外国人材と若者に、日本のモノづくりの熱をもう一度。-データには映らない魅力と希望の現場に会いに行く理由-
前編では、理系人材の枯渇と若者の大手志向により、地方の中小製造業における日本人採用が「無理ゲー(絶望的)」と化しているマクロデータを提示しました。
では、この絶望的な状況を打破する一手をどこに求めるべきか。
経営者の中には、「日本人が採れないなら、優秀な外国人材(留学生)を採用すればいい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
本稿(後編)では、外国人材採用の期待に潜む「幻想」と、データを細分化することで見えてくる「一筋の光(活路)」について分析します。
そして最後に、私がなぜこのモノづくりの現場に行かなければならないのか、個人的で少し熱苦しい理由をお話しさせてください。
外国人材市場における「三重の絶望」
「日本人が無理なら外国人を」という、幻想。
全編に続いてデータで紐解いてみます。すると「外国人留学生なら中小企業に来てくれるかもしれない」という期待は、残酷なほど打ち砕かれます。
■第一の現実:
外国人採用の勝者は結局「巨大グローバル企業」
まず、Guidableの「外国人採用に強い企業ランキング」(*1)の上位に並ぶのはメルカリ、Google、パナソニック、トヨタといった世界的な知名度を持つ巨大企業です。 さらに、求職者側の視点で見ると2023年のデータですが、「在留外国人が働きたい企業ランキング」(*2)では、1位のトヨタ自動車、2位の楽天グループをはじめ、アマゾンやアップルなど、誰もが知る巨大メーカーやグローバルIT企業が上位を独占しています。

■ 第二の現実:
優秀な層ほど「グローバルIT・コンサル」へ流出する
また、CFNの「海外大生が選ぶ就職希望企業ランキング」(*3)でも、アクセンチュアやKPMGなどのグローバルIT・コンサルに人気が集中しています。キャリタスの調査等の定量データ(*4)と照らし合わせても、実は優秀な外国人材もまた、日本人と同様かそれ以上に「圧倒的な大手・ブランド志向」であることが分かります。

日本企業に限らず、就職したい企業の規模を尋ねた。「業界トップ企業」(26.3%)と「大手企 業」(50.0%)を合計すると 7 割強に上る(計 76.3%)。国内学生(日本人学生)の計 61.6%と比 べて約 15 ポイント高く、外国人留学生の大手志向の強さが表れている。日本にある企業になじみ が薄い分、まずは知名度の高い業界トップ企業群に目を向ける留学生も少なくないと見られる。
■ 第三の現実:
外国人材を支配する「孤立への恐怖」と「実利・安全志向」
なぜ彼らは大手に固執するのか。キャリタスの最新調査(*4)からは、その切実な本音が見えてきます。
彼らが企業選びで重視するのは「給与・待遇(48.0%)」などのシビアな実利です。同時に最も恐れているのが「日本語が通じるか(50.0%)」「人間関係をつくれるか(39.2%)」といった、異国での孤立です。さらに「年功序列」や「過度な日本語要求」といった古い体質には強い警戒心を示しています。


つまり彼らの大手志向は、「孤立リスクの回避」と「フェアな評価」を求めた極めて合理的な防衛本能だと考えることができます。実態が見えない不透明な環境は、リスクの塊でしかありません。
「日本人学生が採れないから、代わりに外国人材を」という安易な期待は、彼らのこのドライで賢明な現実認識の前に、完全に打ち砕かれることになります。
分析視点:留学生市場に潜む「2つの分断」
留学生と一括りにするのは早計。市場は明確に分断されている。
しかし、ここで思考を止めてはいけません。データをさらに細かく分解していくと、「留学生」という一つの塊の中に、全く異なる2つの市場(分断)が存在しているように見えてきます。
■ 「市場A」:
超大手企業が奪い合うレッドオーシャン
一つは、データから浮かび上がる「市場A(大手の主戦場)」です。有名大学に在籍する中国・韓国などの東アジアや欧米出身者の中で、「N1(ネイティブレベル)」の日本語力を持つ層。この層は日本人トップ学生と同様、超大手企業が資本力で根こそぎ奪い合います。
■ 「市場B」:
大手の網から漏れる「隠れた宝の山」
一方で、JASSO(日本学生支援機構)の在籍データ(*4)や文部科学省を紐解くと、大手の網から漏れている「市場B」の存在とその巨大なボリュームが浮かび上がってきます。

例えば、日本の技術を貪欲に吸収したいと願うアセアンや新興国の理系層。技術力はトップクラスなのに、東京での就活に出遅れがちな地方国立大の理系院生。あるいは、専門スキルはSクラスなのに「日本語がN3レベル」であるために、極端に高い日本語能力を求める日本の文系的な面接で落とされる層です。
■ 地方中小メーカーが向かうべき「活路」
留学生市場は「言語と立地、そしてブランドの壁」によって明確に分断されていると推測されます。だとすれば、地方の中小メーカーにとっての活路は、大手のレッドオーシャンを避け、この「市場B」の層に的を絞って出会い直すことにあるのではないでしょうか。
机上の空論と、私の「原体験」
■ 若者のせいではない。熱を伝えきれない、大人の責任。
※ここから少し個人的な想いをつづります。
私は25年以上の採用支援の中で、数百社の企業様と出会ってきました。求人誌がメインだった頃の現場には、どんな仕事であれ、泥臭くも「人間らしいウェットな働く理由」と「企業の熱」を感じていました。
でも、時代は変わり、私自身もいつしかデータに頼り、採用効果の数字を追うあまり、働きやすさ、オンオフの充実など「耳障りのよい広報」へと傾倒していったように思います。
私が10年以上にわたって毎年行う就活生インタビューで、数年前から聞こえてくるのは「安定」や「ホワイト」という言葉ばかりです。それに寂しさを感じつつも、決して若者だけに罪はないという気持ち(後ろめたさ)もありました。
それは、彼ら若者がリスクを恐れざるを得ない社会を作り、仕事の純粋な「熱」を提示できなくなったのは、我々大人の責任だからです。
だから私は、「現場」へ行く
答えは冷たいデータの中ではない。現場の駆動音と汗の中にしかない。
日本のモノづくりの「熱」は決して死んでいない。現代の若者や外国人材が安心できる言葉に翻訳されていないだけだと、私は信じています。
私が外国人採用に取り組む理由もそこにあります。彼らの姿に、かつての日本就職市場にあった、働く理由や背景のウェットな熱を感じるからです。
また、NHKの『魔改造の夜』という番組では、純粋に技術の限界へ挑み、結果に涙する日本のエンジニアたちの姿があります。『ロボコン』では、目を輝かせる日本の若者やアジアの若者たちがいます。昔、私が求人広報のイロハを学んだリクルート社発行の、日本各メーカーのプロジェクトを取り上げた『モノづくりbook』に溢れていた、仲間と衝突しながら技術に想いを懸ける純粋なドラマやストーリー。あの熱は、いまの日本にも必ず存在しているはずです。
机上のマクロデータに答えはありません。だから私は広報の知見を一旦置き、一人の「採用広報の研究者」として基本に帰り、激戦区である相模原や多摩の製造業の現場へ、泥臭いリアルを「教えてもらう」ための調査へ向かいたいと考えています。
日本のモノづくりの最前線で、いま何が起きているのか。現場からのリアルなレポートを、どうかお待ちください。
【参考データ・引用元】
*1:ガイタルジョブズ 【2026年】外国人採用に強い企業ランキング
*2:@DIMEアットダイム 在留外国人が最も働きたいと思う企業
*3:日本人事ニュース 海外大生が選ぶ就職希望企業ランキング
*4:キャリタス就活 2025年卒 外国人留学生の就職活動状況に関する調査
*5:JASSO(日本学生支援機構)令和6年度外国人留学生在籍状況調査結果
*6:文部科学省 日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況」
