「人を大切にする」って、きれいごとじゃなくて技術なんだと思った『社員トラブル解決大全』を読んで
『人が辞めない小さな会社の 社員トラブル解決大全』を読みました。
福留さんがnoteに連載している小説を読んで、社労士という仕事はなんて大変なのだろうと思い、この本を手に取りました。
福留さんのおお仕事小説はこちら
福留さんのnote
正直、小説を読むまで、社労士とは一体何をする人なのか、ずっと疑問に思っていました。
この本を読んでまず思ったのは、
人事担当の方々って、本当に大変なんだな
ということでした。
会社で起こるトラブルは、ただ制度やルールを知っていれば解決できるものではないことを知りました。
ハラスメント、勤怠不良、有給休暇、残業、メンタルヘルス、退職、賃金のこと。
どれも本の中では「会社で起こりがちな問題」として出てくるのですが、読んでいると、
「ああ、あるある」
「うちの会社にもありそう」
「これは実際に見たことがあるかも」
と思うことばかりでした。
そして、その一つひとつに対して、会社側も社員側も、それぞれに言い分がある。
そこがとてもリアルでした。
社員は社員で、自分の働き方や権利を大事にしたい。
会社は会社で、組織を守らないといけない。
どちらかが完全に正しくて、どちらかが完全に間違っている、という話ではない。
そこに、この本の難しさと面白さがあると思いました。
刺さったのは
白か黒か、0か100かで考えないことがとても大切
ということ
つい私たちは、何か問題が起きると、
「それは会社が悪い」
「いや、社員がわがままだ」
「ルールではこうなっている」
「普通はこうするべきだ」
と、すぐに正解を決めたくなります。
でも実際の職場では、そんなに簡単に割り切れないことばかりです。
働き方改革があり、Z世代という言葉もよく聞くようになり、自分を大切にする働き方が広がっている。
社員もスマホでいろいろな情報を調べられる時代です。
「うちの会社の制度って正しいのかな?」
「これって労働法的にどうなの?」
「他の会社ではどうしているんだろう?」
そうやって社員側も情報を持つようになってきています。
だからこそ、会社側も「昔からこうだから」「うちはこういう会社だから」だけでは通用しなくなっているのだと思います。
この本を読んでいて、特に心に残ったのは、
正論では人は動かない
ということです。
これは、耳が痛い言葉でした。
正しいことを言っているのに、なぜか相手に伝わらない。
ルールを説明しているのに、なぜか納得してもらえない。
こちらとしては筋を通しているつもりなのに、相手の感情がどんどんこじれていく。
そういうことは、職場だけではなく、日常生活でもよくある気がします。
大事なのは、正しさで相手を押し切ることではなく、
相手がどうすれば納得できるのかを聞くこと
なのだと思いました。
この「聞く」ということが、簡単そうでとても難しい。
相手の言い分を全部受け入れるという意味ではない。
でも、最初から否定したり、決めつけたりせずに、まず聞く。
何に困っているのか。
何が不満なのか。
どうなれば納得できるのか。
そこを丁寧に確認するだけで、トラブルの見え方はずいぶん変わるのだろうと思いました。
それから、この本を読んで初めて、
面談にもお作法がある
ということが驚きでした。
面談というと、ただ話を聞く場のようにとらえていました。
でも実際には、聞き方、伝え方、記録の残し方、場所の選び方、誰が同席するかなど、いろいろな配慮が必要です。
その一つひとつが、相手を追い詰めないためであり、会社を守るためでもあり、結果的に人を大切にすることにつながっている。
私はそこに、著者の器の大きさと覚悟、プロ意識を感じました。
トラブル対応というと、もっと冷たいものなのだろうと想像していました。
ルールを確認して、証拠を集めて、会社に不利にならないように処理する。
そんなイメージがありました。
でもこの本に書かれているのは、そういう機械的な対応ではありません。
もちろん法律や制度は大事。
でも、それ以上に「人」がいる。
感情があり、生活があり、プライドがあり、不安がある。
そこを無視しないことが、トラブルを大きくしないために必要なのだと思いました。
福留さんの小説を読んで、社労士という仕事の大変さを知り、この仕事は、ただ法律を教える仕事ではないのだと感じました。
会社と人の間に立って、こじれそうな問題をほどいていく仕事。
正論だけでは動かない人の気持ちも見ながら、現実的な落としどころを探していく仕事。
それはとても大変で、だからこそ、とても大切な仕事なのだと思いました。
この本は、小さな会社の経営者や管理職の人達にぜひ読んでもらいたいです。
小さな会社では、人事部がなかったり、社長や管理職がそのまま社員対応をしていたりすることも多いと思います。
だからこそ、ちょっとした言い方や対応の違いで、問題が大きくなってしまうこともあるはずです。
また、大きめの会社でも、部下を持つ管理職の人には読んでほしいと思いました。
現場で最初に社員の変化に気づくのは、管理職の人だと思います。
勤怠が乱れている。
表情が暗い。
不満をためていそう。
周りとトラブルになっている。
そういうときに、どう声をかけるか。
どう話を聞くか。
どこまで自分で対応し、どこから人事や専門家につなぐか。
その判断のヒントが、この本にはたくさんあります。
読み終わって、改めて思いました。
人を大切にするって、大事。
でもそれは、ただ優しくすることではない。
何でも許すことでもない。
相手の言い分を全部のむことでもない。
ルールを守りながら、相手の事情も聞く。
会社を守りながら、人を傷つけすぎない。
白か黒かではなく、現実の中で折り合いをつけていく。
それが本当の意味で「人を大切にする」ということなのかもしれません。
職場のトラブルは、できれば関わりたくないものです。
でも、会社で人が一緒に働く以上、まったく起きないわけではありません。
だからこそ、問題が起きてから慌てるのではなく、
「こういうときはどう考えればいいのか」
「どう対応すれば、こじれにくいのか」
を知っておくことは、とても大切だと思いました。
この本は、会社の面倒事をただ解決するための本ではなく、
職場の“人の問題”を、できるだけ円満にほどいていくための本
だと思います。
経営者や管理職の人が読んだら、きっと明日からの社員との向き合い方が少し変わるのではないでしょうか。
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