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〈再会の彼女〉1話


#1

溜め息をついた窓際の彼女は
何を考えているのか、分からない

今日1日が忙しかったからなのか
嫌な取引先との連絡が多かったからなのか
女性の悩みなど人それぞれなのだろうか。

僕が彼女を気にかけている理由はひとつあって
初恋の相手に似ている
ただそれだけのことだった。営業所として構えているこちらの部署に転勤してきた日、はじめまして。総務の澤野あやめです、そのお辞儀する姿と声のトーンにびっくりしたのだ。小学生5年生ですきになった、あやかに声も姿もそっくりだったのだ。クラスメイトとして特別仲が良かった訳ではない。先生に怒られそうになった時そっと教科書を貸してくれたこと、移動教室で教室を間違えそうになったとき教えてくれたこと。
彼女はほんの少しだけ僕にとって特別な存在だった。
椅子を差し出してくれた時、ほんの少しだけ男としての意識が芽生えたのも、彼女がいたからだった。

初恋の彼女、あやかは今頃どうしているだろうか。
ふと彼女の元へ赴任する一週間前に、そう思ったのだった。きっと結婚をして幸せに暮らしているのだろう。
流行りのfacebookにもInstagramにも彼女の存在を伺ってみたけれど、出てこない。

ふと親友の眞琴なら彼女のつてが分かるかもしれないと思った。眞琴は同じ小学校からの腐れ縁で繋がっている。ふと手元にある携帯をとって「近々会えないか?」と連絡をした。───

今週末の引き継ぎが終われば、一旦この製造部門の営業所を離れ、土日を過ごせば新しい生活が待っている。
小さな期待と大きな不安が連鎖する。
金曜日、無事に挨拶を終えて帰宅した。
シャルドネを一杯飲んだ。山梨県産のぶどうが使われた味わい深いシャンパンで独り身のお疲れ様会をする。


まさかこの歳になって、
地元の営業部署に行くことになるとは───
山の麓にある実家とは少し距離のある
都会を、選びスーパーにも病院も勝手が分かっているこの街を選んだことに何一つ後悔はない。

明日の朝は早めに出勤しよう。───
ひとまず、挨拶を交わしたあとの仕事の工程をひとり頭の中で組んでみる。営業所長への挨拶のこと、
今までの支部とは違って伝手がない自分にとって
どのレベルまで仕事をしたらいいのか、お手並み拝見だ。と長年のサラリーマンを務めたもう一人の自分が唸る。

出勤の日の朝───
ネクタイをキュッと締め上げて力んだ肩を落とす。
転勤なんて今更緊張することでもない。
そう言い聞かせながらも、この土地に帰ってきたことを不思議に思う。

つづく、
(1,023字)
⇨第2話へいく


転勤先で出会った女性は、忘れられない初恋の面影を持つ人だった。多忙な日々を送る彼女に、過去の淡い記憶が蘇る。あの頃、少しだけ優しくしてくれた「あやか」にそっくりな彼女。週末の引継ぎを終え、新たな生活への期待と不安が入り混じる。故郷に近い場所での再出発。旧友に連絡を取り、初恋の彼女の消息を探る。都会を選んだことに後悔はない。新しい職場での挑戦、そして過去の記憶との再会。


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