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聖母マリアの面影 光と祈りの名画たち〜アヴェ・マリアを聴きながら〜 | Vol.8


🎧 西洋美術に描かれた聖母マリアの祈りの系譜

さて、クリスマスも近いということで、今回は聖母マリアの名画を、(いまさらな内容になりますが)主題別に、聖母マリアの人生の時系列に沿って、まとめてみました。特に奇を衒ったこともせず、本当に羅列するだけの記事になりそうです。

🖼️ 無原罪の御宿り(Immaculate Conception)

マリア自身が原罪なく母アンナの胎内に宿ったという教義を表現しています。とはいえ、胎児の姿では絵として成立しづらいので、通常マリアは、若い女性の姿で描かれています。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《エル・エスコリアルの無原罪の御宿り》プラド美術館

スペインのバロック期の画家ムリーリョ約20点描いた《無原罪の御宿り》のうちの一点。マリアは、ケルビム(天使)たちによって支えられ、三日月と雲の上に立つ、若い乙女の姿で描かれています。

🖼️ 受胎告知(Annunciation)

大天使ガブリエルがマリアに受胎を告げる場面です。

フラ・アンジェリコ受胎告知サン・マルコ美術館

イタリアのルネサンス期の画家フラ・アンジェリコによるフレスコ画。大天使ガブリエル、マリアともに、両手を胸に交差させる姿で描かれていて、厳かな気配が伝わります。

レオナルド・ダ・ヴィンチ受胎告知ウフィツィ美術館

ルネサンス期の万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが、若い頃に師のヴェロッキオとともに描いた作品。大天使ガブリエルの右手の形は、祝福の意を表現しています。

🖼️ 聖母子像(Madonna and Child)

イエス・キリストとともに描かれたマリアの絵です。多くの場合、マリアが幼いイエスを腕に抱いたり、膝の上に乗せたりする姿で描かれ、母性も重要なモチーフとなります。

ラファエロ・サンティ《小椅子の聖母》ピッティ宮殿パラティーナ美術館

盛期ルネサンスのイタリアの画家、ラファエロの代表作。円形画(トンド)に描かれた、見る者に親しみと安堵感を与える、心温かな母子像です。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《聖母と幼子イエスと洗礼者ヨハネ》個人蔵

19世紀フランスを代表するアカデミズム側の画家ウィリアム・アドルフ・ブグローによる聖母子像のバリエーション。玉座のマリアを中心に、幼子イエスと洗礼者ヨハネが愛らしく抱き合う姿が描かれ、神聖な場面に温かな人間味が感じられます。

🖼️ ピエタ(Pietà)

磔刑の後、十字架から降ろされたイエス・キリストの遺骸を抱く嘆きのマリアをモチーフとしたもの。広い意味での聖母子像とみなすこともあります。

ミケランジェロ・ブオナローティ《サン・ピエトロのピエタ》サン・ピエトロ大聖堂

イタリア盛期ルネサンス期の画家であり、彫刻家・建築家でもあったミケランジェロは、ダ・ヴィンチと同じく万能の天才タイプ。サン・ピエトロのピエタは、ミケランジェロが生涯に複数制作した《ピエタ》群の中でも代表的な一作です。

🖼️ 聖母被昇天(Assumption)

マリアが地上における生涯を終えたのち、肉体と魂を伴って天に昇ったという教義。イエスが自らの力で昇天したのに対して、マリアは神の力で天に召し上げられたので、『聖母、昇天を被(こうむ)る』と、の文字が入ります。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《聖母被昇天》サンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ聖堂

赤と青の衣の強い対比、金色に開く空の光、そして仰ぎ見るような劇的な構図。盛期ルネサンスのイタリア人画家、ティツィアーノによる祭壇画の傑作です。

🖼️ 聖母戴冠(Coronation of the Virgin)

マリアが天上で天の元后(Queen of Heaven)として冠を授けられる場面。イエスがマリアに冠を置くかたちで描かれることもあれば、父なる神、イエス・キリスト、聖霊の鳩の三位一体で戴冠する構図も見られます。

フラ・アンジェリコ《聖母戴冠》ルーヴル美術館

天使の合唱隊や天上の聖人たちが見守る中、イエスがマリアにを授けています。初期イタリア・ルネサンスの画家フラ・アンジェリコによるテンペラの祭壇画。

🎧 アヴェ・マリア

さて、この記事は音楽コラムでしたので、ここで楽曲紹介に入りたいと思います。聖母マリアの絵画をひたすら羅列した言い訳に、というわけでもないのですが、『アヴェ・マリア(めでたし、マリア)』のフレーズを繰り返す、カッチーニのアヴェ・マリアをピックアップします。

※カッチーニ作とされてきたアヴェ・マリアは、現在では、1970年頃にソ連の音楽家ウラディーミル・ヴァヴィロフによって作曲されたことが判明しています。

🎼 カッチーニのアヴェ・マリア

0:24〜 演奏開始
5:02〜 スロバキアの Kostol Božieho milosrdenstva(神の慈しみの教会)の外観

この曲がカッチーニの作品と誤解された経緯を正すのであれば、イネッサ・ガランテの動画を紹介するのが筋なのかもしれませんが、私の好みで、天使の歌声で知られるスロバキアの歌姫、パトリツィア・ヤネチコヴァの歌唱にしました。

こちらは、 スロバキアにおける『七つの悲しみの聖母マリア』の記念年(2014年)に行われたガラ・ベネフィット・コンサート(チャリティ・コンサート)の映像です。私の記事は芸がありませんが、パトリツィア・ヤネチコヴァの歌声は、まさに至芸です。いまさら、私が繰り返すまでもない話ですが。

※この年のコンサートのアンコール曲として、明るく快活な魔笛《パパパの二重唱》が披露されました。


🖼️ 画像クレジット

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《エル・エスコリアルの無原罪の御宿り》:
Bartolomé Esteban Murillo, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコ《受胎告知》:
Fra Angelico, Public domain, via Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》:
Leonardo da Vinci, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, via Wikimedia Commons

ラファエロ・サンティ《小椅子の聖母》:
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《聖母と幼子イエスと洗礼者ヨハネ》:
William-Adolphe Bouguereau, Public domain, via Wikimedia Commons

ミケランジェロ・ブオナローティ《サン・ピエトロのピエタ》:
Michelangelo, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, via Wikimedia Commons

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《聖母被昇天》:
Titian, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコ《聖母戴冠》:
Fra Angelico, Public domain, via Wikimedia Commons

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