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ちいきふる通信:2026/07/20号

みなさまに於かれましては、当組合の活動へのご理解、誠にありがたく存じております。ちいきふるの臼井です。

5月号から続けてまいりました連載"月給2か月分ルールが招く未来"、いよいよ最終回です。前回まで、こう申し上げてきました。

規制では、送出機関の偽装は止まらない(第1回)。

そして規制だけでは、選ばれる国にもなれない(第2回)。

ならば、受け入れる側の私たちは、何をすべきか。

今月は、この問いへの、ちいきふるの答えをお話しします。折しも今月、その答えの核心にかかわるニュースが新聞に載りました。まずはそこからです。



連載「月給2か月分ルールが招く未来」 最終回

「ちいきふるは、2027年4月までに何をするのか」

── 答えは、教育です


1. 「日本語の先生が、足りない」── 今月2日の日本経済新聞

今月2日の日本経済新聞に、こんな記事が載りました。

文部科学省が、国家資格「登録日本語教員」の試験を、現在の年1回から年複数回へ増やす方向で検討している。早ければ2027年度から──というものです。

なぜ国は急ぐのか。記事が挙げる背景は、まさに2027年4月の育成就労制度の開始です。制度が始まると、外国人材に日本語を教えられる"国家資格を持った先生"が、全国で一気に足りなくなる見込みなのです。

2. なぜ先生が足りなくなるのか ── 育成就労の「日本語要件」

理由は、育成就労制度の設計にあります。育成就労では、働き始める前までに、外国人本人について次のいずれかが求められます。

  • A1相当以上の日本語試験に合格していること

  • または、A1相当の日本語講習を100時間以上受講していること

そしてこの講習は、誰が教えてもよいわけではありません。認定日本語教育機関の課程であること──制度開始から当分の間は、一定の要件を満たす登録日本語教員による講習も認められる、という枠組みです。

これまでも何度も繰り返しておりますが、育成就労制度では、受入企業は技能修得だけでなく、日本語教育も義務化されました。

だから2027年4月に向けて、全国の受入企業と監理支援機関が、いっせいに「資格を持つ日本語の先生」を探し始めることになります。国が試験の回数を増やしてまで先生を確保しようとしているのは、この争奪戦が見えているからです。

「日本語教育まで、うちが負担しなければいけないのか」──組合員のみなさまからも、そんな不安の声をお聞きします。新しい負担であることは、否定しません。そして各方面からこの負担額が少額ではなくなる、という声も聞こえてきます。

ですが、正直に申し上げると、ちいきふるはこの点をほとんど心配していません。負担0とは言えませんが、負担額を抑えることは出来ます。理由は二つあります。

3. 理由の一つ目 ── 教育が、内側にある

組合員のみなさまはよくご存じのとおり、ちいきふるの原点は日本語学校(日本文化語学院)です。設立は1957年、日本語教育機関としては1991年から。この30年以上のノウハウの提供を受けて、ちいきふるは外国人人材への日本語教育を行ってきました。

登録日本語教員は、個人に与えられる国家資格です。そして私たちのまわりには、この資格を持つ先生がすでにいます。

「制度が始まるから、慌てて外から探す」のではなく、教育のノウハウと人が、最初から組織の内側にある──これが一つ目の理由です。

4. 理由の二つ目 ── 現地の先生たちと築いてきた協力体制

二つ目の理由は、海の向こう側にあります。こちらが本命です。

私たちは3年前から、入国前の候補者1人ひとりに対して、日本語教員によるオンラインでの日本語チェックを続けてきました。毎週、それも集団でなく1人ずつ、です。

これは、日本側だけでは決して回らない仕組みです。現地で日々の授業を行い、学習を支えているのは、提携先である送出機関の先生たち。その積み重ねの上に日本からのチェックが噛み合って、初めて機能します。

私たちが組んでいる送出機関は、単に人を送り出すことだけを考えている機関ではありません。日本語教育に本気で取り組み、口だけでなく実践し、結果を残している──そういう送出機関です。

その結果が、この数字です。

ちいきふるで、2024年以降に入国したインドネシアの人材73名(今月13日に入国した技能実習生5名を含む)は、全員がJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)に合格して来日しています。合格率100%です。

この数字に、補足を二つ。

一つ。JFT-BasicはA2レベルを判定する試験です。先ほどの育成就労の要件(A1相当)より、一段上の水準にあたります。

二つ。73名は技能実習生と特定技能外国人としての入国で、採用した時点ですでに日本語の試験に合格していた人は1人もいませんでした。送出機関との協力関係の元、全員インドネシアで合格してからの来日です。そして技能実習には、入国前の日本語要件はありません。義務のない技能実習生も含めて、全員が試験にパスしてから来日している、ということです。

第1回で「これからは、どの国かではなく、どの送出機関かで決まる」と申し上げました。手数料の中身が見えること。そして、教育を本気で担えること。この二つを備えた送出機関との信頼関係は、一朝一夕には築けません。この3年間、毎週続けてきた積み重ねこそが、私たちの「見極め」の中身です。このレベルで協力体制を組める送出機関でないと提携できません。

5. これから ── 「チェック」から「授業」へ

育成就労の開始に向けて、私たちはこの体制をもう一段引き上げる準備を進めています。

核になるのは、登録日本語教員による、日本からのオンライン授業です。試験前の駆け込みのチェックでも、テスト対策の詰め込みでもなく、「授業」です。そして目標は、要件のA1ではなく、その一段上のA2に置きます。

ここで、前回のEPA看護師制度を思い出してください。EPAは、日本語の最大の壁を来日後に置きました。働き続ける条件として来日後に日本語の国家試験を課した結果、応募者が枯れていった──それが前回見た「日本が選ばれなくなる」失敗の形でした。

私たちは、この順番を逆にします。

日本語の壁は、来日前に越えておく。

来日してから壁にぶつかるのではなく、越えてから来る。EPAの教訓に対する、私たちなりの答えです。

6. A2合格は、ゴールではありません

誤解のないように申し上げると、私たちの目的は「試験に受からせること」ではありません。

言葉の土台がある人材は、来日後の立ち上がりがまるで違います。作業の指示が通る。安全上の注意が伝わる。分からないことを「分かりません」と言える。現場で教える手間が減り、仕事を覚える速度が上がる。自立までが格段に早くなります。

そして前回、台湾とEPAの数字で見たとおり、言葉はキャリアの土台であり、キャリアの見通しこそが定着を生みます

日本語教育は、制度対応のコストではなく、御社の現場の生産性への投資である──私たちはそう考えています。

7. すでに動いています ── そして、一つだけお願い

この体制は、構想ではありません。

  • 今年の秋には、試験運用としての入国を予定しています

  • 2027年3月までは、技能実習制度での入国も予定しています

  • そして2027年4月、育成就労制度の施行を迎えます

最後に、組合員のみなさまへ、一つだけお願いがあります。

採用のご計画は、どうか早めにお聞かせください。

施行をはさむこれからの1〜2年は、面接や計画認定などの手続きが全国的に混み合うことが見込まれます。「そろそろ新しい人を」と思われる半年〜1年前から動き始めるのが、いちばん確実です。

8. 連載を閉じるにあたって

3回にわたって、おつきあいいただき、ありがとうございました。

数字だけが変わり、責任は日本に移る(第1回)。規制だけでは、選ばれる国になれない(第2回)。だから、受け入れる側の私たちは、本気で教育する送出機関と組み、教育で応える(最終回)。

日本語の壁も、借金の重荷も、できるだけ本人に背負わせずに送り出す。そうして来日した人材だからこそ、御社の現場に長く根を張ってくれる──私たちはそう信じています。

「正しい企業に、正しい人を」

その「正しい人」を、私たちはこれからも、現地の先生たちと共に、責任を持って一生懸命に育ててまいります。


【次号予告】

連載"月給2か月分ルールが招く未来"は、今回で完結です。

来月号(8/20号)からは、世間でよく聞かれる制度への不満や疑問に、一つずつお答えしてまいります。第1弾は、この問いです。

「人手不足なのに、なぜ国は受け入れ人数に枠をはめるのか」

枠は、動かせない決まりごとに見えます。ですが実は国は、その枠を正攻法で広げる道を、きちんと用意しています。今月号の最後にお願いした"採用のご計画の前倒し"とも、まっすぐつながる話です。

引き続き、ご一読いただければ幸いです。

ご相談はいつでもお受けしております。

今月もありがとうございました。

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