金融政策手段として用いないという考え方は、1年前と同じであります。主な金融政策の手段は、現在、短期金利の操作ということで行ってきております。
という認識が確認された。あくまで政策手段は短期金利だ。この点、植田総裁の発言は引き続き慎重である。
今後の金融緩和度合いの調整を判断するに際してのデータの点ですけれども、難しい局面にありまして、前回も申し上げたかもしれませんけれども、センチメント関係の指標は今悪いものが割と増えてきています。世界的にですね。ハードデータについては、いろんな理由がありますが、まだしっかりとしているという大まかには感じかと思います。
例えばタイミング的にいえば、今年の後半ですね、7月以降後半に入りますけれども、いくつかのデータに悪い動きがみられるんではないかというふうに予想している人が多いかと思います。
そういう動きがどれくらいになっていくか、われわれの見通しとの関係で、それとの判断、比較において見通しが実現しそうかどうか。その判断次第では、はっきりとそこから先もう1回上向きに転じるっていうところが確認できなくてもというご質問の点は、確か1、2回前にもそうお答えしたと思いますが、その通りかと思います。見通しの確度次第ということになるかと思います。
基調的物価上昇率が上がりつつあるとはいえ、2[%]を下回っているということ、加速感を持って上がってるという状況ではないということ、ただしこれも申し上げた通り、現在の消費者物価総合の高い伸び率が期待インフレ率への影響等を通じて基調的物価に影響していくという可能性もあり得ないことではありませんので、注意深くみていきたいと思っております。
分からないという率直な認識が示されていると言っても良いかもしれない。あるいは、示唆的な発言が市場にボラティリティを供給することがないようにという意図もあるだろうか。
見通しが実現する確度
声明文では、
金融政策運営は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。
という方針が維持されている。では、見通し実現の確度が高まったと判断できるタイミングはいつなのか、きっかけを探すのが難しい状況になっている。
さて、ちょうど本稿を執筆している2025年6月20日、5月の消費者物価指数が公表された。総合3.5%、コア3.7%、コアコア3.3%であり、総合とコアが2%を上回るのは38カ月連続だ。

直近、米国ではCPIが2.4%に対して政策金利は4.25~4.5%、ユーロ圏はCPIが1.9%に対して政策金利は2.0%である。引き続き、インフレ率の実績値は日本が最も高い。

通商政策等、経済、物価を巡る不確実性が高いという見方は理解できるが、あくまで金融政策の目標は物価だ。日銀は、基調的インフレ率は未だ2%程度のレンジより下にあり、インフレ率は低下していくという見解を示し続けている。
しかし少なくとも2022年以降、日銀が示してきた見通しは実現しなかった。それは見通しほどには物価が上がらなかったという意味で実現しなかった訳ではなく、物価が上がり続けているという意味である。
見通しが実現する確度が低いから緩和的な金融環境を維持するという説明を素直に読めば、やや奇妙な印象は拭えない。
いずれにしろ、物価がスパイラル的に上昇していく状況ではないだろう。ほぼ30年にわたって刷り込まれたデフレ、ゼロインフレは悪というイメージはそう簡単に消えそうにない。
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