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日本のモノづくりは、なぜ若者に「スルー」されるのか?-外国人材は救世主なのか…-採用広報のプロが現場へ向かう理由-

日本のインフラを根底で支える、地方の中堅・中小製造業。しかし、その採用現場はかつてないほどの苦境に立たされています。データを見る限り、それはもはや「絶望的」とすら言える状況です。

なぜ、日本の優れたモノづくりは、次世代を担う若者たちからスルーされてしまうのでしょうか。

今回、私は一つの調査プロジェクトを立ち上げることにしました。本稿(前編)では、私が現場へ向かう理由となる「残酷なマクロデータ」と、そこに潜む「大いなる矛盾」について紐解いていきたいと思います。


無理ゲー。データが示す残酷なマクロの現実

学生1人を9社で奪い合う。理系人材はもはや「絶滅危惧種」か。

中小製造業が理系学生や若手を採用することが、いかに厳しい戦いになっているか。感情論を一旦横に置き、冷酷なデータ(ファクト)を並べてみます。

第一
「理系人材のパイ」が国家レベルで圧倒的に不足している事実。

文部科学省のデータ(*1)が示す通り、少子化に加えて理工系進学者の割合は伸び悩み、全産業がAIやDX化に向けて数少ない理系人材を血眼になって奪い合っています。

文部科学省:理工系人材育成戦略資料より
文部科学省:理工系人材育成戦略資料より

第二
若者の現実的でシビアな「安定・待遇志向」へのシ
フト。
就職人気ランキングの過去30年の推移(*2)を見れば一目瞭然ですが、平成初期に上位を占めていたメーカーの姿は減り、現在は文系・理系問わず「IT・通信」「コンサル」「総合商社」などの無形商材、あるいは誰もが知る「超巨大グローバルメーカー」に人気が一極集中しています。

ダイヤモンド社 ダイヤモンドオンライン記事:「15年前の理系の「就職人気ランキング」今と違いすぎて愕然とする…」 

また、最新のマイナビの調査(*3)によれば、学生の企業選びの基準は「安定している会社(51.9%)」が初めて5割を超え、「給料が良い」という回答も4年連続で増加しています。

マイナビ キャリアサーチLaB:2026年卒大学生就職意識調査

彼らは単純に「大きなブランドだから」という理由だけで大手を選んでいるわけではありません。事実、初任給を引き上げるなど待遇を見直した中小・中堅企業には、しっかりと学生が流れる傾向も確認されています。

中小企業志向が増加。初任給引き上げが中小企業に波及したことが影響した可能性。大手企業志向は2年連続で半数を超えるも前年比微減

マイナビ キャリアサーチLaB:2026年卒大学生就職意識調査より
マイナビ キャリアサーチLaB:2026年卒大学生就職意識調査

理系学生や若者はモノづくりが嫌いになったわけではなく、「知名度のない企業に行くリスク(失敗)」を極端に恐れ 、不確実性のない「安定と実利」を何よりも求めているという、ドライで賢い現実があるのではないでしょうか。

これらの結果が、現在起きている「大手と中小の絶望的な求人倍率の格差」に繋がっています。

リクルートワークス研究所の最新の調査(*4)によれば、従業員5,000人以上の大企業の求人倍率は「0.34倍(学生3人に対して1つの枠)」という買い手市場。一方、300人未満の中小企業は「8.98倍(学生1人を約9社で奪い合う)」という異常事態に陥っています。

リクルートワークス研究所:ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)

データを見る限り、無名の中小製造業が若手人材をマスで採用することは、構造的に「ほぼ不可能(無理ゲー)」であると言わざるを得ません。


「データ(絶望)」と「現場の実力」の強烈な乖離

決してオワコンではない。隠れた覇者が、隣のラスボスに挑む戦い。

私はこのマクロなデータだけで「地方の中小メーカーは選ばれない(オワコンだ)」と結論づけることに、強い違和感を覚えます。なぜなら、中小メーカーの「実力」は決して死んでいないからです。

経済産業省が選定した「グローバルニッチトップ企業」(*5)のデータを見ると、世界市場で戦うこれらの企業の半数以上は、実は中堅・中小企業です。

経済産業省:グローバルニッチトップ企業100選2020年版 抜粋

中小メーカーの平均世界シェアは43.4%、平均営業利益率は12.7%にも上ります。BtoB(製造装置や電子部品など)の世界市場では、日本の名もなき中小メーカーが圧倒的な覇権を握り、驚異的な利益を叩き出しているのです。

私が今回、調査の対象として注目している「相模原・多摩(八王子等)エリア」も例外ではありません。 このエリアは製造品出荷額で見ても日本有数の「モノづくりの心臓部」であり、世界トップレベルの精密機械やロボット関連のハイテク中小メーカーが無数に密集しています。

これだけの技術力と稼ぐポテンシャルを持ちながら、なぜ実力のある中小メーカーは若者に選ばれないのか 。

若者が「安定と待遇」を重視し、条件次第で中小にも目を向けているのであれば、驚異的な利益を叩き出している「隠れた覇者」たちは、本来もっと若者から選ばれていいはずです。

ただ、採用市場という側面から見ると、相模原・多摩(八王子等)のエリアは、日産自動車や富士通といった「超巨大なラスボス(超大手ブランド)」の関連がひしめく、日本一残酷な採用の激戦区でもあります。


誠実な自己開示:私が真に知るべきこと

広報のプロとしての「知ったかぶり」とスマートな机上の空論を捨てる。

25年以上、採用広報のプロとして企業の魅力化に取り組んできた目から見れば、「なぜ選ばれないのか」という見せ方のバグ(機会損失)はある程度推測できます。

たとえば、若者が極端に恐れる「配属ガチャ」や「キャリアの不透明性」といったブラックボックスを放置し、現代の若者がシビアに求める「安心」を提示しきれていないことが、このすれ違いの一因でしょう。

しかし、どれほどデータを繋ぎ合わせても、それだけで真の解決に至ることはありません。安全なデスクの上で構築したロジックだけでは、企業の根本的な魅力化は不可能です。

私が知るべきは、相模原や多摩といった激戦区の最前線で、経営者や工場長たちが実際にどんな壁にぶつかり、どんな葛藤を抱えながらモノづくりと向き合っているのか。「データでは絶対に測れない、泥臭いモノづくりの魅力と摩擦」です。


だから、「現場」へ行く

答えはデータの中ではない。現場の駆動音と汗の中にしかない。

机上のマクロデータに答えはありません。だから私は広報の知見を一旦置き、現場の泥臭いリアルを「教えてもらう」ための調査プロジェクトを立ち上げました。そのプロジェクトの一つのテーマに外国人労働者も含んでいます。

なぜなら、「日本人の若者が無理なら、外国人材を」と考える企業も存在するからです。しかし、外国人材もデータを紐解けば「大いなる幻想」となるリスクをはらんでいます。

次回の【後編】では、私がモノづくりの現場へ行きたい、個人的で熱苦しい理由とともに、外国人材市場の幻想とそこに潜む「一筋の光」について分析します。

(次回 後編】「外国人材と若者に、日本のモノづくりの熱をもう一度へ」続く)


【参考データ・引用元】

*1. 文部科学省「理工系人材育成戦略」(現状の課題とパイの不足)
*2. HR note「就職人気ランキングの順位変動を30年分まとめてみた」
*2.ダイヤモンドオンライン
15年前の理系の「就職人気ランキング」今と違いすぎて愕然とする…

*3. 株式会社マイナビ「2025年卒 大学生就職意識調査」
(理系学生の大手志向)

*4. リクルートワークス研究所「第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)」(企業規模別の格差)
*5. 経済産業省「2020年版 グローバルニッチトップ企業100選」



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