💁名前、お国事情 1153
私には「名前」で思い浮かぶエピソードがふたつある。
ひとつは、私の名前。
読み間違えられることは、まずない。
小学生でも読める。
ところが「どんな漢字ですか?」と訊かれたとき、いくら説明してもほぼ書き間違えられてしまう。
母ですら書き間違えたことがある。
ふたつめは由美(仮名、別居長女)の名前。
名付け候補を一つも出さないH(元夫)に代わり、出産前にいくつもの名前を考えてリストを作った。
なのになのに、ああ、それなのに。
産後の入院中、Hはリストにない名前で出生届を提出してしまった‼︎
勿論、由美には内緒の話。
2025.6.1(日)
朝日新聞 GLOBE第328号 田島知樹•中川竜児•小暮哲夫•西尾能人
名前は問いかける
名前は問いかける。
人生の節目で私たちを悩ませる。
家族とは、夫婦とは、アイデンティティーとは?
国会では夫婦別姓法案が議論されることになった。
戸籍法改正に伴って、キラキラネームの行方も気になる。
改めて、名前を考えてみた。
紙面を読み、名前•姓に対する思い入れ•伝統•考え方にこれほどの違いがあるのかと興味深かった。
自身の覚え書きのために書き出しておく。
【リストから選ぶハンガリー】
ハンガリーでは伝統的な名前が好まれ、公的な命名リスト(サイトには現在4,700の名前が掲載)から選んで名付ける。
リストにない名前の申請が認められるのは1〜2割。
基準は
①44文字のアルファベットを持つハンガリー語のスペルと読みであること
②名前として広く使われている実績があること
③性別が判ること(ユニセックスネームは×)などなど
【夫婦別姓歴が古いハンガリー】
女性は結婚すると、それまでの姓名を失い「大谷翔平の夫人(一例です)」が正式名になる。
1953年に選択的夫婦別姓が導入されても、結婚している•誰かの配偶者であるというアイデンティティーが重要だった。
2000年以後の法改正により、姓の選択肢は複合姓など7パターンに広がったが、今でも5人に1人は「〜の夫人」を名乗っている。
伝統も個人も大事にし、自身の価値観と選択も大切にする。
【姓はなく、敬称が名前に含まれるミャンマー(ビルマ民族)】
伝統的に、生まれた曜日を重視し、曜日に関する文字を入れ、好ましい意味を持つ音節を一つ以上使って名前をつくる。
名前の前に「自分をこう呼んでください」という意味で敬称をつけるが、年齢や地位と分かちがたく、アイデンティティーの一部。
ビルマ民族は、父方•母方の血筋を問わない双系制のため、家や一族を区別する姓を持たない。
集団の中の自分ではなく、父と私•母と私•きょうだいと私のように二者間の関係を重視した対人関係を結ぶ。
【本名よりニックネームに愛着があるタイ】
タイ人初の王朝以来、庶民は長らく短い本名で呼び合っていた。
1913年、姓名法が施行され姓•名を持つことを義務づけられた。
姓は個人を識別するため重ならないことが推奨され、長くなった。
ファーストネームも、生まれた曜日•時間•縁起の良い名前と長くなり、ふだん身内の間では呼びにくいため、昔の短い本名がニックネームという形で復活。
公的な書類では本名、ビジネスメールではファーストネーム、それ以外はニックネームを名乗る。
姓の出番はあまりない。
【簡単に姓名を変更できる英国】
「ベーコン•ダブル•チーズバーガー」「非常口」「セリーヌ•ディオン」
これらはいずれも、改名した名前‼︎
民間のネットサービスを使えば、短時間で手続きができてしまう。
出生証明書の名前が本名だが、複数の名前を使い分ける人もおり、本名かどうかは気にされない。
自己決定権が重視され、改名に批判はない。
トランスジェンダーやノンバイナリーの人達の改名が生きやすさにつながるケースもある。
【差別を恐れる原住民族、台湾】
台湾には、総人口の2.6%、16の原住民族がおり、名前文化は多様。
戦前は日本、戦後は国民党政権から日本風•漢族風の名前を強要。
民主化後には伝統名の漢字記載が、2001年にはアルファベット表記の伝統名の併記が可能になったが、あくまで漢名が主体。
2024年、戸籍に伝統名をアルファベットだけで表記できるようになったが、差別を恐れ漢名を使う原住民族が多い。
【時代によって社会は変わる、日本】
江戸時代、名前は地位や職を表す通称として機能。
職や地位が変われば名前は変わって当然。
明治に入り、国家の発展(徴兵•税金の徴収など)のため名前管理の必要性が高まる。
1872年改名が禁止され、「戸籍に登録した名前は唯一不変」「私の大切な名前」という意識が生まれる。
戦後、個人の尊重がうたわれ、名づけに親個人の教養や趣味が反映されるようになり、アイデンティティーへとつながる。
名前への愛着は否定すべきではないが、その価値観は普遍ではなく、過去には今とは異なる価値観があった。
【中川翔子さんインタビュー】
出生届時に「薔子」が受け付けられず、やむなく平仮名で提出。
24歳パスポート更新時に「しようこ」さんと呼ばれ、「しょうこ」ではなく「しようこ」と届けられていたことが発覚。
運転免許証も「しようこ」。
時には「し」+「よ」で「は」と読まれ、「はうこ」にされたこともある。
結婚後、家裁に申し立て、芸能界で20年以上名乗ってきた「翔子」に改名。
今は病院で名前を書くのも嬉しい。
【日本人夫と同姓にしたかったクロアチア人妻】
8年前、クロアチア出身女性と結婚。
ヨーロッパでは夫婦別姓が当たり前。
妻は研究者として論文も書いており自分の姓にこだわりがあるはずだと、別姓を選択。
一方の妻。
見た目で外国人扱いされる日本では、日本人夫と同じ姓の方が生きやすく、子どもと同じ姓を名乗りたかった。
そもそもクロアチアでは夫婦同姓も多い。
夫は、自分の視野の狭さと思い込みが情けなく、固定観念を取り払いたいと思っている。
【おわりに】
名前への思い入れは実に様々。
名前こそは自分自身そのものだという人がいらっしゃる。
姓は識別記号、名前を書き誤られても「また間違えられちゃった」とヘラヘラしてる私のような者もいる。
特に印象に残ったのは、ニックネームで生きていけるタイ、容易に改名できる英国、クロアチア人妻の同姓希望に気づかず別姓を選択した日本人夫。
世界では私が知らなかった慣習や制度が、実際に運用されたり変更されたりしている。
決して「名前なんかどうでもいい」とは思わない。
自分の名前が嫌い、忌まわしい、そう思ってる人も中にはいるかもしれない。
現実に多様な価値観の名前で生活している人たちがいるのに、「こうでなくてはいけない」という他者からの押し付けや縛り付けに、一体どんな意味があるのだろうと考える機会になった。
2025.6.1
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