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〈半分過ぎたかき氷〉#風まかせ文芸部

(800字)

半分過ぎて
かき氷のこおりが鳴った
スプーンを伸ばした手に
冷たさの残る舌が驚き
美咲は会話を止めた

「慎二くんの、好きな子知ってるよ」
薮坂に降り出した会話は止まらない。

慎二くんのかき氷はまだ三角の頂点を保っている。
手が止まりそうに、その血管に目がいくが
彼は、宇治金時のミルクを注ぎながら目を丸くした。

「俺が君を誘った意味、考えたことある?」
私ね、ずっと前から見てたの。

瑠璃ちゃんの事追いかけている慎二くんのこと

「彼の握っているスプーンが一瞬上下に揺れた」

半分過ぎた私のかき氷は、甘い桃の果実が乗っていた。
順番に食べていった
山の頂点が過ぎていき、同時に桃の大きな果実も
ごろりと山から崩れてゆく
そっと拾い上げて、また冷たいかき氷と共に口に入れた。

「いまの、なんでもないから」
「えっ」
「気にしないでね」

「かき氷どんな味?」
「桃が甘くってシロップが染みていて美味しい」
「慎二くんの宇治金時は、和風だね」

「昔から、頼む時は抹茶一択って決めてる。」
「そうなんだ」
「桃も美味うまそう」

「駄目なの」
「なにが?」

「半分熟れた桃はね、食べちゃ駄目なんだよ」
「そんなジンクスあったっけか」
「男の子はね、食べ過ぎ注意だね」

抹茶の宇治金時の小豆が、ふいに下へと転がっていく。

溶けかけた氷は、半分過ぎたら早く口に含まないと
とんでもなくなっちゃう。

また二人はこのお寺から見える景色を眺めながら
四角い窓の空に広がる燕の羽を見て、
無言で氷を口にした。

「慎二くん、いつまでも宇治金時がすきそう」
「ふふっ」

「美咲ちゃん?」
俺がこの夏まで堪えた気持ちは、
誰も知る由もない。いまはただこの景色を眺めながら
御盆を並べて、くっついていたいから。

最後の桃の一口を、スプーンで掬っている美咲。
「また夏が終わったら、新学期がはじまるね」
遠くの空で、飛行機雲が白く伸びていった。



おわり


お寺の境内で向かい合う、美咲と慎二。
桃と抹茶、それぞれのかき氷が溶けていく中で交わされる、核心を避けるような会話。夏の終わり、飛行機雲が伸びる空の下で、二人の想いが静かに交錯する短編小説です。#note



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こちらの作品は、i様主催の#風まかせ文芸部さんへ
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