結婚30周年旅行で一番印象に残ったのは、国道を走るフェリーだった
僕たち夫婦は、今年で結婚して30年。
よくここまで続いたものだと、自画自賛してしまう。余談だが、かつみ♥さゆりも今年で結婚30周年だ。
結婚30周年記念として、4泊5日(うち1泊はフェリー)で九州旅行をすることにした。本当は25周年で行く予定だったが、緊急事態宣言が出たため延期していたのだ。

妻は阿蘇のYouTubeばかり見ていた
5年も待たされ、九州への想いを募らせすぎてこじらせた妻。
ようやく念願が叶うこともあり、夕方大阪を出るフェリーに乗り早朝に北九州着、そこから車で高千穂へ移動して阿蘇山と黒川温泉に行き、さらに四国の道後温泉を攻めてしまなみ街道経由で大阪まで帰るという、バスなら運転手が2人乗っていないと法に触れるのではと思うくらい盛りだくさんの予定をたてていた。欲張り過ぎやろ。
ちなみに、運転手は僕だけ。まあ、このくらいは想定内だし運転は好きなので、特に問題はないはずだ。旅行は身体が動くうちに行っておかないとな。

なぜか妻はこの車を運転しない
船が苦手な僕は、初日のフェリー泊に一番ビビっていた。しかし海は穏やかでほとんど揺れず、快適な船旅だったのはうれしい誤算だった。
もうこれでフェリーは克服できたと上機嫌で高千穂峡へ移動、翌日は阿蘇山経由で黒川温泉と、順調に行程をこなす。晴れ女の妻の影響か、梅雨の時期であったにもかかわらず、旅行中はずっと良い天気だった。

検索したら「草野仁に似てるからひとし君人形ちゃうか」と出てきた
そして、黒川温泉から道後温泉まで車で行くという、今回の旅で最もハードな移動日。
前日に寄った阿蘇の道の駅で食べたソフトクリームが忘れられないというので、朝一番で黒川温泉から道の駅まで引き返した。
道の駅を出る時点で、時間は午前10時半ごろ。ここから道後温泉まで本州経由だと約600km、休憩なしで8時間くらいかかると出たので、大分と愛媛の間を渡るフェリーを使うことにした。
これなら船に乗っている間は休憩できるし、時短になるので夕方までには道後温泉に着くはず。そして、何より僕はもうフェリーを克服したのだ。
妻の予定表では宿に着く前に松山城へ寄るとなっていたが、ここはいったん無視することにする。

寄り道も旅の醍醐味だが移動がハードになる
フェリーが渡る豊予海峡は、有名な「関さば」「関あじ」の産地。一年中潮流が速いため身が引き締まり、脂のりの良いコリコリした歯ごたえが特長だそうな。
せっかくなので、道中で関さばと関あじが合い盛りになった『りゅうきゅう丼(タレ漬けの魚が乗っかった丼)』を食べる。大分名物なのに「りゅうきゅう」とはこれいかに。沖縄には行っていないのに、おまけがついてきて得したような気分になる。

九州で写真を撮っていないので四国の港
乗船するのは、九州と四国を最短ルートで結ぶ『国道九四フェリー』。名前のとおり、海上を走る国道197号線を渡っていくそうだ。海上にも国道って普通にあるんやな。
乗り場に着くと、思った以上に車が並んでいた。停まっているフェリーを見る限り、それほど大きな船ではなさそうだ。予約していなかったのでキャンセル待ちだったが、すぐ乗船できたのはラッキーだった。

これも四国側
客室に入ると、取り放題になっているエチケット袋が目に入る。
たかだか乗船時間70分の船に、意味深な雰囲気で大量に置かれた袋。気にするなというのは、どだい無理な話だ。まあ今日は快晴だし、とりあえず必要ないだろう。
せっかく船に乗るのだからと、妻が展望席を取った。展望席はゆったり配置されたオットマン付きの座席で、目前の大きな窓から進行方向の海が見える。
この快適さが1人300円アップで手に入るなんてありがたい。妻よ、でかした。

阿蘇で見た馬のケツ
遠くに見える佐田岬の風力発電のプロペラが、ゆるゆると回っている。空はこれ以上ないくらいの晴れ。誰がどう見ても旅行日和の穏やかな天気である。
海を見ると、水面にトビウオが見えた。
「ほら、あそこにトビウオ飛んでるで」
「いや、ハトやろ」
「あんな海面すれすれに飛んでるハトおらんわ」
こんなくだらない会話も、船旅のエッセンスとしてはちょうどいい。
早く着きそうだし、松山城へ行くのも視野に入れようか。

松山城寄れるかな
大分を出発して、数十分。さっきまでとは明らかに海の様子が変わってきた。
「なんかこのあたりの海、渦巻いてへん?」と妻。
たしかに、海面にはザワザワと白波が立ち、所々で渦を巻いている。イヤな予感しかしない。
豊予海峡は一年中流れが速いと聞いていたが、思った以上に激しい海だった。そりゃこんな流れの速い海に住んでたら、サバもアジも身を引き締めて過ごさな流されてまうわ。
激しく横揺れしながら、渦潮の中に容赦なく突っ込んでいく小さなフェリー。できればそこを通らないでいただきたいが、前に進まなければ陸に着かないので我慢するしかない。

ナナメってますねんけど
みるみるうちに、波が高くなってきた。
フワッと浮いてドンと落ちる、ウォータースライダーのような動きが目の前の風景から予測できてしまい、口の中が酸っぱくなる。もう海は見んでもええわと目を閉じるが、不規則な動きで落ち着いて寝られない。
フェリーで遊園地気分も味わえてお得だと考えることもできるが、僕はウォータースライダーも大の苦手なのだ。
先ほどトイレに立った妻が、油粘土のような顔色で戻ってきた。揺れすぎてトイレに座っていられず、酔ってしまったらしい。
船酔いしているのを見たことがない妻でこの状態なのだから、船に弱い僕は言わずもがなである。エチケット袋を取りに行きたかったが、袋の置いてある場所にたどり着ける気がしない。
誰が「フェリー克服した」やねん。

(イメージ)
こんなに穏やかな天気で、この揺れか。海峡おそるべし。
真冬の津軽海峡なんて訪れた日には、関さば以上に僕の体が引き締まってしまうわ。
オットマン付きの豪華な席を取ったにもかかわらず、心も体もまったく休まらないまま、到着地の三崎港が見えてきた。

船内に「着岸時に揺れる可能性があるのでご注意ください」とアナウンスが流れている。
沖で散々揺れていたのに、着岸時の揺れなんてもう屁でもないやろ。
船からは早く降りたいが、この体調で運転しなければならないのかと冷静になる。
松山城、やっぱり行くのはやめとくか。
文章と写真:知院ゆじ
はじめてフェリーに乗ったときの話はこちら↓
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