10本のバラに15本で返すSEは、提案で負けているのかもしれない
こんにちはあるいはこんばんは。
提案前に、競合の情報が少し見えることがある。
他社はこの機能を出しているらしい。
価格はこのくらいらしい。
AI活用も前面に出しているらしい。
そうなると、こちらも何かを足したくなる。
機能を増やす。
説明資料を厚くする。
比較表で〇を増やす。
価格を下げる。
たぶん、真面目に考えているからこそ、そうなる。
でもその時点で、少し負けているのかもしれない。
10本に15本で返したくなる
Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)の言葉として紹介されることがある話に、こんなたとえがある。
ライバルが女性に10本のバラを贈ったとする。
そのとき、自分は15本のバラを贈ればいいのか。
そう考えた時点で、たぶん負けている。
正確な一次出典までは確認できていない。
だから、ここでは名言としてではなく、仕事を考えるためのたとえとして置いてみたい。
この話は、システムエンジニアの提案にもかなり近い。
相手より多く返す
相手より安くする
相手より早くする
相手より機能を増やす
一見すると、努力しているように見える。
実際、努力はしている。
でも、少し怖いのは、その時点で勝負の軸を相手に渡してしまっていることだ。
負けているのは、受注の前かもしれない
ここでいう「負けている」は、受注で負けるという意味だけではない。
考える軸を、先に相手へ渡してしまっているという意味だ。
相手が機能数で来たから、こちらも機能数で返す。
相手が価格で来たから、こちらも価格で返す。
相手がAI活用で来たから、こちらもAI活用で返す。
もちろん、それが必要な場面はある。
比較される以上、最低限の土俵には乗らないといけない。
機能も、価格も、納期も、品質も無視できない。
ただ、そこばかり見ていると、いつの間にか競合を見る時間が増えていく。
本当は、顧客を見ないといけないのに。
競合を見ている時間が長くなるほど、顧客を見る時間が短くなる。
ここが、15本返しの怖さだと思う。
顧客が欲しいのは、本数ではない
顧客が本当に欲しいものは、機能の多さだけではない。
価格の安さだけでもない。
導入期間の短さだけでもない。
AIという言葉の新しさだけでもない。
顧客が気にしているのは、もっと現実的なことだったりする。
導入後に現場が混乱しないか
社内で説明できるか
今の業務をどこまで変える必要があるのか
問い合わせは増えないか
責任範囲は曖昧にならないか
トラブル時に誰が動くのか
最初に困るのは、どの部署の誰なのか
そういう不安は、機能一覧だけでは消えにくい。

むしろ機能が増えるほど、顧客は判断しにくくなることもある。
提案書を厚くすると、こちらは安心した気になる。
でも、顧客にとっては、読む量が増えただけのこともある。
多い提案より、判断しやすい提案の方がありがたいことがある。
15本のバラは、理解の証拠とは限らない
15本のバラは、努力の証拠ではある。
でも、理解の証拠とは限らない。
ここは、自分も気をつけたいところだ。
顧客のためにと思って、提案内容を増やす。
不安を消すために、説明を足す。
比較で負けないように、項目を増やす。
ただ、それが本当に顧客の不安に向いているかは別の話だ。
顧客が聞きたいのは、
「他社より多いです」
ではなく、
「御社の場合、ここが判断ポイントになります」
かもしれない。
「この機能もできます」
ではなく、
「この業務では、ここまで自動化して、ここからは人が確認した方がいいです」
かもしれない。
「AIを使えます」
ではなく、
「AIに任せていい部分と、人が責任を持つ部分を分けておきます」
かもしれない。
SEの提案で大事なのは、全部を盛ることではなく、顧客が判断できる形にすることだと思う。
提案は、顧客が説明するための材料でもある
顧客は、提案を見てすぐに採用を決めるわけではない。
上司に説明する
関係部署に確認する
現場の反応を想像する
費用対効果を聞かれる
導入後の責任範囲を問われる
そのときに必要なのは、華やかな機能一覧よりも、説明できる材料だったりする。
提案とは、顧客を説得する資料である前に、顧客が社内で説明するための材料なのかもしれない。
だから、提案で返すべきものは、15本目のバラではない。
返すべきなのは、顧客が判断しやすくなる材料だ。
何ができるのか
何はできないのか
どこにリスクがあるのか
どこから先は運用設計が必要なのか
どの判断を顧客側にお願いする必要があるのか
導入後、最初にどこが詰まりそうなのか
こういうことを整理して返す。
それは、華やかではない
比較表では目立ちにくい
一瞬で分かる強さもない
でも、顧客にとっては助かることがある。
この人たちは、うちの業務を分かっている
都合の良いことだけ言っていない
導入後のことまで考えている
あとで困ったときも、一緒に整理してくれそうだ
そう感じてもらえることが、最後に選ばれる理由になることがある。
発信や副業でも、同じことが起きる
これは、提案だけの話ではない。
発信でも、副業でも、似たようなことが起きる。
読まれている人を見ると、こちらも足したくなる。
もっと強いタイトルにする
もっと情報量を増やす
もっと専門的に見せる
もっと分かりやすくする
もっと役に立つ内容にする
それ自体は悪くない。
ただ、相手より多く返す方向ばかりに行くと、自分の文章ではなくなっていく。
本当は、自分が見た景色や、仕事で感じた小さな違和感や、言葉にしきれない引っかかりを書くから、その人の文章になる。
副業でも同じかもしれない。
安くする
早くする
量を増やす
サービスを足す
それだけで選ばれようとすると、どこかで苦しくなる。
大事なのは、相手より多いことではなく、どんな理由で頼まれるかだと思う。
差別化とは、上乗せではなく理由を変えること
差別化という言葉は、少し大げさに聞こえる。
でも、現場の感覚で言えば、もっと地味なものだと思う。
相手より多いから選ばれる
相手より安いから選ばれる
相手より早いから選ばれる
そこだけで勝とうとしないこと。
この人は、うちの事情を分かってくれている。
この提案なら、社内で説明しやすい。
この人なら、導入後に困ったときも一緒に考えてくれそうだ。
この文章は、ただ情報を並べているのではなく、少し考える入口をくれる。
そういう理由で選ばれること。
相手より多くするほど、相手と同じ土俵に深く入っていく。
だからこそ、どこかで土俵を変える必要がある。
10本に15本で勝負する前に
自分も、気を抜くと15本で勝負しようとする。
比較表で負けたくない
提案書を厚くしたくなる
機能を足したくなる
相手より多く返せば、安心できる気がする
でも、本当はその前に考えた方がいい。
この顧客は、何に困っているのか
どこで説明に詰まりそうなのか
導入後、誰が最初に困るのか
増やすより、減らした方が伝わるものはないか
本数ではなく、受け取り方を変えられないか
10本のバラに15本で勝負する人は、たぶん負けている。
それは、努力が足りないからではない。
努力の向きが、顧客ではなく競合に向いているからだ。
仕事でも、発信でも、副業でも。
相手より多く返す前に、相手が本当に受け取りたいものは何かを考える。
15本のバラは、努力の証拠ではある。
でも、理解の証拠とは限らない。
あなたの仕事にもありませんか。
相手より多く返そうとしていたけれど、
本当は、別の理由で選ばれるべきだったこと。
機能を増やすこと
資料を厚くすること
値段を下げること
サービスを足すこと
その前に、相手が何を判断したくて、何に不安を感じているのか。
そこを見るだけで、返すものは少し変わるのかもしれない。
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