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【メンタルヘルス|ライフスタイル】<第2回>なぜ現代社会は、インポスター症候群を生みやすいのか―SNS・比較・スピード社会と「自分の感覚」を失う時代

皆様、こんにちは
公認心理師の小高千枝です。

連載をさせていただいております『インポスター症候群』に関する記事。
第1回では、インポスター症候群が「個人の弱さ」や「能力不足」ではなく、環境や役割の変化の中で、誰にでも起こりうる心理状態であることをお伝えさせていただきました。

<第1回>インポスター症候群とは何か―「私なんて…」が生まれる本当の理由
https://note.com/chie_odaka0211/n/n689621f38599

今回はもう一歩踏み込み、なぜ“今の時代”に、ここまで多くの人がこの感覚を抱えやすくなっているのか
その背景を、現代社会の構造と結びつけて考えていきたいと思います。



①比較が「避けられない前提」になった社会

現代社会において、人は「比べよう」と思っていなくても、
常に比較の中に置かれる構造で生きています。

SNSを開けば、

・成果を出している誰か
・理想的な家庭やパートナー
・洗練されたキャリア
・迷いのなさそうな言葉

これらが、途切れることなく目にしたくなくても目に入ってくる時代です。

重要なのは、それらが「現実そのもの」ということだけではなく、切り取られ、編集され、最適化された断片であるという点を心にとどめていただきたいということ。

それでも私たちの心は、その断片を無意識の基準として取り込み、
「自分はまだ足りない」「もっとできていないといけない」
と、無意識の中で自己評価を下げていきます。

比較が一時的なものではなく、生活の前提条件になってしまったこと。
これが、インポスター症候群を生みやすくしている、現代社会における要因のひとつでもあります。


②「スピード社会」が奪っていく“考える余白”

もう一つの大きな要因は、社会全体が「速さ」を過剰に評価する構造にあることです。

・即断即決
・効率
・成果の早期化
・迷わないこと

タイパ・コスパが言われているように、これらは確かにビジネス上では重要な場面もあります。
しかし、人の心や価値観は、本来そんなスピードでは育ちません。

・迷いながら考える
・立ち止まり、揺れ動く
・時間をかけて納得する

このプロセスこそが、「自分なりの判断軸」を育てます。

それにもかかわらず、
「迷っている=能力が低い」「考えている=遅れている」

そんな空気の中では、考えている途中の自分を信じること、信じてあげることが難しくなります。

結果として、「自分の感覚より、外の答え」を優先する癖がついてしまうのです。


③ChatGPT時代に起きている“変化”

ここ数年で、私たちはさらに大きな転換点を迎えました。
ChatGPTをはじめとする生成AIの登場です。

AIは、非常に優秀なツールです。情報整理、発想補助、言語化の支援など、
使い方次第では大きな力になります。

ただし、ここに落とし穴があります。
AIが示すのは、

・多数派の知見
・一般的に「無難」な答え
・平均化された正解

であって、「あなたがどう生きたいか」「何を大切にしたいか」を決めるものではありません。

しかし、自分で考える前にAIに聞く、判断を委ねてしまう、自分の感覚より正しく感じてしまう。。。
こうした使い方が続くと、人は少しずつ 「自分で決める力」への信頼を失っていきます

すると、

「私は本当にこれでいいのだろうか」
「この選択は正しいのだろうか」

という不安が、評価のたびに顔を出すようになります。

これは、現代版インポスター症候群の、新しい形なのではないかと感じています。


④評価の軸が「外側」に置かれすぎている

インポスター症候群が深まるとき、多くの人に共通しているのは、
評価の基準が、自分の外側に置かれているという状態です。

・数字
・肩書き
・反応
・承認

これらは確かに、一つの指標です。しかし「私は何を大切にしてきたのか」「どんな選択を、納得して重ねてきたのか」という内的な評価が育っていないままでは、どれだけ成果を積み上げても、心は追いつきません。

評価されている“はず”なのに、自分では実感できない。

それが、「私は本当はふさわしくないのではないか」という感覚につながっていきます。


⑤ 現代社会を否定せず、共存する。そして飲み込まれない

ここで、ひとつ強調してお伝えしておきたいことがあります。

SNSも、AIも、スピード社会も、それ自体が「悪いもの」ではありません。
私たちは、これらを排除することも、過去に戻ることもできませんし、現実的でもありません。

大切なのは、否定することではなく、距離感を持って共存していくことです。

問題になるのは、それらの情報や評価に、自分の価値判断そのものを委ねてしまうことです。
たとえば、次のような問いです。

  • 情報を参考にしながらも、最後は自分で決めているか(自己決定)

  • 「早く正解に辿り着くこと」よりも、「自分が納得できること」を選べているか

  • 他人からの評価と、自分自身の価値を、切り分けて考えられているか

これらは、無理に答えを出すための問いではありません。ただ、問いとして持ち続けること自体に意味があります。

自分の感覚に立ち戻る回路を持てるようになると、インポスター症候群は
「振り払うべき敵」ではなく、自分の状態を教えてくれるサインとして、扱えるようになっていきます。

この問いを持つだけで、インポスター症候群との関係性は、少しずつ変わり始めるのです。
自分の価値を、外の世界に預けっぱなしにしないこと。
それが、この時代を生きるための小さなセルフケアなのかもしれません。


<第3回>予告

ハイキャリアだけじゃない―家庭・ケア・裏方を担ってきた人に起きるインポスター症候群

次回は、「目に見えるわかりやすい成果を出していない人であっても、インポスター症候群を抱えやすい」というテーマを扱います。

・家庭を優先してきた人
・育児や介護を担ってきた人
・裏方として支えてきた人

こうした役割は、
✔ 数値化されにくい
✔ 評価されにくい
✔ 「できて当たり前」と扱われやすい

その結果、「私は何も成し遂げていないのではないか」「価値がないのではないか」という感覚を抱きやすくなります。

次回は、“見えない貢献”がなぜ自己否定につながりやすいのか
そして、どうすれば自分の価値を取り戻せるのかを、臨床の視点から冷静に掘り下げていきます。


【HP】
小高千枝メンタルヘルスケア&マネジメントサロン

【著書】
『本当の自分を見失いかけている人に知ってほしい インポスター症候群』

韓国版『本当の自分を見失いかけている人に知ってほしい インポスター症候群』
가면을 벗어던질 용기
진짜 내 모습을 들킬까 봐 불안한 임포스터를 위한 심리학



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