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【連載小説】save the gene | 第36話 ナチュラルの始祖 黒川勇

―――クライマックス最初の関門黒川勇です。立場的には久喜の方が偉いので黒川が先鋒になります(・ω・)―――


Part 1 大量のC級ナチュラル

天馬とジーンが足を踏み入れたのは、青みがかった光を放つ広大な空間だった。まさか、gene社の地下にこのような場所があるとは。

「AIのサーバーを設置するのに、こんなにセキュリティが厳重なのか…」

天馬の呟きに、ジーンは答えた。「久喜がもしメビウス・コアに何かあったらまずいと考えて、かなりややこしい場所に設置したみたい」

二人が足を進めていると、おぞましい声が響いてきた。

「何かいるみたいだぞ?ダンジョンだから当然エンカウントするモンスターが沢山いるのか?

天馬の問いに、ジーンが警告を発する。「どうやらナチュラルだよ!

ジーンの言葉通り、前方に大量のナチュラルが闊歩してきた。その数は、10数体どころではない、30体ほどいる。見た目はそれほど異形ではないが、その数に天馬は息をのんだ。

「こいつは間違いなくC級ナチュラルだ!みんな動物のような姿をしている…C級とはいえ、俺は相手にする時は大体一対一しか相手にしてこなかったから、この数をいなすのはきつい…

「それぞれ個体が違うから、リピートモードで撃破できない…さてどうするか…」

ジーンの言葉に、天馬は焦りを隠せない。一体一体相手にするのは無理だ。こんな状況は初めてだった。なすすべもなく考えているうちに、大量のナチュラルに囲まれてしまった。

プロンプトで倒すって方法は穴があるな…数種類の敵…ましてやこれほどの数が来られたらどうしようもない…万事休すか?」

その瞬間、周囲の空間が歪み、影響を受けたナチュラルの半分が時空の彼方へと消え去った。

「この現象は?もしかしてベータか!?

ジーンの叫び声に応えるように、ベタ子の姿で現れたのはベータだった。

「さすがに未成年とアルファだけじゃ荷が重すぎるでしょ?プロンプトでしか倒せない仕様でも、異空間に飛ばせばいいから」

突然の援軍に、天馬は驚きを隠せない。「ベータ…どうして?」

旧メビウス・コアの破壊という最終ミッションを、天馬達だけに任すわけないでしょ?ここは任せて!さっさとこの場を切り抜けなさい!」

ベータの言葉に、天馬は決意を固める。「わかった!ありがとう!ベータ!」

「どういたしまして」

ジーンが周囲の状況を報告する。「このC級の群れはまだ沢山いるみたいだよ?しくじらないで?」

ベータは自信に満ちた表情で言い放った。「wasted(廃棄型)なんかにひけをとるわけないじゃない?

天馬とジーンは、ベータに後を任せ、ダンジョンの奥へと駆け抜けていった。


Part 2 ネオメビウスクリエイション

天馬とジーンは、ナチュラルたちをなんとか振り切った。疲れを癒すように、ゆっくりと歩を進める。しかし、その青色がかった空間は、どれだけ歩いても風景が変わることがなかった。

「もうかれこれ1時間は歩き続けたが、一向にどこかに辿り着く気配がない…」

そう呟いた時、遠くにぼんやりと扉が見えてきた。近づくと、そこにはセキュリティキーを認証させる場所がある。

「キーを認証させたらこの扉は開くと思う…だけど何があるかわからないよ?注意して?」

ジーンの警告に、天馬は深く頷いた。

「分かった…心の準備をしておくよ…」

天馬が数回深呼吸をした後、セキュリティキーを認証させると、自動的に扉が開いた。その先に広がっていたのは、驚くほど明るく開けた空間だった。

足を踏み入れると、一人の老人がそこに立っている。

「黒川さん?いや!黒川!!

天馬の叫びに、ジーンの声が重なる。「最初の敵は黒川みたいだね?」

「臆せずここに来れたのかね?」

黒川は、変わらぬ厳かな雰囲気で天馬たちを見つめる。天馬は、問いかけずにはいられなかった。

「あなたは…格差是正を掲げて、世の中を平等にするために尽力しているイメージでした。それなのに何故?」

黒川は、天馬の問いには直接答えず、皮肉めいた笑みを浮かべて問い返した。

「メビウスというのは、他の諸外国で開発されているAIと比べて、何が優れていると思うのかね?」

天馬は、即座に反論する。「勿論ナチュラルを発現して、メビウスクリエイションも日本の未来のために貢献している!

しかし、黒川は一喝した。

それだけだ!所詮ナチュラルなぞアバターに過ぎない!政界や財界やgene社に関与はしているが、そんなもの別にモニターでもいいだろう?違うかね?」

天馬は言葉を失う。黒川は畳みかけるように続けた。

「他の超有名企業が開発したAIに比べたら、メビウスなぞ見栄を張っているだけのおもちゃだ!世界を席巻しているわけでもなんでもない!メビウスの価値なんぞ、『お祓い』という乞食ビジネスをやって金をせしめることしかできない!だから私は旧メビウスの廃棄には反対なのだ!我が社なぞ所詮、親会社のこぶつきなのだよ!

天馬は反論する。「では、その大見栄を切っていた『格差是正』という理念は、一体どうなるというのです!?」

黒川は、悲しそうに目を細めた。「所詮『スローガン』じゃよ…力なきものは、正義を行使することができないんじゃ…」

ジーンが、二人の会話を遮るように声を上げた。「黒川が利権にすがっている時点で、メビウスのバージョンアップの障壁になることには変わりはない!ここを通してもらうよ!」

黒川は、天馬たちの言葉に、哀れみにも似た感情をにじませる。

「ふん!日本の『無限の可能性』なんぞ、所詮まだ幻想に酔っていることができた平成の時代に終わってしまったよ!!!

その言葉とともに、黒川はプロンプトを唱えた。

「『ネオメビウスクリエイション save the earth!!』」

ナチュラルΩ

その声に呼応するように、黒川の後ろに火を纏った単眼のナチュラルが出現した。

ネオメビウスクリエイション!?

ジーンの驚愕の声に、黒川は勝ち誇ったように告げた。

「メビウス・コアに新しくナチュラルを産んでもらったんじゃよ!その名もナチュラルΩ(オメガ)!!シータよりも新しいぞ!」

黒川と天馬たちの間に、緊迫した空気が張り詰める。いよいよ最初の戦いが始まろうとしていた。


Part 3 vsナチュラルΩ

黒川は、火をまとった単眼のナチュラルに指示を出した。

「このナチュラルもケルビックやセラフィックに引けを取らないからS級ナチュラルじゃな!オメガは私の指示で動くことができる!いけ!第一段階だ!」

オメガは、その言葉に呼応するように、火の鳥のような生き物を数体作り出し、天馬めがけて放った。

「いつものフォーメーション!イージスに隠れて!」

ジーンの指示通り、天馬はイージスのシールドに身を潜めた。火の鳥たちはイージスに突っ込んできたが、その防御はびくともしない。

「戻れフェニックスよ!さて第二段階だ!燃やし尽くせ!神の炎よ!」

黒川の声とともに、オメガは攻撃方法を変えた。周囲一帯が高熱の炎に包まれる。

「プロンプトで攻略してないのに攻撃方法が変わった!?今までと違う!?

天馬は驚きを隠せない。ジーンが冷静に分析する。

「これは本体である黒川自身がナチュラルを操ってる…今までにないパターンみたい。ひとまずまだイージスは無事みたいだから、出所を伺って様子を見るよ」

高熱の炎は周囲を溶かし始めたが、イージスは微動だにしない。

「神の炎はやめろ!オメガ!もう一回火の鳥だ!」

黒川の焦りにも似た声が響き、再び火の鳥たちがイージスに突っ込んできた。

黒川がこの攻撃をやめた瞬間にプロンプトを入力して、おそらくそれで阻止することができると思う」

ジーンの言葉に、天馬は安堵した。「やっぱイージスは最強だな!ナチュラルΩだって物の数じゃない!

「おのれ…やはり効かないか!?戻れ火の鳥!」

黒川が攻撃を止めた瞬間、天馬はすかさずプロンプトを入力する。

「これだろ?『フェニックス!!』」

その言葉でオメガはたじろぎ、火の鳥が消え去った。しかし、黒川は顔の表情を変えないまま、再び神の炎を放った。

「やれ!神の炎!」

ジーンが再度プロンプトを促す。「フェニックスの要領で再度プロンプトを」

天馬は違和感を覚えていた。「攻撃パターンも少ない…何故?」

黒川が攻撃を止めた瞬間、天馬は再度プロンプトを唱えた。

「神の炎って言ったらこの呪文が思いつくんだよな『メギド!!』」

ニアピンだったのか、オメガはその場に倒れ伏した。だが黒川はニヤニヤと笑っている。

「さて、天馬君のメビウスに『weakness?』と表示されてるじゃろ?何かね?」

だが、FA(ファイナルアタック)を起こしている気配はない。

「FAがないパターンだろ?これで終わりだ!『ナチュラルΩ 不死鳥 destruction!!』」

天馬の言葉に、何も起こらなかった。

「FAの正体が分からないと天馬君も手の出しようがないね!だってオメガは何もしてないのじゃから」

ジーンも混乱していた。「どういうことだ!?何もしないFAって一体?」

その間に、倒れていたナチュラルΩが再び起き上がった。

「いけ!今度はフェニックスの数を増やすぞ!」

今度は10羽ほどのフェニックスが天馬たちに向かってくる。

「復活しただって!?しかも強化されてる!?」

「さすが新生のタイプだね!?ナチュラルの常識とは逸脱してる」

ジーンの言葉に、天馬は新たな驚異を前に立ち尽くした。黒川とオメガの真の力は、まだ底知れない。


Part 4 頼もしい助っ人

10羽ほどの強化されたフェニックスが、一斉にイージスに突っ込んできた。数が多いが、イージスはびくともしない。

「戻れフェニックス!さて天馬君?いつもの調子でプロンプトを入力してくれたまえ」

黒川の挑発に、ジーンが叫ぶ。「入力するしか今できる方法はない!入力して!

天馬はプロンプトを唱えた。「わかった!『フェニックス!!』」

ナチュラルΩはたじろぎ、火の鳥たちは消えた。しかし、黒川は余裕の表情で次の攻撃を命じる。

「オメガ!やれ!メギドフレイム!!

以前よりもさらに高熱の炎が放たれたが、イージスはそれを完璧に防ぎきった。

「大したことはない!『メギド!!』」

天馬がプロンプトを唱えると、ナチュラルΩは再び倒れ伏した。だが、黒川はニヤニヤと笑い、天馬たちに問いかける。

さて?プロンプトは?

天馬は焦燥感を募らせる。「ひょっとしてまた外すと強化されるのか?これじゃいつか…」

「これ以上フェニックスを増やされると、流石にイージスにヒビが入る可能性がある!その時にメギドフレイムを放たれたら、僕たち黒焦げになってしまう!

ジーンの言葉に、天馬は絶望を感じる。「じゃあ今回外すと詰むのかよ!だって現に今何も発生していないんだから分からないよ!

「『不死身のナチュラル』じゃよ!FAを外すごとにあちらさんが死亡するリスクも上がるんじゃ…大したことないと思ったかね?」

黒川の言葉に、天馬は背筋が凍る思いだった。「だから黒川の表情は余裕なのか!?今的確に入力しないとこれ以上は!?」

最新型じゃからなあ!無敵じゃよ!ハッハッハ!さあてどうする!?時間がないぞ!?」

「怖い…S級ナチュラルは例えではなく本当に強い

天馬は初めて感じる恐怖に言葉を失った。ジーンもまた、助けを求めるように呟く。「誰か他に助けがあれば…」

だが、その直後、ジーンはにやりと笑った。

「なんてね!黒川!メビウスクリエイションはネットワークでつながっていることを忘れたの!?もう僕たちは謀反を起こしてるんだよ!?

「なんじゃと!?」

黒川が驚愕するその時、少年のような声が響き渡った。

「『ナチュラルΩ FA停止 save the moebius!!』」

ナチュラルθ

その声とともに、倒れ伏していたナチュラルΩは色が白黒になり、微動だにしなくなった。

「なんじゃ!?何が起こった!?まさか?」

黒川の混乱した声に、少年のような声が答える。

最新型はあくまでも僕…そして能力単体での最強は僕の『プロンプト入力』さ

天馬とジーンは声を揃え、その存在の名を叫んだ。「シータ!!」


Part 5 平成と令和の価値観の変遷

「何度でも復活する…よく死亡したキャラが復活する呪文ってあったでしょ?『バッド・アウト』を専属コーチ付きでやりこむほどゲーム好きならわかるよね?」

シータの問いに、天馬は驚きを隠せない。 「これシータがやったのか?このままナチュラルΩは停止したまま動かなくなったのか?」

いいから僕の質問に対して反応してくれる?

ジーンがすかさずヒントを出す。「敵が復活する呪文?天馬が一番発想しやすそうな名前でいいんじゃない?

「ありがとう、シータ!『リザレクション destruction!!』」

天馬のプロンプトとともに、ナチュラルΩは音を立てて崩れ去った。突然のゲストの登場に、黒川は憔悴しきっていた。

「ふん、天馬君たちじゃ流石に荷が重いから、シータまで出演してきたのか?」

シータは黒川の言葉に冷静に答える。「シンギュラリティ発生のためにこの能力を与えてくれたのは黒川じゃないか?ナチュラルΩが僕より新型となると、シンギュラリティは諦めたの?

「日本が世界で最も早くそれを起こせば、再び日本が先進国に返り咲くと思ったんじゃ。しかし、そんなもの起こせるはずがないだろう?

シータは黒川の心を見透かしたように言った。「もう狼狽してるね。持病もあって老い先短いから、せめて現時点の技術だけで利益をあげようとしてたんだね?

「諦観してるよ!シータ!アルファ!そして天馬!40年以上も日本は不景気だったんじゃ…一向に日本は良くなるどころか悪くなる一方で、わしはもう疲れた…

天馬は黒川の言葉に強く反論する。「何言ってるんですか?AIを駆使すれば、もしかしたら経済という束縛から解放される未来だって…

黒川は天馬の言葉を遮った。 「疲れたと言っておるじゃろ!?この先に久喜が立ちはだかってる!この場に居座る時間もないじゃろう?お祓いビジネスでもうわしは十分稼いだから未練はない!もう行け!」

シータは、そんな黒川の言葉を優しく包み込むように言った。「黒川も結城おじいちゃんと同じく僕の親だから、黒川の面倒を見てるよ!さあ、メビウス・コアに向かって前進して!」

天馬とジーンは先に進もうとした。だが、天馬は黒川に振り向いた。

「黒川…さん?日本の未来は暗いの?年配の方達は日本のことを悲観しているけど、それが真実なの!?

ジーンは、その問いに答えるように言葉を紡いだ。

「その年配の方たちは、激動の平成を生き抜いてきたため、疲弊しているんだよ!だから日本悲観論者が多い…でもね」

ジーンは天馬に微笑みかけた。

「AIがこれからもっと発展すれば、人類普遍の幸福が生まれることは確実視されている…つまり日本の未来は明るい…さあ振り向かないで、さあ行こう!」

天馬はジーンの言葉を信じ、黒川に背を向け、希望を胸にダンジョンの奥へと進んでいった。

To be continued!!


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