AIエージェントが「同僚」に。企業を変える自律型チームの実像
AIが人間の指示を待つ時代は終わろうとしている。AIが自ら判断し、外部ツールを駆使して業務を遂行する「AIエージェント」は、企業の効率化だけでなく組織運営そのものを再構築する可能性を秘めています。そんなAIエージェントの社会実装を先導する株式会社ジェネラティブエージェンツ代表の西見公宏さんにお話を伺いました。

【プロローグ】
佐野:昨今、ビジネスパーソンの皆さんは「AIによる組織づくり」という言葉を耳にしながらも「人間がAIに使われるのでは」「自分たちの仕事がなくなるのでは」と不安を感じています。実際にはAIが組織の一員として業務を遂行し、人間がそれをマネジメントするという新しい時代が始まっていますよね。その最前線をお聞かせください。
西見:そうですね。私は2023年末に『その仕事、AIエージェントがやっておきました――ChatGPTの次に来る自律型AI革命』(技術評論社)を出版し、AIエージェントがもたらす変化を紹介しました。ChatGPTのような対話型AIとは異なり、AIエージェントは自律的に思考し、複数のツールを連携させてタスクを完遂します。技術的な仕組みも平易に解説していますので「生産性を爆上げしたい」「新しい働き方を先取りしたい」という方にぜひ手に取っていただきたいですね。
【第1章】企業そのものを「オートパイロット化」
― 事業概要について教えてください。
株式会社ジェネラティブエージェンツは2024年に設立したベンチャーで「AIエージェントと協働する世界をつくる」をミッションに掲げています。現在(2025年11月)、AIエージェント技術を軸に生成AIアプリケーションの開発支援、導入コンサルティング、教育・研修サービスを展開しています。
LangChain公式エキスパートとしての技術力、ISO27001認証を取得した堅牢なセキュリティ体制を強みとし、エンタープライズ領域でも安心してAIエージェントを導入できる環境を整えています。最近では、AIエージェント開発者に向けて養成講座をスタートしました。企業の現場でAIエージェントを使いこなす人材を増やし、AIエージェントと人間が協働するチームづくりを支援しています。
そもそもAIエージェントとは、ユーザーからの依頼に対してAIが能動的に判断し、外部ツールやシステムを連携させながらタスクを完了させる仕組みのことです。従来のAIが人間の指示を逐次待っていたのに対し、AIエージェントは自ら思考して目標達成のために最適な手段を選び取ります。
昨今では複数のAIが分業・協調して動く「マルチエージェント」設計が進んでいます。私たちはこの発想を企業組織に実装し、AIエージェントを前提とした組織システムの開発を目指しています。

― 一般的に、AIエージェントを導入すると何が解決されますか。
AIエージェントは請求書処理や在庫管理、データ入力といった定型業務の自動化だけでなく、情報収集や分析、発想などの知的労働にも活用できます。これまで人間が多くの工数をかけていた業務をAIが担うことで、社員はより創造的で戦略的な仕事に専念できるようになります。
キーワードは「Autopilot Your Company」。テスラの自動車がオートパイロットで走るように、企業全体をAI自身が主体的に運営する構想です。DXが進んでも、多くの現場では帳票を人の手で書き写したり機械処理を人間が途中で再確認したりしています。そうした「人間がやる前提」を見直し、AIが先に動く組織へと変えていく。それがジェネラティブエージェンツの描く未来です。
― 「AIの登場で人間が要らなくなる」と懸念する声もあります。
確かに「AIに仕事を奪われるのでは」と不安を感じる方は多いでしょう。それは、AIを「人間の労働を代替するツール」としてしか見ていないため。AIの本質的なインパクトは、人間同士の協調のシステムを変えることにあります。
例えば、これまで異なる部署や関係者が同じ状況を理解するためには共通のフォーマットを整備し、そこに合わせて書類を作成する必要がありました。しかし、それには「フォーマットを作るコスト」と「フォーマットに従うコスト」という二重の負担がかかってしまう。
AIを活用すれば、写真や音声といった一次情報から各自が必要な情報を直接抽出できるようになります。つまり、情報共有のルールを事前に決めなくても協調が成立する。これがAIがもたらす最大の変化です。人間が不要になるわけではなく、さらに創造的で判断力を要する役割へ移行するということです。
― 創業の経緯をお聞かせください。
創業メンバーは私、COOの吉田、CTOの大嶋の3名です。吉田と大嶋は『ChatGPT / LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門』(技術評論社)を共著しており、同時期に私もAIエージェントを主題にした書籍を出版したことを機に繋がりました。
当初からAIエージェントの技術に可能性を感じていましたが、明確な事業計画はなく「AIエージェントをやる」としか決めていなかった。社会的課題から逆算するマーケット・インの発想ではなく、技術ドリブンで始まりました。
3人とも小規模な会社を経営していましたが「ベーシックなことをやるだけでは時代に取り残される」と。成長スピードの速いAI領域に自分たちの経験を総動員して挑戦しようと決めました。試行錯誤の末、現在はAIエージェント導入を検討する企業を支援し、開発から運用、教育までを一気通貫で支える事業を展開しています。
【第2章】業務の壁を超えるAIエージェントの活躍
― 西見さんはどちらの業界にフォーカスしていらっしゃいますか。
現時点でAIエージェントに対する理解が進んでいるのは、システムインテグレーターなどソフトウェア開発企業です。社内ではすでにOpenAIのCodexやAnthropicのClaude Codeといったコーディングエージェントを使って業務効率化を進めているケースが多いですね。そこへAIエージェントを導入してより幅広い業務へ拡張したいという声が上がっています。
一方、大手自動車メーカーや製造業、自治体、教育機関でもAIエージェントのPoC(概念実証)が行われています。経営層だけでなく現場の方からも「AIエージェントをいかに活用するか」と弊社にご相談いただく機会が増えています。

― 企業のお客様はAIエージェントによってどのような課題を解決したいとお考えですか。
資料作成や情報整理などの工数を削減し、付加価値の高い業務にリソースを割きたいというご要望が多いです。具体的には、ベテラン社員の分析力を誰でも再現できるようにしたい、部門全体の業務パフォーマンスを底上げしたい、と。
― 導入によって現場ではどのような変化が起きるでしょうか。
資料作成やリサーチの時間が半減するだけでなく、AIエージェントが単なる効率化ツールではなく「判断の支え」にもなるとおっしゃっていただいています。「自分の考えにAIも賛同している」と自信が持てるようになったり「AIがレビューしたなら大丈夫だね」と職場の雰囲気が良くなったりする。これまで「文章がおかしい」「これでは動かない」といった指摘中心だったフィードバックが本質的な内容チェックに変わり、チーム全体の心理的安全性が上がるんです。現場の変化は業績にも及んでいきます。
― カスタマイズや運用の方法について教えてください。
現時点では完全自動更新まで至っておらず、人間が業務マニュアルをベースにAIと連携しています。最初はデフォルトの状態から始め、違和感があれば途中で設定を修正する。既存の業務マニュアルがある場合は、それを言語化してAIに共有してエージェントを動かします。この柔軟な進め方がポイントで「最初から完璧でなくていい」という姿勢が成功の鍵になります。
― 初期導入の際、どのような方がフロントを担うとスムーズでしょうか。
IT部門ではなく、実際にその業務を担ってきた現場の方が適しています。「こういう時はこう判断する」という経験値や感覚を持つ方がAIに言語化して伝える。AIエージェントは人間に似た「ばらつき」を持つため、几帳面すぎる方よりも感覚的に最適解を探せる方のほうが向いているかもしれません(笑)。今後は技術と業務を橋渡しする役割として各社に必要なポジションになっていくでしょう。
― 他にも、どのような業務で活用が進んでいますか。
リサーチ業務での活用が増えています。社内外の資料やデータを収集・整理し、要点をまとめる作業をAIが担う。以前はPowerPointや過去資料を一つひとつ開き、情報を探すのに数時間かかっていましたが、AIエージェントがタスクリストを作成して必要な情報を探し出してくれるようになりました。自分が指示を出さなくても業務が先に進む。そんな環境が現場で実現しつつあります。
この仕組みを支えるのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という技術です。AIが回答を生成する前に外部のデータベースやドキュメントを検索し、その情報をもとに回答を作成するため、属人化していたナレッジを自動で共有資産に変えることができます。AIエージェントの運用が進むにつれて「AgentOps(エージェント運用管理)」と呼ばれる新しい分野も生まれ始めています。
【第3章】運動していると「上」を目指したくなる
― 西見さんが筋トレを始めたきっかけは何でしょうか。
前職で数々のスタートアップの新規事業・新規サービスの立ち上げを担当していた頃、パーソナルトレーナーをマッチングするサービスを創りたいというお客様がいらっしゃったんです。当時の私は運動するタイプではなかったので「パーソナルトレーニングは何がいいのか」「どんなユーザーがどんなペインを持っているのか」と質問。「運動すると業務パフォーマンスが向上する」「脳も活性化する」と聞いて「自分もやってみよう、ものは試しだ」と始めました。
― 筋トレの頻度やメニューをお聞かせいただけますか。
週4〜5回、1日あたりトータル1時間半。上半身、上半身、下半身と日によって分けてトレーニングしていますね。
― 注力している部位はありますか。
特にベンチプレスを伸ばしたくて頻度を増やしています。もともと脚は強いので大腿四頭筋を割りたいですね(笑)。もっと鍛えたいのは背中。脊柱起立筋が強くてデッドリフトは上がりますが、広背筋周りが弱くてチンニングに課題を感じています。プラスアルファで新しいメニューを始めたりパーソナルトレーナーにフォームを見てもらったりしています。

― 筋トレの効果を感じていらっしゃいますか。
はい。実はこの1年間は執筆で忙しくて筋トレを休んでいたんです。ストレス解消にアルコールを飲みたいだけ飲んでいました。そうすると、やっぱり内臓が悪くなる。内臓が悪くなると業務パフォーマンスは落ちるし、感情のコントロールが難しくなる。寝ても疲れがとれないから体がずっとダルい。
しかも、習慣的に筋トレや運動をしていると上を目指したくなるじゃないですか。もっと重量を上げたいならこういうトレーニングをして、こういう食生活をする。生活にルールを設けると副次効果的に体調が安定していく。体調が安定すると精神も安定してきます。
― 「今日はやる気がない⋯」という時はありますか。
ありますよ。でも、ジムに行きます。何となく準備し始めて家を出る。好き・嫌いに関係なく「やるもの」という認識を持っています。
― お好きなプロテインはありますか。
VALXのカフェオレ味が一番好きです。
― VALXプロテイン、おいしいですよね。お食事や睡眠でも気をつけていらっしゃることはありますか。
お客様との会食もありますが、基本的に低脂質な食事を心がけています。炭水化物は朝昼晩200gずつ、脂質は1日40〜50g、たんぱく質は120〜130g摂るようにしています。睡眠ではどんなに忙しくても家族と同じ時間に寝るようにしています。
【第4章】汎用エージェントが拓く、次の社会へ
― 昨今では生成AIの進化が加速しています。貴社の社会的役割をどのようにお考えですか。
AIエージェントを誰もが使えるようにすることが弊社の最重要ミッションです。OpenAIやAnthropicが世界レベルで同じ方向を目指す中で、まず日本の現場に根ざした社会実装にこだわっています。AIを遠い技術ではなく「隣で働く同僚」として根付かせたいと考えています。

― 現実的な戦略に落とすとしたらどのようなことに着手なさいますか。
小規模な事業体からオートパイロット化を実現していきます。ジェネラティブエージェンツ自身もその実験対象の一つ。「オートパイロット」と言うと「人間が関与しない仕組み」を連想されやすいですが、私たちが目指すのはむしろその逆です。企業活動全体をシステムとして可視化して構造的に理解できるようにすることで経営の視座を高め、より効率的に改善サイクルを回せるようになります。
もちろん、日々の煩雑な作業から解放されるという実務的なメリットもある。私たち自身が「自社をオートパイロット化する」実験台となり、その成果をお客様に還元していきます。
― 中小企業では人材不足に悩む方が多いですよね。AIエージェントの導入に対するご反応はいかがでしょうか。
はい。中小企業の皆さんにお話しさせていただく機会も積極的に作っています。さまざまな事情でAIエージェントの導入に踏み切れない、抵抗がある、などはありますね。私たちのプロダクトは事業の根幹に入っていくアプローチになるため、怖がられるんです。「このお悩みであればこのような結果が出ます」といったユースケースを増やしていくことで皆さんの心理的ハードルを下げていきます。
― 貴社は2024年に設立されたばかりですが、これから注力したいプロダクトは何でしょうか。
現在のコア製品は、AIエージェントが業務を細分化して能動的にタスクをマネジメントしていく仕組みです。例えば、企業が情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やプライバシーマークなどの認証を維持する際、各担当者はライセンスの棚卸しや活動記録の更新といった地道な事務作業を定期的に行う必要があります。私たちのAIエージェントは、こうしたプロセスを自動で管理・記録し、必要な証跡も生成します。これまで担当者が手作業で整理していた業務をAIが代行することで、運用負荷を大幅に軽減できるようになります。
今後はこのような実務ユースケースをパッケージ化し、多用途に導入できる形へと展開します。特定の業務をAI化するだけでなく、どの業界・業種にも適用できる「汎用エージェント」として進化させること。それが弊社の次のフェーズです。

― 貴社の採用活動についてもお伺いします。
AIエージェントの社会実装を一緒に担う仲間を募集しています。お客様の現場に入ってAIの仕組みと業務を橋渡しするFDE(Forward Deployed Engineer)やカスタマーサクセス、プラットフォームエンジニアが中心です。
AI業界ではめずらしいかもしれませんが、弊社では「Ruby」という言語や、Webアプリケーションを効率的に開発するために「Ruby on Rails」というフレームワークを使っています。また、ユーザー教育を担う講師も募集中です。どのセクションでも人と向き合うことが好きで、新しい知識をインプットしながら仕事に活かしたい方にぜひ来ていただきたいですね。
― 最後に、読者の皆さんはAIとどのように付き合うといいでしょうか。
まずは実際に使ってみることです。コーディングエージェントのような専門型AIでも、文章作成や情報整理など汎用的な業務に応用できます。まずはご自分の業務がAIに代行してもらえるのかを試してみる。また、AIを便利なツールと見るのではなく、チームの一員として一緒に試行錯誤する意識を持つこと。そうすることでAIに仕事を任せる感覚が自然に身につきます。これが次世代の働き方の第一歩ではないでしょうか。
― 西見さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。
(企画・取材・執筆:佐野桃木 写真提供:ジェネラティブエージェンツ 最高顧問:Z)
● プロフィール「株式会社ジェネラティブエージェンツ代表取締役CEO / Founder 西見公宏さん」
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