好きだったレトロな洋食屋さんから、静かに離れた理由
【注意書き】
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本記事は、私の個人的体験に基づくエッセイです。
この記事には、私が特定の文化背景を持つ人に対して個人的に抱いた違和感についての記述が含まれます。
これは民族全体への批判ではなく、あくまで私個人が感じた価値観の違いです。
差別的な意図は一切なく、ただ自分の気持ちを整理するために書きました。
それでも不快に思われる方がいるかもしれないので、画面を閉じることをお勧めします。
予めご了承ください。
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もう数年以上前のことになるだろうか。
当時住んでいた街に昭和レトロな小さな洋食屋さんがあった。
出入り口から離れた道路脇にお店の看板メニューが置かれていた。
私は「ドライカレーセット」が気になってはいたけど、店内の様子が外からはうかがえないため、ドアを開ける勇気が持てなかった。
ある日、残業で帰宅が遅くなりお腹がペコペコだった。
ふとその店の前を通りかかり、空腹の勢いでドアを押し開けた。
「カランコロン」と鈴の音が鳴り、白熱灯の温かな光が私を迎え入れた。
店内はテーブル席とカウンター席があり、テーブルはグループ客で賑わっていて私はカウンターに案内された。
60歳くらいの細身でスタイルの良い女性が「どうぞ」と言いながら、笑顔で席へ導いてくれた。
私は席に着くなり早速「ドライカレーセット」を注文。出てきたカレーは濃厚かつスパイシーでとても美味しかった。
食べていると、そのスタッフさんが話しかけてきた。「お住まいは近くなんですか?」「お仕事帰り?」
他愛もない会話からいくつかのことが分かった。
スタッフさんの名前は春子さんでお店のオーナーということ、お店を始める前は美容師として働いていたこと、幼少期から長年バレエを習っていたこと、夫を早くに亡くし一人で娘を育て上げたことなど。
立ち振る舞いが優雅で、なるほどと思った。
そのやりとりが楽しくて、これをきっかけに私はお店に通うようになった。
お店は常連とオーナーの距離が近く、カウンター越しでいつも賑わっていた。
私もオーナーの春子さんや常連さん達と打ち解けていき、頻繁に通うようになった。
春子さんと話しを重ねるうち、彼女の家系が独自の価値観や伝統を大事にしていることがなんとなく伝わってきた。
彼女には私と同世代の千春さんという娘がいた。彼女は特殊なコミュニティの学校に通っていたらしい。
その娘さんは明るくて初対面でも気さくに話しかけてくれるタイプ。
最初は少し勢いに圧倒されたけれど、ユーモアがあって話しているうちにすぐ打ち解けることができた。私は2人と連絡先も交換した。
しばらくして「オープン5周年記念でイベントを開くから来ない?」と春子さんから誘いがあった。私はOKの返事をした。
当日、店に着くなり私はテーブル席に案内された。既に招待されたお客達が集まっていた。彼らは千春さんの元同級生だった。
最初はごく普通の世間話をしていた。
そのうち政治やニュースの話題に移って、テレビでよく取り上げられる国の話になった。
「ニュースで悪く言われがちだけど、メディアの報道が偏っているだけでそんなに悪い国じゃないよ。」と、向かいに座っている人が話し出した。私は内心かなり驚いた。
私の中ではその国=かなり問題が多いイメージが強かったから、意見が180度違って戸惑った。
もちろん人それぞれ考え方は違うのだけど、その温度差に「ここまで価値観が違うんだ…」と初めて実感した。
そして彼らと話すうちにもう1つ分かったことがあった。
コミュニティ間の横の繋がりが強いということだ。彼等はその中で出会いを探し、お付き合いをし、結婚に至るのだ。
仲人業に携わっていた知人から、こんな話を聞いたことがある。
「あの家系の人とお見合いを申し込む日本人って、ほんとに少ないんだよね。」
それで、彼らの出会いがコミュニティ内で完結しやすい理由がなんとなくわかった気がした。その横の繋がりの強さに、良い意味でも悪い意味でも驚いた。
さて、料理はといえば出されたメニューに対し料金が高いと感じた。前菜の次はメインディッシュがどーんと出るかと思いきや、ちまちました大きさのメニューが何品か出されるだけで食べ足りなかった。イベントだから仕方ないかなと思ったけど、少しガッカリした。お店を後にし、私は帰路に就いた。
途中コンビニに寄っておにぎりを買った。
冬になり師走の時期になった。
いつものようにお店で食べていると、春子さんからクリスマスイベントのお誘いがあった。なんの予定もなかったので私は参加することにした。
なぜか春子さんは張り切っており「せっかくだから出し物をしてくれない?」と頼まれた。
私はやんわりと断った。
数日後、お店に行くとまた出し物をして欲しいとお願いされた。
「○○さんは歌を歌ってくれるって〜!あなたは何をしてくれるの?」と。千春さんは横で「うちの母は押しが強くてね〜」と笑っていた。いやいや、分かってるならなんとかしてよと内心思った。
挙げ句の果てには出し物を強要するメッセージがスマホにまで届いた。
私は気が重くなり、この時点でやはり参加はしないと決めた。春子さんにもその旨を伝えるメッセージを送った。
すると何が言いたいのかよく分からない返信が届いた。今となっては記憶が曖昧だが以下のような内容だ。
「数日前にキャンセルするのは良いけど、代わりが見つかるか不明」
「限られた席しかなくそれに合わせて招待してる」などが書かれていた。
母に見せると「嫌味ではないか?」と言われた。同僚に見せたら「言い方が日本人ぽくない」とのこと。
その時はまあいいやと気に留めなかった。
クリスマスイベントの翌日、私はランチを食べにお店に行った。店内に入ってみるとビックリ。春子さんの顔がプリントされたポスターが壁一面に貼ってあったのだ。
ソファに置かれたクッションにも春子さんの顔がプリントされていた。それを見た瞬間、パリス•ヒルトンを思い出した。いや、パリスはまだ若く?美しい。春子さんも美しいが還暦を迎えたくらいの年齢だ。正直私は少し引いてしまった。
季節は春になった。
仲の良い常連 Aさんのお誕生日会をお店で開くことになった。皆で食べたり飲んだりしょうもない話で盛り上がった。
その頃には私もすっかり常連の顔になっていた。
あるときから、注文の際に「今日は卵多めでいいですか?」とか「ソースちょっと多めにしてもらえます?」など、遠慮なくリクエストをするようになった。
春子さんも「いいよいいよ」って笑って聞いてくれた。自分で勝手にカスタマイズしてる感じが楽しかった。
また、春子さんの方でも接客が最初の頃に比べてフランクになっていた。
注文と異なる料理やお酒を出しても何も言わずに下げることもあった。
話の途中に、押しの強いアドバイスをすることもあった。娘と同世代だからか、色々とアドバイスをしたくなるのだろう。
ある時は、私が同世代の常連Bさんに気があると勘違いし、セッティングの場を設けようとしたこともあった。
春子さんには世話焼きな一面もあった。
またある時は、注文を促すような仕草もあった。さあ、次は何を食べる?とメニュー表を目の前にパッと広げてきた。
売上を上げたい、そんな気持ちをふと垣間見たような気がした。
話は戻り、 Aさんのお誕生日会で私はホットケーキを注文した。本来ならバターが乗ったホットケーキを出されるが、私は「追加でハチミツをかけて欲しい」とお願いした。
会計時、娘の千春さんに「最近リクエスト多くてわがままだよ。もう来なくて良いから。」と軽く冗談混じりで言われた。
なんとなく本気も混じってる気がして少しドキッとした。この時、私は自分がいい気になっていたことに気づいた。
2週間後、仕事帰りに私はお店に顔を出した。いつもの笑顔で春子さんは迎え入れてくれ席に着くなり注文した。
食べている間、私は春子さんとの会話を楽しんでいた。千春さんは最初から私に目もくれなかった。
「あぁ、避けられているんだなぁ」とモヤモヤした。
自分が勝手にそう感じただけかもしれないけど、少し距離を意識した瞬間だった。
しばらくして、仕事帰りにお店の「ドライカレーセット」が食べたくなった。どうしようと迷いもあった。
「あの時から時間も経ってるんだから。」
私は勇気を出してお店のドアを開けた。
その日は春子さんの姿はなく、千春さんとアルバイトのスタッフでお店を切り盛りしていた。店内は常連やグループ客で賑わっていて、忙しそうだった。
カウンター席に座っている常連さん達が私を見るなり「久しぶりだね〜」と声をかけてくれた。
ホッとして空いてる席に腰を下ろした。
腹ペコだったため、いくつか適当に注文した。閉店まで常連さん達とおしゃべりを楽しんだ。
家に帰りシャワーを済ませてからスマホを見ると、千春さんからメッセージが届いていた。
「元気そうで良かった。」
きっと千春さんはあの時、「悪いことをしちゃった」と思ったのかもしれない。
この頃にはお店から足が遠のくようになっていた。外食ばかりにお金を使うのはやめて、将来の為に貯金しようと思ったからだ。
もう1つ理由がある。
常連Cさんが苦手だったからだ。Cさんの高圧的な雰囲気や、人間性がどうも好きにはなれなかった。
半年が経った。
その間はいろいろなことがあった。
身内に子供が産まれたり、私が体調を崩したり。幸い命に別状はなかったものの、定期的な通院は余儀なくされた。
その日は仕事が休みだった。
お昼は何を食べようかな〜と考えていた。
ふとお店のことを思い出し、久しぶりに足を運んでみようと思った。
春子さんも千春さんも私を見るなり
「あら久しぶり〜」と笑顔で声をかけてくれた。店内は混雑しており2人ともバタバタとせわしなく動いていた。
春子さんは相変わらず若々しくはつらつとしていた。
それから半月後、ランチをしにお店を訪れた。
平日のせいかお客も少なくテーブルに2人の女性が座っていた。
千春さんとアルバイトスタッフでお店を回していた。
私はカウンターに座り注文した。
ご飯を出され黙々と食べ始めた。
程なくしてこれから出勤なのであろう、春子さんがお店に現れた。
私の横でエプロンをつけながら「あぁ来てたのね」とぼんやりとした様子で言った。
カウンター越しに春子さんと最近の話をしていた時、私が最近体調を崩して病院に通ってることを何気なく伝えた。
すると春子さんが真顔で、ちょっとキツい一言を返してきた。
悪気はないのだろうけど、予想外の反応に内心驚いて、笑ってごまかした。
食べ終わるなり、私は席を立ちお会計をした。
ドアを開けると、冷たい秋風が私の頬をくすぐった。
「カランコロン」、鈴の音を聞くのはこれが最後となった。
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