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終末予言が外れた日、私たちは何を学ぶべきか?

こんにちは、長南です。
7月に入って東京では暑い日が続いているが、みなさんは元気だろうか?

ここ数年の灼熱の夏がやってきた感じだが、暑さはさておき、一部界隈でささやかれていた「2025年7月の大災害」なる終末予言が「空振り」したことは素直に喜びたいと思う――。

わたくしは一貫してこの「予言」なるものには否定的な立場を取ってきた。このnoteでも何度か記事にしてとりあげている。

わたくしの読み通り(というか普通の感覚を持っている人であれば当然なのだが)界隈で言われていた期日は「大きな災害」など起きず経過した。このnote記事ではこの予言の「なにがダメだったのか」を考えていきたいと思う。


予言を信じてしまった方に

まず、この予言を吹聴してきた方々に問いたいことがある。それは、

「予言を信じて良いことがあったのか?」

ということだ。スピ系の人物やYoutuberなどにさんざん振り回されたあげく、その日は特に何もおこならなかった。「実は解釈が異なっていて別の日に災害が起きる」とか「防災意識が高まった」などとしたイイワケを主張する人もいるだろう。それも含めて「何か良いことがあったのか?」と問いたいのである。

おそらくこの問いに具体的な項目をあげることができる人はいないだろう。何もおきないのであれば心配するだけ無駄だし、仮に破局的な災害がおきたとしても事前に騒ぐことになにかメリットがあったとは考えられない。

ようするに「デマに振り回されるだけ無駄」だったということである。前掲の記事のなかでわたくしは「だれも幸せにしない」と書いたのはこういうことである。

どうしてこうなってしまったのか?

では、そもそもどうしてこんな事態が起きてしまったのか。その答えの一つは間違いなく今回の騒動の発端となった、たつき諒氏である。たつき氏はこの予言が騒ぎとなっているのをうけて「竜樹諒」名義で『天使の遺言』という書籍を出している。

書籍の内容はたつき氏の自伝で、積極的に肯定できる部分はないのだが「安易にスピにハマり発信力が強くなるとこのようなことが起きうる」という反面教師として読む価値がある。

原因のきっかけとなったエピソードは、東日本大震災を予言したとする最初のほうの『私が見た未来』の朝日ソノラマ社との原稿受け渡しの場面に描かれている。該当部分を引用してみよう。

 その日の朝、現行を受け取りに来てくれた担当の編集長へ渡したのですが、そのときに「2011年3月」と書いていたことに対して、
「なんでこんな未来予知みたいなことを書いちゃったの? 外れたらどうするの?」
と編集長は嫌がっていました。
 私は「10年以上先の未来予知など、覚えている人はいないはず」となだめたました。
 すると困ったように、ウーッと唸られてしまったのを覚えています。

竜樹諒『天使の遺言』「年月だけが大きくはっきりと」より

そう、「10年以上先の未来予知など、覚えている人はいないはず」という表現者として非常に無責任な態度が致命的であり、このことで、たつき氏は十字架を背負ったのではないか。

その後2011年3月に東日本大震災が起きた後にこの本が一部で話題となり、たつき諒氏のニセモノが登場、ニセたつき諒氏をかつぐ形で飛鳥新社が今回の『私が見た未来 完全版』の企画が立ち上げられ、その終盤でニセモノではないたつき諒氏が介入して、今回の書籍が発売されることになったということのようである。

しかし「完全版」に際しても、たつき諒氏の行動は軽率だったと言わざるを得ない。もしきちんとした反論を世に出すのであれば別の出版社でしっかりしたものを出すべきだったし、「完全版」においてもインスピレーション・イメージ・夢といった極めて個人的なことを世界全体に適用するという、極めて致命的な過ちをここでもおかして「2025年7月」の予言が出来上がったわけである。

たつき諒氏は「経験したことすべてに意味があり真実である」といったことを『天使の遺言』で主張しているが、それはあくまで経験した本人にとっての真実であり、人類全体に適用できるかは別の問題だということを考慮できていなかったことが原因である。

また、発表の仕方にも戦略性がなく「その結果どのように受け止められるか」ということを考えていない。『私が見た未来』(完全版も含む)もそうだし『天使の遺言』もそうだ。デマが出回りすぎた今回の予言に対して「真意を示す」のが『天使の遺言』を出した理由だということであるが、実際のところは書店では『私が見た未来 完全版』と『天使の遺言』が並べられ、大災害で客をより煽る構造になっていた。書店としても昨今の出版不況のもとで少しでもキャッチーな売り方をする必要があり、そうとは知らずに本を手に取った読者も多かったように思う。しかし皮肉にもその構造自体が「予言」の幻想を一層あおる結果となってしまっていた。

睡眠中に夢を見るということへの理解

そもそも「睡眠中に夢を見ること」についても、たつき氏の理解は足りなかったのではないか。

睡眠中に夢を見ることについてはまだまだ分かっていないことが多いらしいが、日中に見聞きしたり体験したこと、感情についての記憶を整理する役割があり、その過程で夢を見ると言われている。

いわば現実社会とその時々に感じた感情が何らかの形で投影されたものが、睡眠中に見る夢ということである。現実社会で起きたことから、その延長上に何が起きるのかというのはある程度予想がつくし、それに対してどんな感情をもったかというのは夢の景色を劇的に変えることになろう。

そういった意味では「予知夢」や「明晰夢」というものが超自然的なものではなく、ある程度脳科学的に説明がつく現象であるのだが、たつき氏は舞い上がってそれを作品に無批判に投影してしまった。それがフィクションであれば一定程度許されるであろうが、これが世界を滅ぼす終末予言ということだと話は全く違う。そのあたりの分別が足りなかったのではないだろうか。

もちろんこれは、たつき氏だけに言えることではなく、予言を煽ってきたスピ系、Youtuber、なんとなく知人に話す人に至るまで程度の差はあれどいえることではないだろうか。

つまるところ、SNS(X)のようなバンドワゴン効果が大きく働く場所で、ストーリーを提示する側にオカルトリテラシが足りない状態で語ってしまったのが、今回の予言騒動の原因だと考えている。

予言の発信者が得た利益と代償

視点を変えて、今回の予言を発信してきた側がどれだけの利益と負債を追っているのか考えてみたいと思う。といってもYoutuberやスピ屋はそれこそ掃いて捨てるほど出てきた上に情報不足なので、たつき氏の『私が見た未来 完全版』で考えてみたいと思う。

この本はそれこそ出版社の販売促進活動によって色々なところに広告が出されたのであるが、電車の吊り広告では「100万部突破」とのアオリが書かれていた。報道されているところによると、実際はそれよりも伸びて106万部売ったとも言われるが、とりあえず100万部としておこう。

書籍を出したときの報酬というのはいわいる「著者印税」である。ケースにもよるので断定的なことは言えないが、定価の5~10%というのが多いのではないかと思う。定価は1,200円なので、低めに見積もったとして

1,200円 ✕ 5% ✕ 100万部 = 6,000万円

ということになる。一見すると「6,000万円稼ぐいい仕事」のようにも思えるが、社会に対して「終末」予言を出した責任は決して軽くはない。6,000万円分(あるいはそれ以上)の代償がその反動としてやってくるだろう。実際のところ現在は「2025年7月の予言を外した人」という見られ方をしており、何を主張しても信じてもらえない「嘘つき」呼ばわりされる状態になるのではないだろうか。

『天使の遺言』を発刊した時期の産経新聞の記事によれば、「取材を拒否」する一方、ちゃっかり「予言は撤回しないが防災意識が高まった」といったコメントを残している。もしわたくしが本人と話す機会があるとしたら

6,000万円の印税はどうされたのですか?

と聞いてみたいところである。語弊を恐れずに言うのであれば、この著者印税は「世界の滅亡と引き換えに悪魔と取引して得た金」といえるわけだが、それが成就しなかった現状では、それと同じ額、あるいは2倍3倍の代償を払うことになると信じている。

もちろんこのことは、たつき諒氏に限らず、無責任スピリチュアル勢やYoutuberにも同じことが言えるだろう。誠実でない言動をした代償が自身に帰ってくるという話は、オカルトというよりも童話や寓話の世界の話であるが、自ら「不幸になりにいく」行動を見ていると、童話の悪役と同じように「人間はどうしてここまで愚かなのだろう」と思わざるをえない。

終末予言よりも大事なこと

わたくしのnote記事を読んでくださっている方がどのような態度をとるべきかというのは単純かつ明快で、

終末予言などは信じる以前に妄言と切り捨て、距離を取る

ということである。なにも『シンデレラ』や『白雪姫』の悪役サイドの役割を演じる必要はない。

童話や寓話、オカルト話も含めた人間の営みを肯定し、今この瞬間を誠実に生きることで物語の「主人公」サイドの役割を演じるべきなのだ――

折しも今日は七夕。天気が良くても悪くても中国の神話をルーツにもつ七夕伝説に思いをはせてみるのはどうだろうか。
おそらく、くだらない終末予言に心を悩ませるよりも有意義だとわたくしは信じている――

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