動作分析は答えを教えてくれない3―答えを測るために編―
1. 前回のおさらい:平均球速という“答えのものさし”
前回の記事では、球速を取り上げ、MAXよりも平均球速が「答えがあるかないか」を測るには科学的に適しているという話をしました。
今回はその続きです。
2. トレーニングの“答え”とは?
では、平均球速を上げるために有効なトレーニング、つまり「答え」とは何でしょうか?
3. 理想的な実験を想像してみる
たとえば100人の投手を集めて、50人ずつ2つのグループに分けます。
片方には新しいトレーニングを、もう片方には通常のトレーニング(または何もしない)をしてもらう──。
YouTubeやnote、Instagramなどで紹介されているトレーニング法の中で、
「50人の平均球速を上げられそうな方法」はどれでしょうか?
スポーツ科学者は、こうした実験を行い、結果を比較して論文にまとめます。
これがスポーツ科学における“トレーニング研究”です。
4. 現実的には“無理だらけ”の壁
…ただ、実際にやろうとすると現実はとても厳しい。
投手100人を集めるのは無理。
50人に自分の考えたトレーニングをしてもらうのも無理。
ちゃんとやってくれるかを見守るのも大変。
しかも、トレーニングは1週間で効果が出るものでしょうか?
「1か月お願いします」と言えば、断られる可能性も高い。
つまり──無理、無理、無理。
5. 研究の現場が抱える現実
現実的に実験ができるのは、せいぜい40人を20人ずつに分ける程度。
でもそれでも投手40人となると、いくつものチームの協力が必要です。
実際、試合時期に選手が実験に協力してくれることは稀で、というか、そもそもお願いするのも気が引けるのが現状です。
とすると1チーム8人投手が居たとして5チームですよね。
実際では大学には20人くらい投手が居るので、その方たちに全員参加していただくくらいが現実的でしょうか。
つまり、
「こうした方が平均球速が上がるかも!」
という仮説を立てても、検証することすら難しいということです。
世界的に見ても、「フォーム改造による平均球速向上」を
実験で確かめた研究は、ほとんど存在しません。
6. それでもフォーム改造は行われている
もちろん、現実の野球界では、
フォーム改造をして平均球速を上げた選手がたくさんいることも事実です。
それは科学者もよく知っています。
7. 成功と失敗、そして科学的な冷静さ
ただ、重要なのは「何人成功して、何人失敗したか」という視点です。
もしある方法で1人が大成功してメジャーリーガーになっても、
同じ方法で100人が失敗して平均球速が落ちたなら、
科学的にはそのトレーニングは「一般的にお勧めできない」という結論になります。
自分が紹介するトレーニングが有効だと情報を伝える際、普通は100人が失敗したとは書きません。
研究では、そこも公表しなきゃいけないというルールがあるのです。
つまり、科学的にトレーニングを考えるなら、
「○○選手がこのメソッドで成功!」という記事を見たときに、
“何人くらいはうまくいかなかったんだろう?”
と心の中でつぶやけるくらいの冷静さが必要です。
8. まとめ:科学との“距離感”
スポーツにおいて「科学」という言葉は、ひとつのブランド価値を持っていると思います。けれど、実際に論文を読んだり書いたりしている立場から見ると、多くの人が“科学でトレーニング方法が分かっている”と思いすぎているように感じます。
もちろん、私は記事や研究を通して「科学で分かること」を伝えていくつもりです。しかし、それを使う選手や指導者の方には、「このトレーニングが自分(あるいは選手)にとって本当に有益なのか」を敏感に感じ取っていただくことが大切だと考えています。
そのため、私たちはイベントを通して“指導する”というよりも、客観的に見たデータを返すことを通じて、選手一人ひとりが自分の身体や動きを考えるきっかけを作ることを大切にしています。
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【イベントの紹介】
📆日時:11月29日(土)、30日(日)
🎈 場所:青森県青森市 カクヒログループアリーナ(室内練習場)
😀参加費:無料(時間の予約をして下さい)
科学的根拠に基づくスポーツイベント
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
ご予約・詳細はこちら:
HP: https://www.catchoneverywhere.com/
クラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/889369/view
インスタ:https://www.instagram.com/catch_every/
