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雨と花とおいなりさん

梅雨、雨と紫陽花に 外へおいでと誘われます。

相変わらず お似合いですねぇ、雨粒と紫陽花
そっと引き立てあう 奥ゆかしさがうつくしい。


雨音が急に小さくなって 街はリズムを失うとシンと静まりかえります
空が明るくなってくると 転調の合図のような小鳥の高音が 楽しさを添えます

傘をずらして空を見ました
太陽の在処ありかをあの雲の向こう側に見つけました

傘を肩にもたせかけ、くるんくるんと回したら
短い横断歩道の向こう側の小さなボクも
閉じてた傘を開いて真似をしました
すれ違いざま にっこりすると
うっかり反射してしまったみたいに
真顔で無言のバイバイをひとつ返してくれました


すっかり雨は上がったけれど、あともう少し傘をさしていたかったから
次のだれかに出くわすまで…  
ゲームスタート

あたりが一気に明るくなります

太陽の光で あの雨粒は弾けたかもしれない
そして熱を帯びると 鳥と一緒に飛んでいく
それを紫陽花はじっと見送る
残った粒はしばらく花に寄り添って
そのまま混ざり合うかもしれないし
雫になって土に還ってゆくかもしれない


雨粒と紫陽花の関係が 恋人だったら、夫婦だったら、親子だったら、友達だったら、先生と生徒だったら
光はだれかな、鳥はだれだろう 、行き先はどこ
その場面の心情の温度は想定で随分変わってくる。
物語を作ることって、もしかしたらそういうひとつひとつの選択を味わうことなのかな。


ゲームオーバー
傘を閉じて すれ違う。
何も交わさなかったけど その人も赤い傘でした。


どれも静かなコミュニケーション
ひっそりとしたお散歩でした。


紫陽花には、“ 移り気” や “ 浮気 ” という花言葉があるけど  “ 家族 ”や“ 団欒 ”というのもあるんですって。
別名 “ 七変化 ” だしね、なんだか魅惑の花ですね。


***

父の日
この日はいつも梅雨のさなか。

6年前の父の日に、おいなりさんをこしらえて実家に帰りました。
あまり実家には寄りつかない私なのだけど、帰らなくっちゃと思ったのです。

おみやげはどうしようかと考えて ふと思いついたのが手作りのおいなりさんでした。

自宅で病気療養中だった父は もうかなり食が細くなっていて、食べられるかどうかもわからなかったのだけど それにしようと決めました。

大事そうにゆっくりゆっくり少しずつ味わってくれました。
私も一緒に食べるつもりだったけど、そんな父の姿を 目の前に座ってただじっと眺めていました。

それから二ヶ月足らずで父は亡くなり、おいなりさんは 父に食べてもらった最後の私の手料理となりました。

以来なんとなく、父の日にはおいなりさんをこしらえます。
そこに 香りのいいお茶とお花を添えます。


こうしよう、と思ったらそうするのがいい。
していなかったら後悔してたかもしれない。
そうしたからこそ一生の思い出ができたよ。
もう二度と叶わないこともあったりするから
今のきもちを大切に。

感謝のきもち、届きますように。
どうぞよい一日を、よい一週間を。



#25.   『 父の日 』

⭐︎茶と花を香りでえらぶ盲目の父へ届けるみちしるべかな

⭐︎父の日に こさえるいなりじゅんわりと少し甘めに少し柔めに
        ー ちる ー



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