「内臓脂肪は“意志”じゃ落ちない|食事と働き方で体が静かに変わり始める話」
第1回
内臓脂肪はなぜ気になるのか
――数字に追い詰められる私たち
健康診断の結果を開いた瞬間、
胸の奥が、きゅっと縮むような感覚になること、ありませんか。
「内臓脂肪」
「腹囲」
「メタボリックシンドローム」
赤字や※印がついていると、
それだけで一気に気持ちが重くなる。
「またか…」
「ちゃんと気をつけてるのに」
「もう年齢的に仕方ないんかな」
私自身、臨床検査技師として
何千人、何万人分という健診データを見てきましたが、
この“結果を見た直後の沈黙”には、何度も立ち会ってきました。
診察室の外で、
紙を見つめたまま動かなくなる人。
問診票に、
「食事・運動:気をつけています」と
少し力を入れて書く人。
そして、
「やっぱりダメでしたかね…」
と、申し訳なさそうに笑う人。
私はいつも、その瞬間に思うんです。
この人たちは、本当に“何もしていない”んだろうか。
内臓脂肪=悪、という刷り込み
内臓脂肪という言葉は、
いつの間にか「悪者」として定着しました。
・内臓脂肪は落とすべき
・内臓脂肪が多い=不健康
・内臓脂肪があると将来が危ない
テレビ、ネット、雑誌、SNS。
どこを見ても、そう言われ続けています。
だから健診で指摘されると、
単に「体の状態」を伝えられただけなのに、
まるで 人格を評価された ような気持ちになる。
「だらしないと思われたかな」
「自己管理ができてないってことかな」
そんなふうに、
体の一部の数値が、
自分そのものを否定してくる。
でもね、
ここで一度、立ち止まってほしいんです。
内臓脂肪って、本当に“悪”だけの存在なんでしょうか。
検査技師として見る「数値」と「現実」のズレ
臨床検査技師の仕事は、
血液や尿、画像、数値を通して
「体の今」を読み取ることです。
でも同時に、
数値だけでは見えないものが、
たくさんあることも知っています。
たとえば。
・仕事が忙しくて、食事時間が不規則
・立ちっぱなし、座りっぱなしの毎日
・睡眠時間は足りていない
・ストレスを感じている自覚がある
・家族のことを優先して、自分は後回し
こうした生活背景は、
検査結果の紙には書かれません。
けれど、
体は正直に、それを記録しています。
そのひとつの形が、
内臓脂肪として表に出てくることがある。
私は現場で、
「生活が大変そうな人ほど、内臓脂肪が増えている」
そんなケースを、何度も見てきました。
逆に言えば、
内臓脂肪は、怠けた証拠ではなく、
“頑張ってきた結果”として現れることもある。
これは、
ダイエット情報では、あまり語られません。
皮下脂肪と内臓脂肪は、役割が違う

ここで、
皮下脂肪と内臓脂肪の違いを、
できるだけ噛み砕いて話しますね。
皮下脂肪は、
皮膚のすぐ下につく脂肪。
触れるし、つまめるし、
見た目にも分かりやすい。
一方、内臓脂肪は、
お腹の中、臓器のまわりにつく脂肪です。
この内臓脂肪、
実は 「非常時のエネルギー倉庫」
のような役割を持っています。
・急にエネルギーが必要になったとき
・体がストレスにさらされたとき
・冷えや負荷から臓器を守りたいとき
そういうときに、
すぐ使える形でエネルギーを備えておく。
つまり、
内臓脂肪は「守るための脂肪」なんよ。
もちろん、
増えすぎると問題になることはあります。
でもそれは、
「存在そのものが悪い」からではありません。
内臓脂肪は「体の防御反応」かもしれない
私がこの仕事を続ける中で、
強く感じるようになったことがあります。
それは、
内臓脂肪は、
体が“これ以上無理させんで”
と出しているサインかもしれない
ということ。
食事を減らしても減らない。
運動しても変わらない。
それどころか、増えていく。
そんなとき、
体はこう判断している可能性があります。
・エネルギーが足りない
・回復が追いついていない
・緊張状態が続いている
・これ以上消耗したら危ない
だから、
“守り”に入る。
脂肪を溜めて、
内臓を守って、
なんとか今の生活を続けようとする。
それは、
決して怠慢ではない。
むしろ、生き延びるための賢い選択
とも言えるんです。
「頑張っている人ほど増える」ケース
現場で印象に残っているのは、
こんな人たちです。
・仕事を休めない
・人に頼るのが苦手
・自分のことは後回し
・「大丈夫です」が口癖
そういう人ほど、
内臓脂肪の数値が高いことがある。
本人は、
「そんなに食べてない」
「むしろ気をつけてる」
と言います。
それも、そのはずなんよ。
体が欲しているのは、
「もっと頑張れ」ではなく、
「一度、力を抜いて」という合図だから。
でも私たちは、
そのサインを
「太った」「ダメだ」と解釈してしまう。
ここに、
大きなすれ違いがあります。
この連載で大切にしたいこと
この連載では、
内臓脂肪を「落とす対象」としてだけ
扱いません。
・なぜ溜まったのか
・体は何を守ろうとしたのか
・生活や働き方とどう繋がっているのか
そこを、
医療職としての視点で、
でも人としての目線で、
丁寧に見ていきます。
頑張れない人を、
切り捨てない。
意志の弱さで、
片づけない。
「少し安心して、
少し整えたくなる」
そんな読み物にしたいと思っています。
次回予告(第2回)
次回は、
「食事を変えても落ちない理由」
について書きます。
・なぜ我慢すると逆効果になるのか
・冷えや睡眠がどう関係するのか
・「燃やす体」より「守る体」になっている状態
数字では見えにくい
“エネルギーの流れ”を、
一緒にほどいていきましょう。
ここまで読んでくれて、ありがとう。
あなたの体は、
思っている以上に、ちゃんと頑張っています。
皮下脂肪は、
皮膚のすぐ下につく脂肪。
触れるし、つまめるし、
見た目にも分かりやすい。
一方、内臓脂肪は、
お腹の中、臓器のまわりにつく脂肪です。
この内臓脂肪、
実は 「非常時のエネルギー倉庫」
のような役割を持っています。
・急にエネルギーが必要になったとき
・体がストレスにさらされたとき
・冷えや負荷から臓器を守りたいとき
そういうときに、
すぐ使える形でエネルギーを備えておく。
つまり、
内臓脂肪は「守るための脂肪」なんよ。
もちろん、
増えすぎると問題になることはあります。
でもそれは、
「存在そのものが悪い」からではありません。
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