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祖母のネックレスが似合う年になったと気づいた日

そのネックレスは、20年間、クローゼットの奥で眠っていたーー

年末に断捨離していた時のこと。

クローゼットの奥の奥にしまってある、開かずの箱の中から、
祖母が海外旅行のお土産で買ってきてくれたネックレスに、久しぶりにご対面した。

もらったばかりの20代後半の私には、野暮ったくて、ババくさいとしか思わなかったのに、
今見ると「あら、素敵じゃない」と胸がときめく。

20年経ち、私もこのネックレスに相応しい年になったことを実感するとともに、
急に、歴史教科書一冊で紹介できてしまう人類の歩みの中の、
その行間にギュッと捩り込まれたような感覚がした。

そんな壮大な時間の流れを、小さなネックレスから感じたのは、
きっと久しぶりに祖母と対面したような、
ノスタルジックな気持ちになっていたからだと思う。

石の色は紫で、結構ゴツい。
華奢なアクセサリーが似合うお年頃には、
塩沢ときさんが付けてそう…と、思ってしまった。






私が片づけられるのは祖母のおかげ


好みでは無いネックレスを、捨てずに取っておいたのは、
「奮発しちゃった」
という祖母の一言があったからだ。

気に入らない上に高価な代物なんて、
「箪笥の肥やし駅行き」のチケットを切らざるを得ない。
肥やしが増えるたびに、心に小さな文鎮が少しずつ置かれ、
知らず知らずに歪んでいくものだ。

祖母はおしゃれな人だった。
戒名にも「彩」という文字が入るくらい、村では華やかな存在だった。
出かける口実を作っては服を買い、
その割には捨てることはせず、増えた分だけ箪笥を買う。
200平米はある、ど田舎の平屋には、閉まらない箪笥がずらりと並ぶ。

「買ったら捨てるルーティンを怠るべからず」という高札を、
私が胸の中に立てられたのは、間違いなく祖母のおかげだ。






父母の違いすぎる反応


祖母は、整理のセンスは皆無だが、ファッションセンスは良かった。
このネックレスも、「蚤の市で買いました」と言えば通用するデザインだ。

ふと、どこで買ったんだろうーー
ノスタルジーついでに、祖母の軌跡を追いたくなった。

ジェミニさんに聞いてみたら、
「石はアメジストで、スコティッシュ・コスチュームジュエリーという工芸品の可能性が高いです。」
とのこと。

実家に帰ったついでに、かつての息子だった父に見せてみた。

すると、「イギリス、フランスのツアーに行っていたから、そこで買ったのかもよ」と、
祖母を神輿に担がんばかりに大切にしていた父は、嬉しそうに目を細めながら、まじまじと紫の石を見入っていた。

さすがジェミニさん、大当たり!と喜んだのも束の間。

かつての嫁だった母は、「私には買ってきてくれなかったのにね。」と、石を遠巻きで見ながら冷ややかに言った。

ノスタルジーに浸る予定が、思いもよらない20年前の古傷を甦らせてしまい、拍子抜けする。
「そういえば、〇〇さん(兄の嫁)に昔あげたネックレス。
付けてるの見たことないから返してくれないかしら。」

ネックレスつながりで、必要ない古傷まで、遠方からわざわざ呼び起こしてきた。

血の繋がりが無いと、打算的になってしまうものなのかもしれない。
嫁姑問題も、教科書の行間どころか、一文字一文字の隙間にまで、これでもかと詰め込まれていることだろう。

雪すごかったですね❄️
当日は入試ではなくて、うちはラッキーだったけど、
ドンピシャだった子達と親御さんのご心労を思うと胸が痛かった。
そんな日々の中でも、
街の至る所に、子供たちの作品が見られてほっこりする。





思いもよらず知れたアイデンティティ

昔から、思ったことを全て言葉にする祖母と、世界中の不幸は、全部自分に降り注ぐと思い込みがちな母は、正反対の性格だった。

確かに過酷な嫁時代ではあったが、祖母はそもそも誰に対しても、歯に衣着せぬスタンスで臨んでいた。

「おばあちゃんが喜ぶから、いつでも電話してあげてね。孫の声は、いつだって聞きたいものなんだから。」と母が言うので、
暇なときに世間話でもするかと思い、掛けてみたら、
「で、これは何の用件の電話なの?」と、にべもなく言い放たれたことがあった。

イヤミとか、意地悪とかの攻撃的意味合いではなく、ただ単にオブラートに包まないだけ。
それも、みんなに。

そんなあっけらかんとした人でも、私の祖母だ。
デリカシーのなさは、脈々と私の中にも流れ、
夫につい口走る素っ気ない一言の中に、祖母味を感じることがある。

母味もあるので、夫の行動を悲劇的に捉えがちだけれど、
祖母の面の皮の厚さも持ち合わせているために、夫婦の問題も乗り越えられたんじゃないかなと、
ネックレスの裏取り調査をしながら思った。


休日に、お弁当の作り置きを冷ましながら、
ついでにそのままキッチンで昼食を食べる。
基本的に料理はあまり好きではないのは、
間違く祖母の血。
そのまま、歯磨きもキッチンでしてしまうズボラさも。






一つ増えたお守り


富雄丸山古墳から発掘された蛇行剣により、古代の人々の想いが蘇るように、
ネックレスの出現によって、私のアイデンティティが少し解き明かされた気がする。
そう思うと、クローゼットの奥に押し込まれた祖母に、「そろそろ出して」と呼ばれたのかもしれない。

自分は服達を箪笥に押し込みまくってたくせに。
なんとも祖母らしい様子に、クスッと笑ってしまった

アクセサリーって、くれた人の想いが宿っているように思えてならない。
このネックレスを付けていると、祖母が私の心の皮に、保護膜を何重も厚く塗り混んでくれる気がする。

これでお守りが一つ増えた。
娘の受験の時は、夫、父母、母方の祖母からもらった指輪と一緒に、ネックレスも付けて見送ろうと思う。
人生の岐路に立つ娘を、きっとご先祖様たちがミラクルパワーで守ってくれる。
そんな気がしている。



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