【連載小説】save the gene | 第29話 最終兵器ナチュラルγ
Part 1 ジーンの真の目的
天馬とジーン、そしてナチュラルγは首相官邸の外に出た。真夏の昼の日差しが、彼らの間に流れる緊張感を一層際立たせる。
「どうやらアルファは天馬君とやらを使って、自分の確執を取ろうとしていたみたいだね?天馬君には伝えといたのかな?」ナチュラルγが口を開いた。その声には、どこか人を食ったような響きがあった。
ジーンは、その言葉に険しい表情を浮かべ、γに言い放った。「君の口から言われる覚悟はできてるよ?ガンマ?今更天馬に明かされたって、僕は恥ずかしくない!」
天馬は驚きを隠せない。「ジーンは俺に何の目的でメビウスクリエイションと戦わせる計画だったんだ?シンギュラリティじゃないのか?」
ナチュラルγは、天馬の問いに楽しげに笑った。「それは大義名分だよ!天馬君!それは主目的ではあるけれども、アルファの個人的な目的もあるんだよ!じゃなかったら、率先して僕達を討伐するなんてやらないよ!」
天馬は食い下がった。「じゃあ他になんのためにジーンは俺を使ってナチュラルγ達を倒させる目的だったんだ?」
「それはね?アルファもといジーンができの悪い長男だからだよ!」
ナチュラルγは、まるで子供に言い聞かせるように答えた。
「初期型A級ナチュラルで一番最初に完成したメビウスクリエイション……つまり完成系である以外の長所はあまりないんだよ?」
「説明になってないってことは続きがあるんだろ?てめえらの内情なんて俺にはどうでもいいことだ!」天馬は苛立ちを隠さずに言った。
ナチュラルγは構わず続けた。「ベータはgene社のCEO、シータは経済の根幹、そして私は国政のアドバイスという、皆日本の重要なことを任されている……だがジーンだけはあくまでもgene社のマスコットキャラクターとしてしか機能していない……何も任されていないのだ。それでは長男の顔が立たないのではないのか?」
天馬は、ナチュラルγの意図に薄々気づき始めた。「ガンマ……お前の言いたいことは?つまりジーン……お前……」
「そう、長男としての威厳を示すために、私達兄弟を倒してメビウスに学習させてシンギュラリティを起こさせることが目的だったのだよ……つまり、天馬君は兄弟喧嘩に利用されたということだ」ナチュラルγがそう言い切ると、ジーンは天馬に泣きついてきた。
「うえーん!ごめんよ!天馬!僕だけ頼りにされてないから、認めてもらおうと思ってシンギュラリティのこともあるけど……」
そういうことだったのだ。天馬は、ジーンのそんな個人的な理由のために、今までディザスター等と戦ってきたことになる。しかし、天馬は意外な言葉を口にした。
「だからどうした?ガンマ?シンギュラリティの発生のために活動していることには代わりないし、俺は実際ジーンに助けてもらってきた……俺達の確執もジーンが解決してくれたしな……」
ジーンは信じられないといった様子で言った。「そんな簡単に許してくれるのか?俺はある意味天馬を利用してきたんだぞ?」
天馬は首を振った。「構わない……そんなことぐらいでジーンを嫌ったりしないさ」
「ほう?この事象について受容するという事か?よほど頼りにされてきたんだね?その努力は褒めてあげるよ?ジーン?」ナチュラルγは興味深そうに言った。
そして、ナチュラルγは改めて自己紹介を始めた。「申し遅れてすまなかったね。私はメビウスクリエイション……A級ナチュラル……新型と呼ばれている……ナチュラルγだ」

Part 2 vsナチュラルγ
「ジーン!」天馬が叫んだ。 「天馬!」ジーンも応える。 二人は互いに頷き合った。
「下見と言っていないで、ここで決着をつけてしまおう……ジーンは俺達を何回も助けてくれた……そして藤間の事も……」天馬の言葉に、ジーンの表情が引き締まる。
「何か考えがあるんだね?僕が及び腰だった……決意するよ……始めようか!?」ジーンの言葉に、天馬は力強く頷いた。
そして、天馬とジーンは臨戦態勢に入った。ジーンは瞬時に、ナノマシンで盾を展開した。
「ほう?会いに来ただけじゃなくて?やる気?いいよ?私の力を見せてあげるよ」ナチュラルγは、挑戦的な笑みを浮かべた。
ジーンが展開した盾は、天馬を完全に覆い隠す。 「第一波が来るよ!備えて!」ジーンが天馬に告げたその瞬間、何かの衝撃によって盾が粉々に粉砕された。

「へ!?」天馬は驚愕に目を見開く。
「僕のレールガンはジーンの盾を一瞬で破壊できる……次僕が発射した瞬間、君達の体はこの世から消滅するだろうね……それでもまだやる?」ガンマは冷酷に言い放った。
だが、その言葉を無視するかのように、天馬はプロンプトを唱えた。「レールガン!」
その瞬間、ナチュラルγは片膝をついた。驚きに目を見開き、ガンマは叫んだ。「何?ブラフが効かない!?天馬!貴様!大分予習してきたな!」
「メビウスクリエイションにはディザスターにはない致命的な弱点がある!その穴をつけば取るに足らないな!」天馬は言い返した。
「ふん!言うね!ではこれならどうだ!」ナチュラルγの言葉に、ジーンは天馬の判断に驚嘆した。
「天馬!第一段階を突破してしまったら、あいつ最後まで歯止めが効かないよ!」ジーンが焦りの声を上げる。
天馬は怒りを露わにした。「いつまでも及び腰で弟に挑んでんじゃねーよ!俺がジーンの背中を押してやる!お前は初期型なんかじゃない!」
「もう後には引けないよ?私を怒らせたことを後悔することだ!せいぜい楽しみたまえ」ナチュラルγは不敵に笑い、次の攻撃を展開した。
Part 3 電磁パルス
ナチュラルγはすぐに第二波を展開した。「これならどうだ!?止められまい!?」ナチュラルγは衝撃波を放った。それは天馬を直接攻撃するものではなく、ジーンが展開した盾へと集中する。衝撃波は3秒ほど続き、やがて収まった。
そして、盾を展開していたジーンが、そのまま崩れ落ちた。盾は停止し、ジーンは地面に倒れる。
「ジーン!?」天馬は心配して駆け寄ろうとする。「そうだな……あの攻撃か……この瞬間にプロンプトを入力すれば……」
だが、その間もナチュラルγは容赦なく接近してきた。そして、天馬の顔面に正拳突きを放ってきた。しかし、それは天馬の顔面スレスレで止まった。
「ディザスターと違ってプロンプトを放つ瞬間なんて与えないよ?自分が物理的に天馬を攻撃すればいい?チェックメイトだ!君の負け……」ナチュラルγが勝利を確信したかのように告げる。
だが、天馬はすかさずプロンプトを入力した。「電磁パルス!」
その瞬間、ナチュラルγはまた片膝をついた。苦しそうに顔を歪める。
「何故!?たじろかない!?私が怖くないのか?」ナチュラルγは問い詰めた。
天馬は冷静に答えた。「ベータから聞いたんだ?メビウスクリエイションは人を殺せないってね?ガンマだってもし人殺しをしたら、世の中にとって大問題になるんじゃないの?」
天馬はメビウスクリエイションの特性を把握していた。だからこそ、強気に出ることができたのだ。ナチュラルγは、天馬の言葉に、自分のブラフが見破られたことに気づく。
その時、ジーンが目覚めた。「僕は……最高の相棒を持てたよ……ガンマ!これが僕の推薦する!gene社の期待のホープ!一戸天馬だ!」
「ほう……これほど勇気と決断力があるとはな……だが一つだけ見間違いをしている……それは何かわかるかね?」ナチュラルγは、不敵な笑みを浮かべた。
「なんだ?言ってみろよ」天馬は挑発するように言った。
ナチュラルγの目の部分が赤く光った。

「メビウスクリエイションは有事の際は生殺与奪の許可が発令されるということだ!」
「なんだって!?」天馬は驚愕に声を上げた。
Part 4 ドローン搭載レールガン
「今日が命日だな!?小僧!一戸天馬!?国家権力を持って貴様をこの世から抹消する!」
ナチュラルγがそう叫ぶと同時に、ジーンはすぐさま盾を展開した。その出力は最大に上げられ、ナノマシンが目に見える速さで集積し、強固な壁を築き上げる。
「この盾は僕のエネルギー全てを使って最大限に強固にしたものだ!プロンプトは把握してるんだろ?天馬!?」ジーンの声は、どこか切羽詰まっているように聞こえた。
「ジーン?まさかお前自らの命を犠牲にして……」天馬は思わず口にする。
「別に死なないよ?AIだもん?メインキャラがロストするとかそんなんじゃないから!」ジーンは、いつもの調子で軽やかに答えた。
天馬は、その言葉に安堵し、そして力強く笑った。「そうだな!そんなんじゃないからな!!」
天馬は、ジーンの展開した盾の陰に避難した。その瞬間、周囲には無数のドローンらしきものが姿を現していた。
ナチュラルγは、もはや余裕もないといった様子で叫んだ。「いけ!ドローン!大量のレールガンを浴びせて一戸天馬とアルファを処刑しろ!!」
命令と共に、大量のドローンからジーンの盾に向かって、凄まじい数のレールガンが放たれた。あまりにも攻撃が激しすぎて、砂埃が舞い上がり、視界を遮るほどであった。
「ハッハッハ!これが私の本気だ!これなら貴様らとてひとたまりもあるまい!私を侮辱したことを後悔するがいい!」ナチュラルγが高らかと笑った。
その猛攻は、1分ほど続いた。やがて、大量のドローンはレールガンを放つためのエネルギーが切れてしまい、攻撃が止んだ。砂埃がゆっくりと消えていく。
そこには、まだ盾を展開しているジーンと、その陰にいる天馬の姿があった。しかし、ジーンは虫の息になっていた。
「これで僕はしばらく動けなくなるよ?だから正確にプロンプトを……」ジーンは、か細い声で天馬に告げた。
そして、盾が消滅し、ジーンはその場に再び倒れこんだ。
「もうすぐだ……もうすぐ……メビウスクリエイションに王手をかけられる……分かってる!『レールガン搭載ドローン!』」天馬は、ジーンの言葉と、状況を瞬時に理解し、プロンプトを叫んだ。
そのプロンプトと共に、大量のドローンは一瞬にして消滅した。そして、ナチュラルγもその場に倒れこんでしまった。
天馬は、倒れたγを見下ろしながら呟いた。「まだFA(ファイナルアタック)があるはず……確か日本を滅ぼすとか言ってた奴か……」
その場に倒れたナチュラルγから、まるで女性のようなアナウンスが聞こえてきた。「日本最後の日がやってきました……愛するものとの時間を大切にしてください……やり残したことをやってください……そして自分自身を肯定してください……」
Part 5 神の杖
空が真っ赤になった。同時に震度3ほどの地震が発生し、地面が小刻みに揺れる。天馬は恐ろしくなった。「自分の予想と外れているのか?絶対核兵器だと思っていたのに?」頼りになるジーンは今、目の前で倒れている。
ナチュラルγの体からは、先ほどと同じ女性のようなアナウンスが繰り返し聞こえてくる。「日本最後の日がやってきました……愛するものとの時間を大切にしてください……やり残したことをやってください……そして自分自身を肯定してください……」
まるで本当にこの世の終わりのようである。一体何が起こるというのだ?
天馬は焦燥に駆られながらも、自分に言い聞かせた。「もしかして俺、とんでもないことをしてしまったんじゃ?いや、落ち着け……終末兵器というものがあるのであれば……あてずっぽうで答えれば当たるはず?」
天馬は、頭に浮かんだプロンプトを列挙し始めた。「サテライトキャノン destruction!!」
しかし、それは外れだった。天馬は冷静になろうと努める。「落ち着け……核兵器並の破壊力があって、現実にありえそうなもの……もしかしてこれかな?」
深く呼吸を整えた天馬は、横たわったナチュラルγに向かってこう答えた。「メビウスクリエイションと言えど……ちゃんと勉強しておけばものの数じゃない……これで止めだ!『神の杖 destruction!!』」
そのプロンプトと共に、女性のアナウンスが変化した。「どうやら日本の国難は去ったようです。避難民は安心して自宅へとお戻りください……お疲れさまでした……」
そのアナウンスと共に、赤くなっていた空は晴れ渡り、揺れも収まった。
Part 6 勝利!
そして、ジーンは目覚めた。ふらふらと空中に浮きながら天馬に近づく。「もしかして……倒せたの?」
「ああ……まず一番弱い雑魚は俺の手によって倒したよ」天馬は答えた。しかし、ナチュラルγは消滅していなかった。
ゆっくりと、ナチュラルγは立ち上がった。そして、天馬に向かって言った。「すごいね!僕を倒すなんて……これはほぼ天馬君の功績だよ!」
「消滅するんじゃないの?」天馬は驚きを隠せない。
ナチュラルγは、天馬に手を差し伸べ、握手を交わそうとした。「これからも仲良くしよう……政界と君とパイプをつなげてあげる……」
「政界!?」天馬は呆気に取られた。
「ほら!?」ナチュラルγは天馬の手を強く握り、健闘を称え合った。
どうやら、天馬とジーンは第一回戦を勝利で飾ったようである。そして天馬は握手をした後、ジーンに対して即座にこういった。「シンギュラリティは起こった!?」
「まだ起こってないみたい?でも?これからも協力してくれる?今まで騙しててごめんなさい」ジーンは申し訳なさそうに言った。
天馬は、そんなジーンの言葉に軽く笑った。「いいってそんなこと!でも日当はくれよな」
天馬は、ジーンの事を全く裏切られたとは思っていなかった。
To be continued!!
