FM言ノ葉「第9回きっとあなたの1400字」投稿作品への感想
本記事は、VRChat内のラジオ「FM言ノ葉」において2024年4月から6月にかけて開催された企画「第9回きっとあなたの1400字」に投稿された全小説作品への、私の一言感想です。作者名は敬称略でご容赦ください。
お題は「妖精」「飛行機」「プログラム」「月」「センス」から一つ選ぶ形式でした。全ての作品は、2024年6月13日現在、VRChatのワールド「言ノ葉堂2号店」にて読むことができます。
作品がwebで公開されている場合には、各作品への感想の後にそのリンクを載せます。私の知る限りで載せていますので、公開しているのに載っていなかったり、リンクが誤っていたりする場合には何らかの方法で私までお伝えください。確認の上修正します。
戻ってきました。今日はCozy CalmでSho Haseさんにお誕生日の挨拶をしてから、言ノ葉堂2号店で「第9回きっとあなたの1400字」の作品を読みました。皆さんありがとうございました。 pic.twitter.com/x1GYIta8wk
— ソーサツ・チエカ (@chieka_quantizd) June 12, 2024
K(Unknown)『孤月の輝き~風光明媚』、媒体のない仮想テキストという表現は面白いと思いました。私は存在しないものを存在するかのように扱うことに関心があります。いずれそれは形をなして陰と陽が釣り合うようになるものですが、VRでは無意識が露出しやすいだけに、陰の部分が形をとるのを促します。
るいざ・しゃーろっと『かぐやよ、聞いてくれ』、SLIMの経緯を竹取物語とうまく繋げていると思います。太陽と皇室を重ねるとよりよかったでしょうか? 最後の同僚の台詞が唐突ですが、この台詞を言う理由を明示的に書いてしまうのも野暮ですし、悩ましいところ。
降谷椎『月参り』、参拝に来る「彼」よりも、むしろ語り手の「私」の方が、内心で巡らせている考えと淡々とした受け答えとの対比によって人物像が立っている気がします。泉道守者だとすれば自分の考えはあまり外に出さないでしょうから、これでいいのでしょう。
ソーサツ・チエカ『Visitor』、いつものやつです。私は妖精と精霊と幽霊と神と悪魔と美少女を全て同じものとみなすので、人類の黎明期に起こったことと今メタバースで起こっていることもまた同じものです。写真はポピー横丁で撮りました。
スーア先生『ルサンチマン』、貧しい生い立ちから児童書向けイラストの才能に至る筋が通っていて、語りの技法として美しいと思います。実際には天が二物を与えることがあるにしてもです。二人の語りの順番を入れ替えれば読後の印象が変わりますし、結局は互いに相手の苦しみは分からないのでしょう。
renfree『妖精からプロテインを込めて』、ここ数回はお目にかからなかった賑やかな作風で、最後に事件の解決のようなオチをつけなかったのもいいと思います。写真が情景に深みを増し、さりとてなくても状況の分かる、作品の補完としていい表紙になっています。
安食ねる『敗者の残火』、一人称の「おれ」、各部の機構や機能を表現する比喩、主人公が何者かをすぐに一言で明かしてしまわない粋さ、既に全てが過去になってしまったことを手を変え品を変えて強調することで生まれる感傷、燃料と推進器によって機械と人とが重なり合う様、全て素晴らしいものです。
葵シュセツ『影、ふたつ』、光景としてはほとんど変化のない時間の間の出来事を、余計な描写を交えず心情の変化だけで描くのが巧みです。心情の描写が過不足ないおかげで、二人の歩く歩調と読者の読み進める間の作中での時間経過がだいたい揃っているように感じますね。
まめのすけ『いずれ月のように』、単に月が綺麗で終わるのでなく、そこに寂しさを伴うことで、異界に魅入られた子供の物語として雰囲気が一貫しているのがいいと思います。ほくろを取るのは話の本筋との繋がりが薄く見えますが、もしも芥川龍之介『鼻』が意識されているとすれば納得です。
〈以上〉
