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ソロキャンパー健(タケル)の災難

――静寂の森に現れた“騒音兵器一家”の巻――


森本健、32歳。
大手メーカー勤務。

都内から車で1時間半のお気に入りのキャンプ場へ向かう。

駐車場から少し離れたフリーサイト。
荷物の積み下ろし時のみ許される細い通路があり、その通路付近が特に人気だ。

このフリーサイトは夜間は管理人が不在となり、キャンパー各自のモラルに委ねられる部分も大きい。

金曜の午後、有給を使い静かにチェックイン。

2泊3日の予定。
運良くベストポジションを確保できた。

初日の夜は静寂に包まれる。
フリーサイトには健含め4組のみ。

焚き火の音、遠くで鳴くフクロウ。

……完璧。

健は盛大な炎が好き


翌朝。

鳥のさえずりと風に揺れる葉音をBGMに読書。
昼は茹でたパスタにペスカトーレソース。
ミックスシーフードをオリーブオイルで炒めて加える、“健流”の定番だ。

コーヒーでも淹れようとミルを回し始めたその瞬間(とき)——

ガラガラガラッ

フリーサイト入口にリヤカーとともに“嵐”がやってきた。

その名も「騒音兵器一家・タナカファミリー(仮)」──通称、お騒がせファミリー。

最初は静かだったが、リヤカーが満杯になる頃には状況が一変。

「そこじゃないって言ってるだろ!」
「お父さんが言ったんじゃないのよ!」
「えっ、ペグどこ?」
「そんなのあなたしか知らないわよ!」

——地鳴りのような怒号が、森を揺らす


(心の声:健)

「移動したい。でも…この完璧なピン張りのスカイパイロット、もう一度やり直す気力はない―。」

テントを立てる間も怒号

夕飯の準備でさらにヒートアップ。

ついには食器が宙を舞った

(心の声:健)
「ああ、食器まで投げないでくれ…ブーメランかよ?!こっちに飛ばすな…」

―― 夜

22時を過ぎても宴は続く。BBQで火力が上がったのは炭だけじゃない。

さっきまで「離婚だ!」と叫んでた夫婦が、

「マジでうちの焼きそば最高〜!」

「イエ〜イ!」


「情緒の乱高下、富士急ハイランド並みだな…」

健は小さくつぶやいた。



―― 深夜1時…

今度はお父さんの爆音いびきがサラウンドで襲う。


「まじか…… 薪割りよりうるさい…」


そして朝。5:45。

カーン カーン カーン

タナカ家息子「お父さん、うるさいよ〜」


「たしかに…
―てか、薪は昨日のうちに割ったろ?!
  ………まだ割る?!」

それでも健は耐え、シュラフの中でスマホのネットニュースを読む事で気を紛らわせた。

−−−−−

6:30。
起床し、身支度を整え、楽しみにしていたホットケーキを焼き始めた。
すると、じゅうじゅうという音とともに、焼けた魚の匂いが漂ってきた。
塩サバか……。

甘いホットケーキの香りに、しょっぱい魚の煙が混じり、食欲が急速に失せていく。
一口食べ、残りを慌てて包み、川原へ避難した。

せめて朝くらい、静かに食べたかったのだ。

川原でパンケーキ
「牛乳も持ってくればよかった…」とちょっと後悔


戻ると……撤収祭りが開催中。

子どもたちが健のテント周辺を何度も猛ダッシュで駆け抜けていく。

それを注意するどころか、母親は風になびく45Lのゴミ袋と全力で格闘中。

その横で父親はというと──

なぜか風下からテントを畳み始めるという謎ムーブ。

当然、テントはふわりと舞い上がり、父の顔面に直撃。

あわや三度目の口論かと身構える健。

──なぜかそこで家族全員が笑い出し、和気あいあいと協力してテントをたたみ始めた。

タナカ家母
「ハハッ。お父さんったら、また風下からだし!」

息子 「ウケる〜」

娘 「ハハハッ。パパやばっ!」


「え、和やかになるのそこ……?」

健、シュラフを丸めている手を止めて呟いた。

「もう、ここまで来たら一周回って尊敬するよ……」

健は手際よく荷物をまとめ、車を持ってこようとするも……

わずかの間にタナカ家の車がそこに付けられ通路が塞がれていた。

「…越された…まさかの通行止め。」

「仕方ない、自力で運ぶか。クーラーボックス、重っっっ」


すべてを運び終え、チェックアウト。
健は帰り道からほど近い温泉へ―

静かに目を閉じ、湯船に沈む。

「…有給、平日連休でとれたらな。

   静寂って…尊い…
    
      また来よう、俺の森に。」




《プロフィール》
ソロキャンパー・森本 健(もりもと たける)年齢:
32歳
職業:大手メーカー勤務(商品開発部)
居住地:東京都内のワンルーム
趣味:ソロキャンプ、読書(東野圭吾作品は手に取ることが多い。派手じゃないのに、気づけば深みにハマっているのがいい)、インスタントカメラで風景撮影(記録じゃなく記憶として残す)
性格:
冷静沈着、内向的だが観察眼に優れ、静かな皮肉屋、不要な争い事を嫌う
口癖:「まじか……」「静寂って……尊い……」
キャンプスタイル:
設営は効率重視、静寂を愛し、他者とは適度な距離を保つ
・子供の頃、毎年夏に家族と海キャンプに出かけていたが、思春期には距離を置くように。大人になり、ふとその記憶が蘇り再びキャンプの世界へ。
・最初は実家に眠っていたファミキャン道具でソロを始め、試行錯誤の末、自分にとって必要なギアを厳選しながら現在のスタイルに至る。
・ソロキャン歴10年。
愛用品:
・サバティカル スカイパイロットTC
(完璧なピン張りがこだわり)
・スノーピークのチタンダブルマグ300
・タイムモアのミルとビアレッティのエスプレッソメーカー
・YETI Tundra 35(9.07kg)
保冷剤、氷、酒、食材を詰めれば15kg超え。設営地までの道すがら、何度「俺は何を背負ってるんだ……?」とつぶやいたことか。
モットー:
「誰にも邪魔されず、静かに火と語る時間を持つこと。それが俺のキャンプ。」


《もうひと組の登場人物》
騒音兵器一家・タナカファミリー(仮)
構成:
父・母・子ども2人(小6㊚小5㊛)
出没エリア:フリーサイト限定(区画サイトでは手に余る)
性格:激情型。起床から消灯までノンストップフルボイス。
持ち物
・音量無制限の声帯
・未整理のギア
・45Lゴミ袋
・ディーゼルエンジン搭載ファミリーワゴン
 2.4L 直4 DOHC
代表的ムーブ:
・設営中の夫婦ゲンカ(開始5分で開戦)
・食器投擲(とうてき)
・夜中1時のいびきサラウンド
・早朝5時の薪割りリサイタル
・撤収中の“風下テント畳みチャレンジ”
名言:「ペグどこ!」「離婚だ!」「うちの焼きそば最高〜!」
モットー:「静けさより団結力(時々崩壊)」

タナカファミリー(仮)

最後に

この物語はフィクションです。
迷惑キャンパーあるあるをぎゅっと詰め込んだ“ソロキャンプのもしも劇場”。(※登場人物は、どこにでもいる“キャンパー”)
ちなみに、画像はaiで作成した架空のもので、実際いそうですが、存在しません。

−−−−−

あなたなら、近くに“お騒がせファミリー”が来たらどうしますか?

なんかわかる、こんな事あったよな、そんなふうに感じてもらえたらと思って書いてみました。

そして、孤高のソロキャンパー森本健のストーリーは今後も気まぐれに書いていく予定です。


読んでいただきありがとうございます。
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