【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第6話~
周囲を山々に囲まれた謎の洋館『夢鳥の幽館』。
その1階の大広間では、洋館の主、鳥尾吊士(とりお つるし)が招待客一同を前に、パーティーの趣旨を説明していた。
「皆さまには、本日お越しいただいた際、当館の召使からの案内に基づき、誓約書にサインいただいたものと思います」
「ああ、何かサインさせられたわね。招待状に書いてたからいいですけど」梓が口を挟んだ。
「はい、本日皆さまにお伝えした計画、また後々お伝えするイベントの中には、我々の機密情報に該当するものもございます。従いまして、それらの内容については、何卒口外されませぬよう、秘密保持義務を負っていただく旨の誓約書でございます」
スミレが尋ねた。「ところで、これも招待状に書いてましたけど、どうして館に到着したとき、我々のパソコンやスマートフォンを金庫に預ける必要があったのですか?」
鳥尾は愛想よく答えた。「はい、皆さまにはたいへんご不便をお掛けして、申し訳なく思っています。しかしながら、我々はイベントを通じ、皆さまのリアルな思考パターン、行動パターンをデータ化する必要があるのです。ですから、イベントの最中にスマートフォンなどに気を取られるようなことがあっては、データの正確性に支障が出ますので、お預かりさせていただきました。ですが、ご安心ください。皆さまの貴重な電子機器類は、当館のロッカーで厳重に管理し、その鍵は皆さまに保管いただいております。また、定期的に当館の召使が金庫を定期的に巡回しております。ただ、ご認識の通り、こちらは山奥にぽつりと建つ洋館、周りを山々に囲まれているという環境ですから、外部から賊が訪れるということもありませんがな。……まあ、気を付けなくてはならないとすれば、たまに山から下りて来る手癖の悪いタヌキくらいのものでしょう」
鳥尾が威厳のある態度を若干崩し、軽いジョークを言ったため、招待客たちは意表を突かれ、軽い愛想笑いを返した。
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「私からは最後にもう一点だけ、補足いたします」
鳥尾は再度、みなの注目を惹き付けるように言った。
「先ほどお伝えしましたとおり、本日、当館にお越しいただいた皆さまは、多くの応募者様たちの中から抽選によって厳選させていただきました」。
「そうそう、SNSからいきなりメールもらったんで、最初はビックリしたよ」と、剛が反応した。
「はい、我々はSNSプラットフォームの『note』から、皆さまのご投稿を拝見し、興味深い投稿をされているnoterさま、その中でも、おおよその属性が認識できた方々に対し、広く初回のご案内メールをご送信させていただきました」
「ボク、noteに登録してるメアドって、あんまりチェックしないんで、見過ごすところでした」と武が言った。
「それでも、こうして本日お会いすることができたのは、正にご縁だと思います」と、鳥尾が恭しく返事をし、先を続けた。
「我々は興味のある方々をリストアップし、本日のパーティーへの応募を呼びかけました。残念ながら、何名かの方からはお返事をいただけませんでしたが、皆さま含め、多くの方は我々のパーティーにたいへんご興味を持たれたようで、幸いにもたくさんのご応募をいただきました」。
「あの、質問いいでしょうか?」とスミレが尋ねた。
鳥尾が笑顔で「もちろんです」と答えると、スミレは自分が受け取ったメールをプリントアウトしたものを鞄から取り出し、それを見ながら続けた。「いただいたメールに、『当館で開催されるパーティーにご興味を持たれた方は、ぜひこちらのメールアドレス宛てにご応募ください』とありますが、その後に『ただし、条件として、今回のパーティーには、あなたのパートナーさまにもご同行いただく必要があります』と書いてました。今日、周りの皆さんを見ても、全員2人で1ペアのカップルなのですが、これにはどういった意味があるのでしょうか?」
「実に良い質問です!」と、鳥尾は満面の笑顔で答えた。
「パートナーの同行が必要な理由は、我々のリサーチプロジェクトの目的にあります。異なるカップルの関係や相互作用を観察する、要するに『恋人同士の関係性』にあるカップルと『ご夫婦の関係性』にあるカップルが同じ状況に置かれたとき、カップルごとに思考や行動パターンが分かれるのか……そのような要因を詳細に観察することで、より深いデータを収集することができるのです」
今度はミヤビが質問をする。「武くんからメールを見せられたとき、少し驚きました。でも、面白そうなのでOKしたんです。まさか、本当に抽選に当たるとは思わなかったので、招待状を受け取ったときはビックリしました。ところで、最初の武くん宛てのメールには『応募条件として、あなたのパートナーさまにもご同行いただく必要があります。そのパートナーさまとは、あなたの恋人です。この条件に同意いただける場合、ぜひ招待状の郵送先を添えてご応募ください。当選は、当方からの招待状をもって替えさせていただきます』とありました。これは、武クンに恋人、つまり私がいるということをご存知だったのですか?」
「いえいえ、もちろんそのようなことは存じあげません。我々も多くの方にメールのご案内を差し上げましたが、相手方の属性に応じ、ご同行をお願いするパートナーの箇所は皆さん変えています」
そこで、スミレが疑問を挟んだ。「私が受け取ったメールには、あなたのパートナーさまにパーティーにご同行いただく必要があります。そのパートナーさまとは、あなたの『妹』さんです、とありました。私、SNSにも妹のことは書いたことないので、不思議に思ってましたけど、私に妹がいると知っていた訳ではないのですね?」
「もちろん、存じ上げませんでした」
「じゃあ、もし私に妹がいなかったら、、、」
「はい、その場合は、条件不達成ということで、お見送りとなり、他の応募者の方にチャンスが回っていたかと思います」。
鳥尾とスミレのやり取りに、一同は招待状の受領に至る経緯を思い返し、自分を納得させようとするかのように何度か頷いた。
(🐦つづく🐦)
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