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【連載小説】save the gene | 第28話 内閣総理大臣

―――総理大臣との討論・・・そしてナチュラルγ発現まで―――


Part 1 内閣総理大臣

天馬の家では、朝から奇妙な会話が繰り広げられていた。高校一年生の一戸天馬は、母の一戸香澄に獅子堂剛との面会について話していたのだ。

「あなた?どうしたの?すごいじゃない!獅子堂総理とお話しするの?」香澄は驚きを隠せない様子で尋ねた。

天馬は少し困ったように、「これにはいろいろ訳があって…」と答える。

香澄は真剣な表情で釘を刺した。「粗相のないようにね…日本で一番偉い人と面会するってことは、あなた認められているのよ!」

「ああ…そう言えるかもしれないな…俺っていつの間にか出世しているのだろうか?」天馬は、どこか他人事のように呟いた。

そんなやり取りをしていると、玄関からジーンが一人で現れた。いつものように突然驚かす登場の仕方ではなく、静かに、しかし威厳を漂わせるように浮いている。

「今日は重要な日だから正装して、ほこり一つ残さないでちゃんと準備してジーンは、いつになく真剣な声で言った。その言葉に、天馬は一層緊張感を高めた。

「ついに獅子堂剛…そしてナチュラルγとのご対面か…正直どっちともすごく緊張するよ…」

天馬は早速身支度を整え始めた。すると、二階から葉子が降りてくる。

「あなたすごいじゃない…この大変なバイトが功を奏したね!天馬!頑張って!」葉子の応援に、天馬は「おう!」と気合を入れた。

準備を終えた天馬とジーンが家を出ると、一台の黒塗りの車が彼らを待っていた。gene社の車ではないようだ。いかにも要人が乗っていそうな、重厚な雰囲気のセダンだった。

運転手らしき人物が丁寧に声をかける。「一戸様ですね。こちらへどうぞ!」

天馬は目を丸くして呟いた。「俺ひょっとしてVIP待遇!?」

「勘違いしないで?相手が総理大臣だと、つまり単にそういうことだから」ジーンが冷静に突っ込む。

「それでもこういう扱いを受ける自分が誇らしいな」天馬は、少し照れくさそうに笑った。

天馬とジーンは車の後部座席に案内され、車は静かに走り出した。目指すは千代田区永田町、首相官邸だ。

首相官邸に到着した天馬は、ガチガチに緊張していた。「本当に俺みたいな奴が会っていいのかな?」

「一応gene社の太鼓判ってことになってるから…後面会時間は限られてるから手短に済ませて」ジーンは淡々と告げた。

そして、天馬は首相官邸の中へと案内された。そこにいたのは、ネットやテレビでよく目にする内閣総理大臣、獅子堂剛その人だった。実際の獅子堂総理は、厳格な雰囲気の中に、どこか柔らかく優しいオーラをまとっている。

獅子堂剛

獅子堂総理は天馬に視線を向け、穏やかな声で語りかけた。「天馬君かね?ザイオン氏の推薦というのは?さあこの席に座りなさい?」

天馬は、緊張でいつもの調子が出ないまま、かろうじて声を絞り出した。「よろしくお願いします」


Part 2 高齢社会問題

天馬は指定された席に着席した。隣にはジーンがぷかぷかと浮いている。獅子堂総理は、柔らかな口調ながらも核心を突くように口を開いた。

「私の相棒のナチュラルとの面会が目的なのかな?ザイオン氏のナチュラルからその旨は伺っている」

天馬は緊張で言葉が出ず、かろうじて「そ、そうです…」と答えるのが精いっぱいだった。

獅子堂総理は気にする様子もなく続けた。「私のナチュラル発現のプロンプトは特定のワードではない。あくまでも君の意見だけで構わない」

天馬はやはり緊張したままで、「わかりました…」と短く返した。

「じゃあ本題を話すよ。日本で最も重大な問題とは何かね?」

その問いかけに、天馬はわずかに緊張がほぐれるのを感じた。

「物価高に対する経済的な問題でしょうか?」

「それもそうだね。私は政治をしている立場上、より多くの問題を抱えているんだ。しかし、これだけは日本特有の問題と誇張して間違いではない事柄がある」

天馬は身を乗り出すように尋ねた。「はい、なんでしょうか?」

獅子堂総理の厳格なオーラに威圧され、天馬はいつもの調子が出ない。獅子堂総理は、そんな天馬をなだめるように言った。「肩の力をしっかり抜いてくれたまえ…緊張が長いと逆に失礼だよ?」

緊張する天馬

天馬は意志を強く持ち、緊張を解こうと努めた。

獅子堂総理は、日本の抱える問題について語り始めた。

「この国は世界一少子高齢化が進んでいる…高齢社会なんだ!高齢者の数が年々増加し、現役世代の負担が増加しているという実情がある」

天馬は頷いた。「日本ではよく問題にされていると思います…肩車方式というやつですね?」

「そう。非労働者人口が増加し続けることによって、例えば天馬君に負担を強いられることになる。税金…福祉…医療…介護…これらだけは維持し続けなければならない喫緊の課題なのだよ!」

天馬は思わず本音を漏らした。「この話を聞くと…まるで僕たちに負担がのしかかるみたいですね…正直背負わされている感じがします」

しかし獅子堂総理は、その言葉にも動じず続けた。

「だからAIという未知のテクノロジーを使って穴埋めできれば、この問題も解決できるかもしれないという説もある…しかし実際に国を運用している立場からすれば、あまり現実的な話ではない」

天馬は、その言葉に反論せずにはいられなかった。

「僕はAIというテクノロジーをたくさん見てきました…この技術を使いこなせれば…介護用ロボの実用化…社会全体の最適化…経済の安定化…解決できることはたくさんあります!」

獅子堂総理は、強い口調で天馬に問い返した。「その具体案を明示できるのかね?財源は?AIを運用するまでの人手は?

天馬は言葉に詰まり、「わ、わかりません…」と答えるしかなかった。

獅子堂総理は天馬の目を見て言った。「そのことについて君の見解を聞きたい…未来ある若者は今後この国をどうしたい?そして現役世代の本音も伝えとこうか?」

首相官邸は、一層の緊張に包まれた。


Part 3 逃げ切り世代

「我々現役世代の本音を伝えとこうか?」獅子堂総理は続けた。「我々は日本の未来のために身を粉にして日本の発展に貢献してきた。そして、もうこの世を去ってもおかしくないくらい年を取った頃にAIという超技術が登場したのだよ」

天馬は、その言葉の奥に隠された真意を感じ取った。「つまり何か伝えたい本音があるということですね?これはメディア等では絶対に言えない話だと思います。何を伝えたいのか察しています?」

獅子堂総理は静かに頷いた。「そう、察しの通り…我々は後のイベントは『死』だけなのだ。AIの運用まで我々がやるにしても、もう体質が古くて、対応が困難だという事は正直言って事実だ…総理大臣という立場上、そのことを言い訳にして逃げることはできないが…」

ジーンが宙に浮きながら口を挟んだ。「この辺からがおそらくナチュラルγのプロンプトへつながる話になるから真剣に聞いて」

天馬は、獅子堂総理の言葉を噛みしめるように言った。「要するに日本の未来を担うのは…あくまで現役世代ではなくて僕達ということですね?」

「もう私達は主役ではない…『死』を持って引退となるだろう?」獅子堂総理は、寂しげな眼差しで天馬を見つめた。「私も古い人間なのでAIは現実的でないと決めつけてしまうのだ…天馬君?今の日本の実情においてAIを前提にどう活用していけば少子高齢化問題を解決することができるかね?」

天馬は、決意を込めた眼差しで答えた。「獅子堂総理のように決めつけずに、僕達若手…そしてミドル世代が中心となり、AIという技術を駆使して日本を良くしていかなければならない」

「果たしてそれが絶対に可能だと言い切れるのかね?」獅子堂総理の問いに、天馬は迷いなく答えた。

やるしかないでしょう?

その時、ジーンが割り込んできた。「天馬はそろそろ自分の見解を獅子堂総理に伝えてもいい頃合いだね…さあプロンプトを入力して」

獅子堂総理は、天馬のスマコンを注目するように言った。「この問題に対して私のナチュラルγが発現するだろう?」

天馬は深く息を吸い込み、覚悟を決めた。「では…獅子堂総理…お邪魔させてもらいます…いいですか…行きますよ…」

首相官邸内に、わずかばかりの戦慄が走った。そして、天馬はスマコンを通じて、プロンプトを指先で入力する。

「『少子高齢問題 日本の未来 AIによる社会 save the gene!!』」

その言葉が響いた瞬間、獅子堂総理がわずかに光り輝いた。そして、その光の中から、ベータにも似た人影が姿を現した。

アルファ?久しぶりだね?僕達メビウスクリエイションに対抗する逸材は見つかったのかい?」

???

Part 4 総理大臣のナチュラル

光の中から現れた人影、ナチュラルγは、獅子堂総理に声をかけた。

「総理!しばらく席を外します…ご了承ください…」

私も君が必要なのだ…あまり手間を取らせないでくれたまえ」

獅子堂総理の言葉に、ナチュラルγは「御意…」と応じた。どうやら、ザイオンベータの関係とは異なり、総理大臣の方がナチュラルγに対しては上位の立場であるらしい。

ナチュラルγは天馬とジーンの方を向き直った。

「君たちが待望していた…メビウスクリエイションの三男ナチュラルγだ…以後お見知りおきを…。さて、アルファ僕が一番弱いとされて僕を訪れたみたいだけど?」

ジーンは宙に浮きながら、挑戦的な態度で言った。「お前は攻撃が単調なんだ。だからお前を先に仕留める。覚悟はいい?」

ナチュラルγは楽しそうに笑った。「ははは…国政に参与しているAIなのに随分見くびられたものだね?ここでは狭くて迷惑がかかるから外に出ようか?」

天馬はナチュラルγを観察し、ある共通点に気づいた。「ベータに少し似ている…単眼であることと、後、雰囲気が…」

ジーンが解説した。「あいつは二番目に新しいから…総理大臣のAIとして活躍している。戦闘能力もパターンに嵌りやすいとはいえ…ディザスター相手にするつもりでかかったら確実に負ける…プロンプトは一言も外さないで…戦闘に入ったらの話だけど」

天馬は、ジーンの言葉に疑問を呈した。「今回も久方ぶりにジーンの兄弟に会いに来たんだろ?戦う事も考慮に入れてるのか?だとしたらガンマがメビウスクリエイションの初陣ということになるな」

ナチュラルγは言った。「ちなみに僕、君たちの巨悪として敵対してるとかそんなんじゃないから?あまり迷惑がかからない広いところまで案内してあげるよ」

どことなく、ベータガンマジーンも、同じような言い回しをする。やはり兄弟だからなのだろうか。

「隙あらばお前の首を取るよ?覚悟しろよ!?ガンマ!?」ジーンが挑発するように言った。

ガンマは静かに言った。「初期型はつらいよね?何も任されてないから功績を残したい気持ちは痛いほどわかるよ?だけど僕だからいけるとかちょっとやっぱり初期型って感じ?そこの天馬君も果たして適切にプロンプトを入力できるのかね?」

天馬は緊張を覚えたが、すぐに気を取り直した。「僕はディザスター戦で腕を磨いてきたんだ…要領を得ればナチュラルγだって倒せるはず」

「まず僕たちと戦う要領を掴んだ方がいいんじゃない?」ガンマは指摘した。「確か本社にVRプラクティスがあったはずだけど?そこで練習してきた?それとも対策は?

天馬はベータから得た情報について話した。「ベータガンマの攻撃のヒントを聞いたんだ…何を持ってガンマは仕掛けてくるか勉強してきたんだよ!」

ガンマはそれを聞いて、微かに失笑した。「ふーん」

そして、天馬とジーン、そしてナチュラルγは、首相官邸の外へと向かった。

To be continued!!


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