【短編小説】 #せりふ三題噺(火山、シマウマ、風鈴)
はらとけいさん、企画に参加させていただきます☺️。
■セリフ「調べないほうがいいよ」「喉乾いてたんだよね」(両方使わせていただきました)
■三題
・火山
・シマウマ
・風鈴
***
チリン……
お店の向かいから、風鈴の音が聞こえる。
結衣は、どうして良いのかわからないまま……氷の入った水を、そっとテーブルに置いた。
「どうぞ……」
目の前には、茶髪の男がいる。
変なサングラスをして、いかにもチャラそうだ。
「ありがと。喉乾いてたんだよね」
男はニヤリと口の端を上げ、意味ありげに笑った。
お店の固定電話が鳴ったのは、つい先程のことだ。
「はい……え、賢也!?」
電話に出た康彦は、あきらかに驚いた声を出した。
そして「少しだけ店番頼む!」と言うなり、慌てた様子でお店を飛び出して行ったのだ。
いつもと違う様子に、何かあったのだろうとは思ったけど……今となっては、気安く受け取ってしまったことを、後悔するしかない。
そんな矢先に、やってきたこの男。
「あ、ボク客じゃないから」
そう言って、当たり前のように奥のソファー席に向かい……どかっと座って。
今も、ずっと眉間にシワを寄せつつ、スマホをいじっている。
客じゃないならなんなんだ。
得体も知れないし、何をするかわからないし……。
こんな時、いったいどうしたらいいのか……途方に暮れていた。
お水を出したついでに、つい見張っていたのだが……。
背中に火山の刺繍の入った、アロハシャツ。
それに合わせたTシャツは、ボーダーというよりシマウマストライプ。
そして変なサングラス……。
センスを疑う前に、とりあえず怪しい人認定だ。
ーーヤスさん早く帰ってきて……。
思いながら、ふと目をやると……。
お店の入り口に、得体のしれない麻袋が置いてある。
男が来る前にはなかったものだ。
念のため、麻袋をのぞこうと身をかがめた瞬間。
「調べないほうがいいよ」
背後に、気配などなかったはずなのに。
耳元で、笑いを含んだ声がした。
「いやぁっ、変態っ!」
半ばパニックになりながら、叫んだ時だ。
「結衣、どうしたっ?」
康彦の声が聞こえ、緊張が緩む。
「お前っ、ふざけるのもいい加減にしろよ!」
普段の穏やかな康彦からは想像もできない怒声に、思わず胸が熱くなる。
ーーヤスさん、私のために……。
そう思ったのだが。
「その格好でうろついたら職質されるって覚えとけっ。バカ賢也!迎えに行ったのに、俺をおとりにしやがって……」
罵声は、続く。
「普通に『コーヒー豆が入ってます』って言えばいいだろ?現地の服着て、怪しい袋抱えて逃げんじゃねぇっ!」
よく見ると、康彦は汗だくだし、息も絶え絶えだ。
ーー賢也……電話の相手?
どんな間柄なのだろう。
見たことがないような顔で怒り散らかす康彦を、賢也と呼ばれた男はニヤニヤ笑いつつ、どこか懐かしそうに見守っている。
とりあえず……一件落着なのだろうか。
滅多に見られないだろう康彦の一面を見て、こんな時だというのに一人ドキドキしてしまう結衣だった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
この二人の続編?で書いてみました😅
NOBさん、ありがとうございます😊
山中さん、ありがとうございます😊
はらとけいさん、ありがとうございます😊
