「頂点がないグループ」の「頂点」とは——櫻坂46 5th YEAR ANNIVERSARY LIVE
32人のセンターが国立の地に立つ
ライブ冒頭、初日では前列メンバーしか顔のアップが抜かれなかったのが、2日目の配信では全員を映すように変更された。それだけで「全員センターじゃん!」という神演出になる。
ほかにも小島のピアノが長めになってたり、『Start over!』のラスサビで藤吉が心臓の振りを変更したり、細かい改良があったようだ。
小池美波の「頂点がないグループ」について、もう一度考えてみる。
一人ひとりのアイドル人生を1本の線とし、それらの線が交わる点がグループの目標=頂点とする。「頂点がない」とは32本の線が「グループを大きくしたい」という共通のベクトルをもつ決して交わらない平行線となる。それはどこまでも太く高く伸びる櫻の樹のようになるだろう。
また、グループの形として「頂点がない」とすれば、(曲線にも頂点があるとして)図形をかたちづくる頂点=境界(輪郭)がないということである。森敦『意味の変容』を引用すれば、境界とは内と外を区別するものであり、境界のない側は中心がない「無限の空間」(『静寂の暴力』)となる。また、中心がないということは中心が遍在(全員がセンター!)していることである。
線としてのメンバー、面としてのグループ。さらに次元を1つ上げて、三次元的な視点を入れると、国立のメインステージのようになる。舞台奥に消失点を置いたパースペクティブ(遠近法)な構造になっていて、手前から奥へと時間軸が設定される。遠近法において、平行線は無限遠点(消失点)で仮想的に交わる。彼女たちにとって頂点とは、永遠や絶対がない現実ではほとんど到達不可能な先にある「約束の地」(『青空が見えるまで』)だ。それはカントのいう「理念」のようなものかもしれない。
『The glowing up train』『光源』『Nobody's fault』は消失点=未来に向かって進んでいく構成になっていて、そのとき、メンバーとBuddiesは同じ方向を向いていることになる。
セットリストに見る今後の展開
1曲目『The glowing up train』と、最新リリース曲を最初に持ってくるのは本来あるべきパターンだと思うし、2・3曲目もシングル曲を並べてきて、王道中の王道セットリストだと思う。
この構成は、1月に開催された「LAWSON 50th Anniversary presents Special LIVE」のセットリストと似ていて、あんまり櫻坂を知らない人にも楽しめるよう組まれている。全員参加曲となった『コンビナート』も「楽曲によってはみんなで色を合わせる曲があります」という告知とリハーサルの意味合いもあったのでは。
ペンライトというと『マモリビト』が白やサクラピンクでなく欅の緑に染まったのは意外だったけど、楽曲が三期から四期へと引き継がれたことへのBuddiesからの肯定の色という解釈でいいだろう。逆にサクラピンクがペンライトの型式と電池の残量具合によって微妙に色が揃わないのが気になる……。
セットリストにもストーリーがあるならば、櫻坂のライブは起承転結でなく、序破急だ。それはラストの締めくくり方にある。起承転結だと、最後のアウトロで盛大に盛り上がって「サンキュー!」って終わる感じ。序破急は、物語を回収しないまま切って落とすように終わる。
『摩擦係数』の特効で終わった2nd TOURは典型的な例だ。3rd TOURは、芝居のエンディングのように大きな物語が終わった後、守屋が一人歩き出し新しいはじまりを予感させるところで不意に終わる。最後に挨拶がつくパターンでも三期生ライブの『静寂の暴力』の余韻は残り続ける。
起承転結は自己解決的に幕を下ろす。序破急は結末を見る側に委ねる型式といってもいい。では、彼女たちは私たちに何を委ねているのか。
かつて三期生ドキュメンタリーで「歌を届けることが一番大事」という指導がされていたが、これは二期生・四期生にも叩き込まれていることだろう。それは楽曲・パフォーマンスを届けるのではなくて、楽曲・パフォーマンスを通して届けるものがあるということだ。
「5th YEAR ANNIVERSARY LIVE」のラスト、彼女たちは未来に向かって歩き出す。同じ方向を見つめる私たちが受け取ったメッセージは明確だ。
そして、受け取ったものは倍返ししないといけない。
ライブとリピート配信の間に、14thのミニライブ配信があったが、パフォーマンス込みで振り返るとどの楽曲も印象が一変。
全般的にロックテイストが強く、ストレートな8ビート(TGUT、キスが苦い)だったり、リズムが細かいダンサブルな楽曲(ドライフルーツ)だったり、インストに焦点をあてるとかなりバンドっぽい。『Start over!』以来のアルバムとして聴ける1枚になってると思う。
『僕は向いてない』はRadiohead『Creep』のようだ。
