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#144:政治とカネの問題を終わらせる - 会計士として関与した『みらい まる見え政治資金』

『みらい まる見え政治資金』

2025年10月2日、チームみらいが『みらい まる見え政治資金』というツールを発表しました。

収入や支出をはじめとした金銭の流れの状況についてウェブサイトに反映できるツールで、チームみらいが主張していたことの1つ「政治とカネの問題を終わらせる」目的に向けた第一歩となるものです。

僕自身は、下記のnote記事でも触れている通り参院選よりチームみらいを手伝っており、国政政党となった今も継続して関与している状況にあります。

その中で、この『みらい まる見え政治資金』についても一部ではありますが公認会計士としてのスキルで貢献できた部分があり、それについて書いていきたいと思います。

注:当noteはチームみらいの意見を代表したものではありません。関与した1人の会計士としての視点である旨ご了承ください。

▼技術面での解説記事

▼2025年参議院選挙でチームみらいと駆け抜けた記事(完全な思い出語り)



『みらい まる見え政治資金』への貢献

『みらい まる見え政治資金』のリリースにあたり、大きく分けて「基本の仕訳データ整備」と「どのように見せるかについてのディスカッション」の2つの点で貢献できたかなと考えています。

「基本の仕訳データ整備」については文字通りで、「どのように見せるかについてのディスカッション」については大きくはエンジニアの皆さんに頼るところ、会計士としても意外と貢献できる部分があったというのが正直なところです。

この2点について書いていきたいと思います。

①基本の仕訳データ整備

政党であっても企業と同じように日々のお金の流れが発生します。その流れを複式簿記にて仕訳に起票する、ということをしていました。

一通り仕訳を起票し終えた後はエンジニアチームに仕訳のcsvデータを渡し、そのcsvデータをもとにエンジニアチームが実装してみる→それを見て議論する、ということを繰り返していました。

この仕訳作業の量が多く存外たいへん、また、僕の手元だけで実施することによって作業がブラックボックス化する懸念もあり、一度安野くんとエンジニアの皆さんに僕の作業を説明し、手を動かしてもらったこともありました。。。笑

この仕訳作業については、シンプルに、日付、金額、支払先の内容と、こちらで把握している出費を照らし合わせて、仕訳を起票していました。

この仕訳によって政治資金収支報告書がスムーズに作成できることを意図していたため、使用しているシステムに政治資金収支報告書で用いる科目を事前に登録する、というのは意外と面倒でした。

連結会計もなければ難易度の高い論点もなく、基本的に簿記3級程度の知識があれば手伝える内容でした。

ただ、企業会計とは使用する科目が異なるので、公開されている他の政党の政治資金収支報告書を参考させていただきながら政治資金収支報告書ならではの科目と向き合う、というのは個人的に不慣れなポイントでした。

チームみらいはその支出先にGITHUBやSUPABASEといった、あまり他の政党ではお見掛けしない支出先もあるため、それらの支出をどのようにカテゴライズするか、といったところについても少し考えました。

一人で家のPCに向かってチクチクと仕訳に向き合う時間も長く、全体として泥臭い作業の時間の長いフェーズでした。

▼総務省のこちらのサイトで他の政党の政治資金収支報告書を参考する

②どのように見せるかについてのディスカッション

上記の通り、もともとは政治資金収支報告書をすぐに作成できるとよいな、という気持ちで仕訳を起票していたため、それを取り込んだだけでは今回リリースしたみらいまる見え政治資金にはなりません。

また、そもそもcsvデータをきれいに見せるようにプログラムするエンジニアとしての技術も僕にはなく、その点こちらのJun Itoさん(エディ)がメイン開発者としてすばらしい動きをしていました。本当にエディがすごかった。

作成した仕訳データを元に反映してもらいディスカッション、また、一度自分の作業を説明した後は他のエンジニアの方も手を動かせるようになったので、最後の2週間ほどはなんだかフワフワと動きたまに意見する、という、あまり「手を動かさない」立ち回りになってしまい、この点が今回の反省事項です。

僕の反省はさておき。作成したデータを元に反映→ディスカッション→場合によっては仕訳も修正、といったことを繰り返していました。

現行の政治資金収支報告書の弱点を考える

政治資金収支報告書を開示することにも意味がありますが、チームみらいは、より透明性のあるものをオープンにしたい気持ちがありました。

現行の政治資金収支報告書は「単式簿記」「現金主義」に則った形で作成されています。現金だけで買い物をする方の家計簿、を想像してもらえれば早いと思いますが、

2025/9/20 +200,000(給料)
2025/9/23 ▲6,500(洋服) 
2025/9/25 ▲10,000(電気代)

単式簿記・現金主義の世界

このような世界観で現行の政治資金収支報告書は作成されています。なので、例えば「借入金」は、複式簿記の世界では資産と負債で仕訳を起票しますが、単式簿記を用いる政治資金収支報告書の世界では「借入金」は収入となります。現金が入ってきているため、です。

借入は、「借入による収入」として収入項目に記載されます。

この世界観には、メリットとデメリットがあります。

メリットとしては、簡単、です。こういった記録方法であれば、専門的な知識や経験を有しなくてもある程度対応することができます。お金の入りと出のイメージが直結する良さもあります。

デメリットとしては様々な項目が挙げられます。正直挙げ始めればキリがない、というところです。正確性・網羅性・期間帰属、といった、計算書類を作成する上で重要な観点を担保することが難しく、また、通常の企業であれば作成する「貸借対照表」のような、「今どういう状況か」を説明することができません。

上記に挙げた借入金も、借入と返済については表示できますが、「この時点でいくら借入が残っている」という情報を単式簿記だとすぐに把握することができません。

『みらい まる見え政治資金』のリリースにあたり、より分かりやすいものを提供したく、以下のようなことを考えました。

財務会計の概念フレームワークにおける「意思決定有用性」と「比較可能性」の概念に沿って説明してみようと思います。

こちらも注意点ですが、チームみらいとして財務会計の概念フレームワークに沿って検討を行ったというよりは、様々な議論を受けて僕が個人的に整理しやすいなと思っての振り返りである旨ご了承ください。

意思決定有用性と比較可能性について

『みらい まる見え政治資金』は、政治における資金の流れを透明化することを趣旨としています。透明化することによって有権者の方が「この党を応援しよう」と決めることができるとそれはとても良い状況と言えます(意思決定有用性)。

その一方、応援してほしいがあまり各党が好き勝手に資金の流れを説明すると、有権者は党と党を比較できなくなってしまいます。比較できないと意思決定が阻害されてしまいます。

この意味で比較可能性も重要であり、イコール、フォーマットに従う価値もそれなりにある、ということとなります。

今回の『みらい まる見え政治資金』のリリースにあたり、意思決定有用性のある情報を提供できるようにしつつ、同時に、他の党との比較可能性(今では特に政治資金収支報告書からあまりにかけ離れてしまわないこと)を担保することも大切でした。

ここから先は、その観点で考えたことです。少し専門的な話になるので読み飛ばしていただいても大丈夫です。

①未払金/未払費用について

通常の経済主体においては「未払金/未払費用」がたくさん発生します。例えば、今使っている電気や水も後から請求書が来て支払うわけですが、請求書の発行日から支払期限まではタイムラグがあり、これは「未払金」となります。

収支がプラスであっても、そのプラスの中から将来的に出ていくことがほとんど決まっているお金がある、ということを見せるためにも、「未払金/未払費用」を開示することは重要です。

ただ、現行の政治資金収支報告書ではこれを見せることはできません。まだ支払っていないお金は現金主義においては記録されないからです。『みらい まる見え政治資金』では一部「発生主義」を導入し、未払金/未払費用を表示することとしました。

未払費用、に注目(2025/10/3、15時時点のスクリーンショット)

収支を考えた現金残高のうち、将来的にこれだけのお金が出ていきます、ということがこれで可視化されました。原則的に現金主義で記録されているサンキー図の中に一部発生主義が食い込んでいるので、特に専門家が見れば少し気持ち悪いかもしれません。

ただ、あくまで現金主義で記録されるサンキー図の中で、現金残高として示された金額の内訳として出しているので、比較可能性を大きく阻害しているとは言えないと考えています。

②引当金について

サンキー図を見ると明確ですが、選挙の際に支払う供託金は非常に大きな出費となります。そして選挙はまたいずれ実施されることが見込まれる将来、ということで、「供託金引当金」概念を取り入れることについても議論がありました。

引当金については見積方法の設定だったりその内容の開示といったことも必要となってくる話で、また、あまりに現状の収支報告書から離れた内容でもあるため今回は取り入れるに至っていません。

ただ、候補者一人につき数百万円もかかる選挙の供託金であることを考えると、供託金は政党にとって相当なインパクトのあるものです。収支がプラスであっても、選挙のタイミングによっては一気に資金を気にせざるをえない状況になることも考えられます。

その金額の出費が見込まれる、ということを「引当金」を用いて見せることは、意思決定有用性に資すると言えます。

一方で引当金の四要件を充足し、合理的な計算方法を説明することも非常に困難とも考えています。各党が同じ指針に沿って計算できる仕組みも考えるべきです。

今回の『みらい まる見え政治資金』には出ていませんが、供託金引当金については引き続き考えていきたいという思いが個人的にあります。

③現行の政治資金収支報告書について

チームみらいは政治とカネの問題を終わらせることを掲げて進んできていますが、今回のリリースで、あまりに他の党と比べることのできない状態がうまれてしまうとそれはそれでよくありません。

サンキー図、法律上の区分(2025/10/3 15時時点のスクリーンショット)

サンキー図における「法律上の区分」は、現行の政治資金収支報告書の区分を引き継いでいて、これによって比較可能性は担保されています。

他の党や政治家の方がこのシステムを利用した場合であっても、この「法律上の区分」は明確に比較可能ではないかと考えます。(ぜひ利用してほしい)

「詳細の区分」を見ることによって、少しチームみらい的な味付けのされたサンキー図が現れていますが、こちらもあまりに独特なものとはなっていない理解です。

まとめ

これまでの話から、今回の『みらい まる見え政治資金』では、これまでの政治資金収支報告書の内容を踏襲しつつもある程度有用性のある情報が提供できているのではないか、と考えています。

もちろん、引当金のようにまだ考えられることもあるし、これを見せることができればより良いよね、ということも出てくると思います。それについてはアップデートしていければよいなと考えます。


関与しての感想

これが全てではないですが、『みらい まる見え政治資金』のリリースにおいて、会計的にはここまで記載したような話が出ていました。

現金主義や発生主義についての議論をしたり、また、何かを見せたいとなった時にチェックをする、というところで会計士としてのバックグラウンドが活かせたかなと考えています。

何よりメイン開発者のエディがあまりにスルスルとこういったややこしい会計の概念のような話を理解していくので驚愕した、というのが正直なところ。

会計のテクニカルな話というよりはより原理原則に近いところの話が多かったため、正直、会計士受験生の頃の僕であればチンプンカンプンでした笑。

そんな内容をスルスルと理解し形にする、というエディのすごさを目の当たりにして、日々「すごいすごい」と思っていました(語彙力)。

また、プログラミングの技術を持たないので開発チームに直に関わることができず、その点で非常に悔しい思いをした、というのも正直なところです。自分にその能力があれば、その観点ではじめから仕訳起票もできたし、最終成果物のイメージ感ももって望めたなと思います。

今までプログラミングにトライしようとしては挫折し、を繰り返していてそのたびに「特に目標がないからな」と思っていたのですが、これをバネに取り組んでみる、というのもとてもありだなと思えました。 


リリースを受けて

このリリースによって大きな反発もあるかもしれない、という気持ちがあったことも確かですが、各SNSで概ねポジティブな反応をいただけている印象で、今のところ嬉しいです。

詳しく『みらい まる見え政治資金』を見られる中で、何かこれは変ではないか、とか、ご意見がありましたらぜひコメントで教えてください。

僕も政治とカネの問題を終わらせたいなと思っています。

▼チームみらいの公式な『みらい まる見え政治資金』に関するnoteです


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