見出し画像

干される覚悟で家族を優先した同僚の話

2016年頃ぐらいのことだった。私が勤めていた会社での話だ。当時、2016年ぐらいから、働き方改革という名の長時間労働を削減する改革が進んでいた。その同僚は、ちょうどそんな時に会社で、将来を期待された幹部候補という、それなりにいいポジションに位置していた。

結婚します!!

突然、社内でノリに乗ってきた同僚の口からこぼれた。それは誰もが驚いた。そもそも誰と付き合っているかも知らないし、それが社内のメンバーなんて、誰も知る由がなかった。同僚の視点から二人を見た時に、男側がモーレツにアプローチしたのであろうとわかる結婚だった。ちゃんと仕事して
のか?と笑いながら揶揄されていた。結果として、みんなに祝福された。

本社に異動します!!

またもや突然発表があった。変化とスピードが速い会社文化だ。決して驚くことではない。人事の話は、だいたい1週間前ぐらいに発表されることもある。おそらく同じ部署で結婚したから、当時のルールでは、一緒に働くのは難しかったのだろう。本社で何をするのか決まっていないようだった。ただキミなら大丈夫。どこでも活躍できるさ。

そこからまた1年が経ち、2年が経った。その時のことだ。

部署異動して、戻ります!

本当に?。いつも忙しそうだ。ちょっと気になったので、彼と話す機会を設けるために、ランチに誘った。すると、意外な話を聞いた。元々、1年だけの単身赴任での話で本社へ異動したそうだ。ただ、1年経っても、本社から元いた場所に戻れる雰囲気が無かったらしい。その際に、本社へ異動を促した上司が組織のレポートラインから外れて、新任の上司が配置された。そのタイミングで、新任の上司に1年で戻る約束の話をしたそうだ。その時。

「公私の私を優先するようなやつが、人の上に立つな」

と、新任の上司から投げかけられたらしい。その言葉を聞き、同僚はもう諦めたそうだ。1年また1年と人生を過ごしていくことで、それぞれに固有の価値基準ができる。彼は、社内でも指折りのハードワーカーだった。誰よりも朝早く出社し、誰よりも遅くまで働いていた。その背中は、悲壮感が漂うほどの迫力があった。

自分は仕事が遅いから、、人の何倍も働かないと追いつけないんだ

ある時、他部署の先輩社員から「○○さん、なんかオーラが出てきたね」と言われているのを耳にしたことがある。人は、積み重ねていくことで、表情や仕草にも重みが増すのであろう。側から見ても、彼はノリに乗っていた。

その彼が、反旗を翻したのだ。職業人生というは、偶然の積み重ねである。決して能力が高くとも活躍できないこともある。努力が報われないこともあるし、挫折を乗り越えられないかもしれない。人生は、その全てを受け入れつつ、それでも前に進む覚悟が必要なのかもしれない。

戻ってきてから、数年の間に、彼は退職した。出世の見込みは消えただろうから、かしこい判断なのかもしれない。人の人生は、関係する人によって変化していく。人間関係とは奥が深い。いい人間関係を構築できるように、今日もまた一人ひとりが、挨拶をしたり、会話をしたりするのだろう。そういった些細な毎日の営みが、人生なのだ。

家族優先を「覚悟」と呼ばなくていい働き方をつくりたくて、私は独立を選びました。これはキャリアの犠牲ではなく、人生設計の問題だと考えています。


いいなと思ったら応援しよう!