見出し画像

社長が教えてくれたこと14:褒めるのは陰で、叱るのはその場で

※この物語は、半分フィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

先月、総務部に入社した清水と食事をした。
同年代の彼とは、話も弾んでとても楽しい飲み会になった。
流れの中で、部下の石田の天然エピソードを話すと清水も大笑いしていた。
「ホントに困った。何とかなって良かったけど」などと、たわいのない話をしながら食事をした。

その飲み会から、しばらくして、石田が「話がある」と声をかけてきた。
いつも元気な石田が深刻そうだったので、私は会議室に誘った。

石田が俯いたまま話を始めた。
「昼休みに総務の田中と食事をしていて、小泉さんが、陰で私の悪口を言っていると聞きました……」
「悪口?私が?言ってないよ!何で?」と、私は驚いた。
「でも……」とつぶやく石田を見て、私は「誤解をされたくない」と、総務部の田中に会議室に来てもらった。
話を聞くと、清水との食事の時に話した石田の失敗談に尾ひれがついて、『私が手を焼いている』という話になっているようだった。
すぐに清水を呼んで、私がどんな話をしたのかを説明してもらった。
そして、誤解をさせて、嫌な気持ちにさせた石田に謝ると、石田は私の謝罪を受け入れてくれた。
「笑い話がこんな事態になるとは……」と、言葉の重みを痛感した。

夕方、江川社長にこの出来事を報告すると、社長はゆっくり語り始めた。
「私は『人を褒めるなら、本人のいない所で。人を叱るなら、その場で、本人のいる所で』とよく話をしています。
誰でも、人に褒められるのはとても嬉しいことです。『良くやった!』『ありがとう!』とか、言われたら誰でも嬉しい。
でも、もっと嬉しいのは、その感謝の気持ちを、直接ではなく誰かを通じて言われることです。
例えば、『この前、〇〇さんがあなたを褒めていたよ』や『助けてあげたんだって?すごいね』と伝えられると、直接言われる以上に嬉しいですよね?」
私は「そうですね。確かに」と答えた。
すると江川社長は頷いて、笑顔で話を続けた。
「面と向かってお礼を言われたり、褒められるのは、もちろん嬉しいですが、誰かを通じて伝えられた感謝の言葉は、もっと嬉しいものです。
でも、逆はどうですか?『あいつは、ダメな奴だ』とか、陰でそんな話が伝わってきたら、直接言われるより、もっと深く傷つきますよね?」
「でも、私は陰口ではなくて、軽い冗談のつもりで言ったのですが」
私の口調は少し強くなったが、社長は笑顔で続ける。
「わかりますよ。ただ相手に対するプラスの感情は伝わりにくく、マイナスの感情は10倍になって伝わる。それは前に話しましたね」
確かに、笑い話のネタとして石田の話をしていた。
それは愛情やリスペクトではなくて、マイナスの感情として伝わるだろう。
私は「はい」と、小さく頷いた。

「言葉は、使い方や伝え方を間違えると、相手を傷つけ、関係を壊します。
その場にいない誰かの話をするなら、その人の良い話をしてください。
あなたは石田さんの良い所を、たくさん知っているでしょ?
それを他の人に教えてあげてください。
小泉さんには、みんなを幸せにする言葉の使い方、伝え方をして欲しいですね」

社長室を出た私は、もう一度、石田に謝った。
すると石田は「じゃあ、今夜は清水さんと行ったっていう美味しい焼き鳥屋に連れてってくださいよ!」と、いつもの笑顔で帰り支度を始めた。
石田の良い所を、また1つ、見つけたような気がした。

続きはこちら▼

いいなと思ったら応援しよう!

tak! 褒められて伸びるタイプです。よろしければ応援お願いします!

この記事が参加している募集