バルドー姉さんの新作小説を待ちわびながら読みたい漫画3選

その1『金剛寺さんは面倒臭い』全7巻
とよ田みのる/サンデーうぇぶり
テーマ:自分の人生の主人公は自分だ!!!
バルドー姉さんって活動が多面的でつかみどころがなくて、ある種の都市伝説的存在に思えるんですよね。
でも一つ、確信をもって言えるのは、彼女が書く小説は面白い、ということです。
とくに最初に読んだ小説『蚊と蠅の恋愛』前編/後編には、魂もってかれましたね。
“バルドー姉さんというキャラクター”からは想像つかない導入は、
「一体ぜんたい俺は何を読まされているんだろう??」
という困惑とニヤニヤがないまぜとなる読み心地。
過去と現在、虫と人の意識を往還するシークエンスから、ラストシーンの最後の一文まで濃厚に詰まった情動に、『金剛寺さんは面倒臭い』に通底する世界観を感じたんですよね。
だから、バルドー姉さんの新作を待ちわびつつ読む漫画としてはこれが最適解。
バルドー姉さんが放つ“自分の人生の主人公は私だ!!!”という強烈なパルスを受け止められるのは金剛寺さんくらいしかいないし、金剛寺さんならバルドー姉さんのエロスもタナトスもまるっと理解して肯定できる精神の強さと繊細さがあるので。
主人公の金剛寺さんとパートナーである樺山くん二人が、幾多の輪廻を経てこの世界に誕生し、成長し、出逢い、結婚子育て教育(途中、手をつなぎ、チッスをし、抱き合って、セックスをするたびに世界の破滅を救ったりしながら)老後を経て死別し、やがてあの世で再会するまで、そのすべての瞬間において幸せの絶頂が更新されていく様を描き切ってなおラブコメである奇跡。を見て、読者の驚嘆と感動も更新されていく、そんな作品他にある? いや、ない。あったら教えてほしい。

だから、バルドー姉さんの小説が好きな方には、新作が出るまでになんか面白い漫画ない? と聞かれれば、迷いなくこの作品をおすすめします。
何かを創作する人にとって劇薬であることは間違いないので、これ読んだ人の中で、なにか予想外の化学変化が起きることを期待しながら!
さて以下の文章は蛇足ですが、『金剛寺さんは面倒臭い』を読むと、どうしても蛇足を付け加えたくなるんですね。
なぜなら、全7巻のうち第6巻まるまるつかって前代未聞の「蛇足巻」をやってのけているからであり、第四の壁を破り、読者を巻き込み、懐かしのアドベンチャーゲームブック的展開までしてみせる、漫画史に残るトリッキーな巻となっているからです。読めばわかるさ。
で、蛇足ながら書いておきたかったことがありまして。
バルドー姉さんの小説『蚊と蠅の恋愛』のタイトルにもなっていて、後編に登場する蠅「アイロニカル」のことです。
とにかく、ここまで存在感のある蠅を見たことがない!
「アイロニカル」という意味深な名を持つ「彼」の狂おしい欲望、暴力性、自由希求の精神は痛快にして哀切。
ラストシーンにおける彼のグロテスクさと切なさが込められた、
“愛する彼女を全て喰い尽くしたのだ。”
の一文は、ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』のラスト1行に匹敵するといっても過言ではない破壊力。なんならあの知能をもった鼠「アルジャーノン」に読ませてやりたいぐらいですよ。
他の小説を引き合いに出すなんて、まさに蛇足でしかないですが、そういう解釈をする読者もいるということを、どうしても書き残しておきたく、書いてみた次第です。
バルドー姉さんの新作を待ちわびながら読みたい残りの2作はこちら。
その2『ディグニティ-旅行医の処方箋-』/矢田恵梨子/マンガワン
テーマ:終活か推し活か
テーマ:エロス、フェティッシュ、フィニッシュ
