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鹿の魔導士#2 森の賢者

★鹿の魔導士#2 森の賢者

原作・絵 ちろ/文 スピカ



こもれびが優しく差し込む森の奥深くに、苔むしたかわいらしい屋根の小さなおうちがあった。ここには、森の動物たちから「森の賢者」と慕われている、ヒキガエルの魔女が住んでいる。



「よっこらしょ、っと……」
おうちのキッチンでは、ヒキガエルの魔女が木製の小さないすに腰かけ、丁寧にジャガイモの皮をむいていた。彼女のいちばんのチャームポイントは、耳元で揺れる三つ編みの長いおさげ髪。長い年月をかけて大切に手入れされてきたその髪には、いつしかやわらかな白髪が混ざるようになっていた。
「ねえ、ネズミさん。私の髪も、ずいぶんと真っ白になっちゃったわねぇ」
隣で一緒にジャガイモの皮を剥いていた相棒のネズミさんが、ピクッとヒゲを揺らして振り返る。
「そんなことないですよ、魔女様。そのおさげ、今日もしなやかでとっても素敵です」



「ふふ、ありがとう。もう私も500歳なんだからね。そりゃあ白髪にもなっちゃうわよ。でもね、このおさげは私のチャームポイントなんだから。歳をとったって、絶対にお手入れは欠かさないんだからね」
そう言って魔女がお茶目にはにかむと、おうちの中にジャガイモの皮をむくシャリシャリという心地よい音が響いた。
今日の晩ごはんは、みんなが大好きなカレーライスだ。鍋からはもう、香ばしいスパイスの匂いが甘く漂い始めている。
この家で暮らすヒキガエルの魔女とネズミさんは、森の生き物たちととても仲良くしていた。二人がわざわざ遠くまで買い出しに行かなくても困らないのは、毎日、動物たちが代わる代わる贈り物を届けてくれるからだ。



リスたちは袋いっぱいのドングリや木の実を。小鳥たちは朝一番の澄みきった綺麗な水を。クマさんは大きな手いっぱいに、みずみずしいジャガイモや人参などの野菜を運んできてくれる。



もちろん、魔女たちももらうばかりではない。
動物たちが転んで怪我をした時には、庭で育てた薬草を調合してひんやり気持ちのいい軟膏を作ってあげる。お腹を壊した子には温かいハーブティーを煎じ、時には「あっちの森のうさぎさんは、あなたのことが気になっているみたいだよ」なんて、甘酸っぱい恋占いまでしてあげるのだ。
互いを思いやり、できることを分かち合う。そんな風に、ヒキガエルの魔女とネズミさんは、森の動物たちと助け合いながら毎日をとても楽しく、穏やかに暮らしていたのだった。
「さて、あとはきのこと野菜をじっくり煮込めば、おいしいカレーの完成ね」
魔女が満足そうに鍋のふたをしめた、まさにその時だった。


コンコン。
静かな森のおうちに、控えめだが確かな扉を叩く音が響いた。
「おや……?」
ネズミさんと顔を見合わせた魔女は、おさげを揺らしながらゆっくりと扉へ向かった。

続く…



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