【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第4話~
クセツヨな主、登場!
14時50分になり、『夢鳥の幽館』の各部屋でひと息ついていた招待客たちは、パーティー開始の時間が近づいていることに気付いた。そのとき、洋館の召使がそれぞれの部屋を訪れ、「パーティーの開始時刻が近づいておりますので、これからご案内いたします」と丁寧に声をかけた。
招待客たちは召使の誘導に従い、廊下を進みながら一緒に洋館1階の大広間へと向かった。廊下を歩きながら、健太が召使に尋ねた。「さっき、外で何か有ったのですか?何だか、鳥が随分と騒がしかったようですが」。
召使は健太の方を向きもせずに、「いえ、何も変わったことはありません。私には、特に何も聞こえませんでしたが」と短く答えた。
緊張と期待が入り混じる中、一行は大広間の扉の前まで辿り着いた。そして、扉が開かれると、豪華なシャンデリアが輝き、広間全体が美しい装飾で彩られているのが目に飛び込んできた。大広間の中央には楕円形の細長いダイニングテーブルが配置され、各席には上品なクロスが敷かれており、豪華な銀食器とクリスタルのグラスがきらめいていた。テーブルの上には、花瓶が幾つか置かれ、綺麗にアレンジされた色とりどりの花々が華やかさを添えていたほか、キャンドルスタンドにはロウソクが灯され、暖かな光が広間を包み込んでいた。
壁には何枚かの美しい絵画が掛けられ、豪華なカーテンが大きな窓を飾っており、床は磨き抜かれた大理石で、その冷たさと光沢が広間全体に高級感を漂わせていた。
席は指定されていないようで、招待客たちは感嘆の声を上げながら、自分のパートナーと一緒に思い思いの席に着いた。
剛と真由美は窓際の席を選び、「この眺め、素晴らしいわね」と真由美が微笑んだ。
スミレとリナは、花瓶の側の席に座り、美しくアレンジされた花を愛でている。
健太と明は取材のネタになるかもしれないと、それぞれ大広間を見回したり、カメラの調整を初めている。
ナオミと梓は、招待状に書かれていた内容を思い出し、ワクワクしていた。
15時という時刻もあり、テーブルの上にはビスケットやナッツなどの軽食が入った皿がいくつか置かれ、ほどなくして召使が全員に紅茶を運んで来た。全員が席に着き、広間の雰囲気を堪能しながらも、次に何が起こるのか胸を弾ませていた。
そして、暫くすると、大広間中央の大きな扉がゆっくりと開き、堂々とした姿が現れた。華やかな衣装に身を包み、威厳を漂わせるその人物こそが、この洋館の主であった。
※※※※※
洋館の主は、堂々とした姿で広間に現れ、その威厳と存在感が参加者たちを圧倒した。彼の身長は180センチ前後、広い肩幅と引き締まった体格が印象的だった。全身を纏う黒いベルベットのローブから覗く、ワイン色の襞(ひだ)付きシャツの高い襟が首元を覆い、全身が幽玄な雰囲気を漂わせている。年齢は50代半ばと見え、短く整えられた銀髪が知性と冷静さを漂わせている。
彼の顔は冷静でありながらも、見事な口ひげを結わえた口元に浮かぶ謎めいた微笑は、招待客たちに、海外の推理小説に登場するベルギー出身の名探偵を連想させた。主の銀髪は今、窓から館内に流れ込む風にわずかに揺れ、瞳には鋭い光が宿っている。そして、首から下がるペンダントには鳥の模様が刻み込まれ、羽毛の1枚1枚が再現されているかのような精巧な作りであった。
また、彼の指先には古風なデザインの金の指輪が光り、その指輪には、彼の家系の歴史と伝統を象徴するものか、独特な形状の紋章が刻み込まれていた。その手には、重厚な装飾が施されたステッキが握られており、ステッキの握り部分には、古い銀の彫刻が施され、その中には赤い宝石が埋め込まれている。ステッキの先端には、黒猫と鳥の彫像が付けられており、その鋭い目つきが不気味さを一層引き立てているさまは、洋館の不気味な雰囲気と見事に調和していた。
主は、ステッキを杖代わりにして、足を庇うようにしてゆっくりと招待客たちが座るテーブルに近付いて来た。彼が洋館の中を歩くたびに、ステッキの先端が床に軽く当たる音が大広間に響き渡る。
主が広間の中央に立つと、その静かな存在感は参加者たちの注意を一身に集めた。彼は笑顔を浮かべ、招待客たちを一望すると、一同に歓迎の挨拶をした。
「皆さま、本日は我が『夢鳥の幽館』へようこそお越しくださいました! 私はこの洋館の主、鳥尾吊士(とりお つるし)です。今晩にかけ、皆さまに特別な体験を提供いたしたく考えております。共に素晴らしいときを過ごしましょう!」
彼の声には深みがあり、落ち着いたトーンでありながらも、周囲の空気を引き締める力を持っていた。
「本日は、多くの楽しみと共に、いくつかの驚きが待ち受けています。どうぞ、心ゆくまでお楽しみください」と鳥尾が微笑んで言った。
彼の瞳は鋭く、まるで相手の心を見透かすような深い青色をしていた。笑顔を浮かべてはいながらも、その表情は常に冷静で計算されたもののようにも見えた。顔立ちは端正でありながらも、どこか硬い印象を与え、その姿勢からは揺るぎない自信が感じられた。招待客たちは、鳥尾の声、話しぶり、その存在感に暫し圧倒された。彼の冷静で優雅な態度からは、一筋縄ではいかない秘密が隠されているように感じられた。
何人かの招待客が主を見て、コソコソつぶやく。
「彼がこの洋館の主か。思っていたよりも礼儀正しい人だな。でも、少し勿体ぶった感じもする」と武がミヤビに耳打ちした。「確かに、ただの資産家以上の何かを感じるわね」とミヤビが返した。
一方、健太と明も鳥尾に注目していた。「あの人、何かで見たことがある気がするんだが...…」と健太が言った。「うん、勘違いかもしれないけど、あの顔、どこかで見たような気もするな」と明が答えた。
梓もまた、ナオミに向かってつぶやいた。「あの人、何か怪しくない? ちょっと謎めいてる。人に言えない過去とか抱えたりして」「ええ、彼の目、まるで心を見透かすようだわ」とナオミも警戒心を抱きながら答えた。
立己と麗子はともに言葉を発さず、主のどこか芝居掛かったような動作を目で追っていた。
招待客たちの多くは、鳥尾の存在に対するそれぞれの感想を小声で交わしながら、彼の言葉に耳を傾けた。広間には、招待客たちのつぶやきがささやかなノイズとなって響いていた。
